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他人の「目的」と「手段」に口を挟まない方がいいよ by キンコン西野

このnoteは2020年2月24日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:北川 貴啓さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「他人の『目的』と『手段』に口を挟まない方がいいよ」
 というテーマでお話したいと思います。

昨日、面白い記事を見つけました。
村山昇さんという人材教育コンサルタントの方が書かれた、
『目的』と『手段』が時に入れ替わる理由についての記事です。

そこでは、
「ある一つの目的は、より大きな目的のもとでは手段となる」
と書かれていました。

『目的』と『手段』が入れ替わるとき

ちょっと難しいですね。説明します。

たとえば、小学校の頃を振り返っていただきたいのですが、あの頃、僕らには「テストでいい点を取る」という目的がありました。そのための『手段』として、勉強していた。

この場合、『目的』が「テストでいい点を取る」で、『手段』が「勉強する」です。

ところが、大学になると、「いい大学に入って、好きな研究をする」という、次の『目的』ができて、その時の『手段』が「テストでいい点を取る」になります。

この「テストでいい点を取る」という『手段』は、数年前は『目的』だったはずなのです。ここでズレが発生します。

大学に入ったら、今度は「専門を活かした就職をする」という目的ができます。すると、「いい大学に入って、好きな研究をする」という、少し前まで『目的』だったものが『手段』に変わるということです。

これが、冒頭に申し上げた、「ある一つの目的はより大きな目的の下では手段となる」ということです。

それで、今日お話ししたいのは、「『目的』と『手段』を入れ替えるな」とか、「『手段』を『目的化』するのは良くない」という話ではありません。

今お話ししたように、『手段』や『目的』というものは、その人が今置かれている立場や状況によって、変わってくるものなのです。だから、「『かくあるべし』と、あなたの立場から『手段』や『目的』を強要しちゃダメだよ」という話です。

西野の本当の『目的』は何か

このことについて、自分の話をします。

この放送をお聞きの方は、すでにご存じだとは思われますが、僕は世間一般でいうところの「芸人さんの仕事」は、していません。

グルメ番組に出たり、コメンテーターやったり、ロケしたり、『IPPONグランプリ』に出たり、ひな壇に出たり…。そういったことを、ほぼしていないです。やっているのは、『ゴッドタン』くらいです。

25歳の時に、今のような方向に舵を切ったのですが、その理由は、「もっとたくさんの人を楽しませたい」と思ったからです。

もともと、僕は、小学校2年生の時に、お笑い芸人さんになりたいと思ったのですが、その時から「たくさんの人を楽しませたい」という『目的』がありました。

そのために、テレビに出たくて、その『手段』として、漫才をして劇場に立ちました。おそらく、世の中の99%の人が、僕と同じ流れだと思います。

もともとは、「たくさんの人を楽しませたい」というところから入ってるはずだと思います。

そんなこんなで、ようやくテレビに出られるようになると、次は、「もっとたくさんの人を楽しませたい」という目的が出てきました。

それが、25歳ぐらいの時です。

これが、先程の話のように、「勉強」というものが軸になっていれば、非常に分かりやすいのですが、僕の場合、少しややこしいです。

というのは、そこから先、「もっとたくさんの人を楽しませる」ためには、日本語をある程度切り捨てなくてはいけなくなった。

その時、『手段』が、ボケとツッコミという「会話」から、「絵」に変わるわけです。

非言語、もしくは翻訳のハードルが極めて低いアプローチを選ばないと、世界で戦えない。世界で戦えないということは、楽しませられる人の数が増えない。ですから、『手段』を変えないことには、『目的』が達成されないのです。

僕の場合、ややこしいのは、「手段」の種類ごと変えてしまっているところですね。

そんなすったもんだがありまして、今に至るわけですが、今でも時々、アンチの方から「お笑いやれよ」と言われたりします。

僕がいなくなったら、都合がいいはずの人から「お笑いやれよ!」と、言われます。「僕のお笑い、そんなに観たいの?」って話じゃないですか。大好きじゃん(笑)

ここで、ただひとつ言えることは、僕は、10代の頃よりも20代の頃よりも、今の方が「楽しませている人の数が多い」です。

自分の単独イベントに足を運んでくださる方の人数でいうと、10倍とか20倍とか、もっともっと増えました。もう万人規模になっています。

お笑いでは、そんな風になっていませんでした。行かれた方は分かると思いますが、お笑いライブは、音楽ライブなどと、ちょっと感覚が違うと思います。

お笑いライブは、せいぜい何百人、多くても1000人〜2000人規模くらいまで。5万人とか10万人とか、そういう規模では、なかなかやれないです。

それで、ちょっとずつ、ちょっとずつ、今の方向へとシフトチェンジして、
年間すごい数の方が、イベントに足を運んでくださるようになりました。

まだまだ遠いですが、それなりに『目的』には近づいています。おそらく、僕の『手段』は、今後も変わっていくと思います。

『目的』が変わる場合もあるし、『時代』が変わる場合もある。

それに向けて、適切なアプローチをすることが、僕にとっての『手段』だからです。


そろそろまとめに入ります。言いたいことは二つです。

一つ目は、『手段』や『目的』は、その人が今置かれている立場によって変わるものだから、「かくあるべし」と、あなたの立場から押しつけてはダメだよということです。

たとえば、ある人が、日本では日本語を喋って、アメリカでは英語を喋っている理由は、「コミュニケーションを取りたい」という『目的』があるからだとします。

そういう人に対して、「日本人なら、日本語を喋れ」と言うのは、あなたのエゴでしかありません。

あなたの言うとおりにして、日本語しか喋らなかったということで発生した被害の責任は、あなたには取れません。だから、これはやめておいた方がいいと思います。

まずは、置かれている立場によって、『目的』や『手段』が変わるということを想像することが、非常に重要だと思います。

二つ目は、先程ちらっと出ましたが、『目的』が変わることもあれば、「時代」が変わることもある、ということです。

現代において、気をつけないといけないのは、むしろこっちです。

今、芸人さんが YouTube の方にバーッと流れていますが、江頭さんや宮迫さんのように、特別なキャラクターや事情を抱えた方を除いて、ちょっと参戦が遅いと思いませんか?

もう少し前に入っていれば、 YouTube の覇権を握れていたはずです。それなのに、2020年の今YouTube参戦するというのは、ちょっと遅いですよね。

これには、おそらく二つの理由があると考えられます。

一つは、「シンプルに気づかなかった」
YouTube というものが、それだけ盛り上がっているということに、シンプルに気づいていなかったということです。

そしてもう一つは、「参戦したくても、参戦できなかった」
僕は、実は大半の理由は後者だと考えています。

参戦したくても参戦できなかった原因は何かというと、「芸人なら、ひな壇に出ろよ!」と言い続けたことによる弊害だと見ています。

言い換えると、『手段』に入れ込みすぎた結果、『時代』への対応が遅れたということです。今後、時代の展開スピードが速くなればなるほど、こういった事故は多発します。

なので、『手段』は、あくまで『手段』として捉えておいた方がいいでしょう。ここは、けっこう地雷になりかねません。

特に、今のツイッターなどは、「突っ込み文化」なっているので危険です。「あれは良くない」とか、「なんとかのクセに…」とか、「どれだけいいツッコミをすれば、自分にポイントが入るか?」というような時代になってしまっています。

これでは、余計に自分の『手段』の幅を狭めてしまうことになるので、本当に気をつけた方がいいでしょう。

というわけで、
「他人の『目的』と『手段』に口を挟まない方がいいよ」
というテーマでお話させていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。キングコングの西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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