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キンコン西野のメンターは誰だ!?

このnoteは2019年1月29日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供: 大石弥生さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、「キンコン西野のメンターは誰だ」というテーマでお話します。

僕はよく「西野さんのメンター誰ですか?」という質問をされます。メンターというのは、意思決定の際の指針となる人です。

これは難しい質問で、なぜなら僕は結構周りにいる人の意見をホイホイ採用してしまうので、メンターと呼べるような特定の人はあまりいません。

昨夜もサロンメンバーと飲んでいる時に、「西野さんこれやったらどうですか?」と言われましたが、僕はやっぱり、どんなこともやってみなくちゃわからないと思っているので、人から何か提案されると、「いいね」と言ってとりあえずやってみてしまいます。

なので、僕は指針だらけというか、メンターだらけというか、持ち合わせているコンパスがずっとグルグル回っていて、どこも指していないような状態です。

このように、僕にはメンターと呼べるような人があまりいないのですが、その一方で、エンターテインメントを作る上で参考にしている人はいます。エンタメ、及びサービス業に携わるのであれば、この人は押さえておいた方が良いと思うので、今日はその2人をご紹介します。

西野が参考にする2人の人物

1人目は、ルートヴィヒ2世です。彼は、芸術に傾倒していて、中世の騎士に憧れを持っていたような人物です。有名なところで言うと、シンデレラ城のモデルとなったといわれている『ノイシュヴァンシュタイン城』の城主です。『ノイシュヴァンシュタイン城』とは、ドイツにあるお城で、中世ではなく、19世紀に建てられました。

実は、彼が作ったこのお城は、建築費が税金で賄われています。当然、その当時は街中が大反対して、「19世紀の今、もう城なんていらねーじゃん」と批判を受けました。そして彼は「狂っている」、「メルヘン王」と揶揄され、逮捕されてしまい、最後は水死体で発見されました。

自殺か他殺かはわかりませんが、彼が追い込まれていたことは間違いありません。町の人たちはおそらく、彼の死を「ざまあみろ」「天罰が降ったんだ」と思ったかもしれません。

ところが、このルートヴィヒ2世が作ったノイシュヴァンシュタイン城は、その後、町のとんでもない観光資源になり、今でもこの地方の人たちを食わせ続けています。

このように、ルートヴィヒ2世は、批判を受けながらも歴史になるようなお城を作りました。

そして、もう1人ご紹介したいのは、アンナ・マリーア・ルイーザ・デ・メディチという人です。アンナ・マリーア・ルイーザはどんな人かというと、メディチ家の最後のキャラです。メディチ家というのは、フィレンツェの超大金持ちで、名だたる芸術家を支援し、フィレンツェを芸術の都として発展させた一族です。

おそらく350年ほど、フィレンツェの支配権を握っていました。その一族の最後のキャラが、アンナ・マリーア・ルイーザです。

今のフィレンツェがあるのは彼女のおかげと言っても過言ではありません。

彼女の最大の功績は、メディチ家のコレクションである芸術作品の数々を、フィレンツェの次の支配権を握るロレーナ家に譲ることを決めたことです。そして、その条件として、「これらのコレクションはフィレンツェから持ち出してはいけない」さらに、「誰でも観賞できるような状態で止めておけ」と言いました。ここが重要なポイントです。

当時、アート作品というのは、基本的にお金持ちが所有して、お城や屋敷に展示するものでしたが、このアンナ・マリーア・ルイーザは「誰でも観賞できるような状態で止めておけ」という遺言を残しました。そして、そのルールが今も生きています。そのおかげで、メディチ家が集めた芸術作品の数々は、今もフィレンツェに残っているのです。

ここまで、2人の人物をご紹介しましたが、ここから彼らのやったことを分解してみます。

歴史を見ればわかる

まず、ルートヴィヒ2世の例があらわしているのは、『多数決の敗北』です。もし彼が皆の意見を汲んでいたら、今頃あの地域の人は生活できていなかったと言えます。つまり、多数決というのは、誰からも嫌われない手段であるがゆえに、誰からも好かれない無味無臭の結果を量産し、結果的に人やお金を無駄に使ってしまうものでもあります。

言い換えれば、たとえ問題が発生したとしても、リーダーは「お前らが決めたんじゃん」と言って逃げることができるので、無責任なのです。

ここで僕たちが歴史から学ぶべきことは、「いつも未来は一人の圧倒的なエゴによって切り開かれている」ということです。話し合うことは非常に重要ですが、みんなの間をとった意見は、基本みんなを不幸にしてしまいます。

そして、アンナ・マリーア・ルイーザの例を分解すると、彼女がやったことは『無料公開モデルの肯定』です。

彼女は、アート作品を売ることでお金は産んでいません。しかし、作品自体を無料で誰でも見れるようにしたことで、それを見に来た人が、そこでお土産を買ったり、飲食をしたり、宿泊をしたりしてお金落としています。その結果、絵を一枚数億円で売る以上の価値を生みだしているのです。

僕は自分の絵本を作るときに、ここをベンチマークにしています。僕の作品というのは、基本的に無料公開です。制作費を印税で回収するつもりは一切ありません。

僕は、『えんとつ町のプペル』という作品をはじめて無料公開したとき、「10万部売れることよりも1000万人に知られることの方が、はるかに価値がある」と言いました。なぜなら、作品が知られさえすれば、個展をしたり、VR化したり、プラネタリウム上映や舞台化、映画化など、さまざまなところで印税以上の価値を生むことができるからです。

当時は、結構な批判を浴びましたが、芸術の長い歴史で見たとき、絵本の無料公開など新しいことでもなんでもなくて、ただ歴史を繰り返しているだけだということです。似たようなことは、絵本以外の業界でもよく起きています。

つまるところ、新しい価値観に理解できない自分に出くわした時や、未来を知りたい時は、一旦歴史をさかのぼってみるのがいいということです。そこには、似たような事例が必ずあるはずです。歴史というのは、螺旋階段のような形していて、巡り巡って同じような場所に帰ってきて、その度に少しずつ上に上がっています。

このことを頭の片隅に入れておくと無駄な批判は起きないし、誤った判断をしなくて済むでしょう。

なので、まずは歴史から学ぶことをおすすめします。エンターテインメントやサービス業に関わる方々は、ひとまずルートヴィヒ2世とアンナ・マリーア・ルイーザという2人の人物は押さえておくといいと思います。

というわけで、「キンコン西野のメンターは誰だ」というテーマでお話させていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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