見出し画像

20代前半をどう生きるか? by キンコン西野

このnoteは2020年2月2日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:堀江貴文さんと会社をつくった神戸の田中 さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「20代前半をどう生きるか?」
というテーマでお話しします。

僕はよく、大学生から「僕、これからどうしたらいいっすかね?」という相談を受けるので、今日はその相談に本気で答えていきたいと思います。

「役に立つ情報」の発信はもったいない

SNSだと『いいね』や『リツイート』で、数字で結果が出ます。このvoicyにしたって、Youtubeにしたって、再生回数、チャンネル登録者数、フォロワー数は、数字で可視化されます。今は、これらの数字が収入に直結したりするので、みんなこの数字を稼ぎにいくわけです。

そして、これらの数字を簡単に稼ぐ方法の一つが『役に立つ情報を発信する』ということです。

たとえば、「お金の稼ぎ方」というテーマをつければ、多くの人が困っていたり、興味があることなので、再生回数はめっちゃ回ります。他にも、「フォロワー数の増やし方」などのタイトルでも、やっぱり再生回数がすごく回ります。

つまり、『役に立つ情報を発信する』というのは、数字を簡単に稼ぐ方法の一つなのです。

「簡単に稼ぐ」などと表現すると、誤解を招いてしますが、その発信よって救われている人がいるのは事実なので、それもとても意味のあるアクションだとは思います。

ただやっぱり、『役に立つ情報』の発信は、再現性が高いので、誰にでも発信できるものになってしまいます。その結果、「誰が言うか」という競争に入っています。

つまり、そのくらい参入障壁が低くて、そのくらい参加者が多いということです。5Gが始まり、動画の受信がさらにカジュアルになると、この点は間違いなく加速するでしょう。

いわば、攻略本が溢れかえる世界です。そして当然、攻略本が溢れかえると、攻略本1冊あたりの価値は下がります。これを動画に置き換えると、1本あたりの再生回数やフォロワー数が減ってしまうということです。

分かれ道で選ぶべきこと

そこで、今日の本題に入りたいと思います。

実は、都内某所に僕のサロンメンバーが集まる『キャンディ』というスナックがあって、隔週の水曜日は、大学生が集まる日になっています。厳密に言うと、大学生がスナックのママをやる日です。

もちろん、大学生しか入れないというわけではないのですが、大学生がママをやっているので、客席は比較的大学生が多いです。そうすると、自然と大学生と大人が交流する日みたいになっていたりします。

僕もたまたま『キャンディー』に行くと、その日に当たることがあって、その時はだいたい相談攻めにあうんです。やりたいことに満ち溢れている子だや、やりたいことがまだ見つかってない子など、そこには、様々な人たちがいます。

相変わらず、僕は、「いいじゃん!」、「最高だねぇ!」、「やっちゃえよ!」としか言わないのですが、ベロベロに酔っ払っていても、一つだけ「う~ん…。それはどうかな~?」と言ってしまうことがあります。

それは、先ほど述べた『役に立つ情報を発信する』ということに、軸足を置こうとしている学生に対してです。「どうして、20代前半という時間の価値がめちゃくちゃ高い季節を、これから価値が下がっていくものに使っちゃうんだ?」と言っています。『キャンディ』にいる時、だいたい僕は酔っ払っているのですが、これはシラフの今でも同じことを思います。

大学生や20代前半というのは、一番最初の分かれ道に出くわす時期です。ここで、右に進むか左に進むかで、5年後10年後の結果が大きく違ってくる。

そこで、結果を急ぐ気持ちは十分わかるのだけれど、ただ一つ確かなことは、今この段階で結果が見えてるもの、悪く言えば、日銭が稼げるものに山を張ったところで、その先の展開はありません。

例えるなら、道路の入口はすごく太いけれど、5キロ先はもう海だから、道を広げることができないことが確定しているといった状態です。「そんな風に、人の力では抗いようのない土地の制約から、目を背けるなよ!」と、思っています。

つまり、「分かれ道に出くわした時は、『道の太さ』や『明るさ』じゃなくて、『土地の形』で判断しろ」ということです。

絵本という足場の悪い道を選んだ理由

ここで、自分の話を交えた方が説得力があるので、少しだけ僕の話をします。

僕も25歳の頃に、すごく悩んだ時期がありました。あの当時、自分は日本で一番の視聴率を取っている番組をやらせてもらっていて、それはそれは光り輝く環境だったわけですが、これから、この国は人口が減っていき、高齢化が進んでくことが決定していることがわかっていました。

そこで、よくよく周りを見渡せば、僕の父ちゃんも母ちゃんも、それほど前のめりでバラエティ番組など見ておらず、どちらかと言えばNHKやワイドショーなどを熱心に見ていました。そして、まもなく日本は国民のほとんどが、うちの父ちゃん母ちゃん世代より上になる。

そう考えると、もう5年後か10年後には、バラエティ番組が減ることは決定します。その代わりに、教育番組やワイドショーのような『情報を売る番組』が増えると予想できました。

そこで僕が向き合うべき問いは、「自分は『テレビ』に憧れたのか?」、それとも「『面白いことを発信してくれるテレビ』に憧れたのか?」ということです。

これを考えた時、僕は絶対に後者でした。面白いことを発信してくれるから、テレビに憧れたわけです。

しかし、日本の人口を見れば、後者が小さくなっていくことは決定しています。そのことから目を背け、このままいずれ途絶えてしまう光り輝く道を進むのか。それとも、まだ真っ暗で見えないけれども、その先に土地が余っている方向に延びている道に進むのか。つまり、絵本のように、世界にリーチできる非言語のエンタメに進むかどうかです。

ここはとても悩みましたが、やっぱり僕は後者を選びました。

そのおかげで、しばらくは足場の悪い道を進みましたが、今になってあの頃の自分に思うのは、「よくぞ、あの時にこっちの道にハンドル切ってくれたな」ということです。

絵本なんて、めちゃくちゃ小さいメディアじゃないですか。ヒーヒー言って3万部売ったところで、その3万部なんて誰にも知られません。一方、視聴率15%の番組であれば、2000万人弱が見ているわけです。

ただ、僕らが目を向けなければいけないのは、その先に眠っている人の数です。

絵本は、国内での個展、舞台化、映画化と、どんどん展開させるがことできます。そして、一番大きな強みは『翻訳可能である』という点。

さらにもう一つは、『時間を超越できる』という点です。『時間を超越できる』というのは、地球に子どもが生まれるたびに、絵本というものが重版され続けるということです。そうすると、今を生きる人たちだけではなくて、1年後、5年後、10年後の人たちも楽しませることができます。

つまり、絵本という道の先にはそれらの選択肢が眠っていて、その先々の土地にはたくさんの人が住んでいるということです。目先の2000万人か、成長しろがある3万人か、そのどっちを取るかを見極めないといけません。


そして、話を戻すと、「フォロワーの増やし方」や「お金の稼ぎ方」といった『役に立つ情報』を提供することは、最悪、おじさんになってからでもできます。だから、学生時代や20代前半のうちは、道が細くても、土地が余っている方にかけた方がいいと思います。

今日のまとめとしては、「分かれ道に出くわした時は、『道の太さ』や『明るさ』ではなくて、『土地の形』で判断しろ」ということです。

その先が海で、5キロ先に海岸線が控えていたら、今それがどれだけ太い道でも、もう先はないのです。海にぶち当たってから、「さあ、どうしよう…」と考えるようでは手遅れになってしまいます。

なので、事前に『土地の形』を見極めておくことが、非常に重要だと言えます。

というわけで、
「20代前半をどう生きるか?」
というテーマでお話させていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。



※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
んでもって、ビジネス書に掲載するレベルのコラムを毎朝投稿しています。
興味がある方はコチラ↓





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?