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YouTubeで絵本の読み聞かせ動画をアップするのは悪か? by キンコン西野

このnoteは2020年4月20日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:バカと付き合うな俺は死ぬ気でいいバカになるたかざわようすけ さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「Youtubeで絵本の読み聞かせ動画をアップするのは悪か?」
というテーマでお話しします。

西野作品の読み聞かせ動画はOK

最近、コロナの影響で家にいる時間が長いので、絵本の読み聞かせ動画が流行ってるみたいで、結構、話題になっています。

その際、問題になるのは「著作権」です。
勝手に読んでしまって、出版社が怒ったりしているのですが、これについて、先に一般論から申し上げますと、Youtube での絵本の読み聞かせは、著作権の侵害にあたります。
イラストを載せるのも、文章を読み上げるのも、基本、アウトです。

著作者が「おい、アウトだぞ」と言えば、それなりの罰を与えられたりします。こちらに関しては、詳しくはググってください。

ただ、西野の絵本に関しては、少し特別です。映画はまた別で、西野の映画を映画館で撮って Youtubeで流すと大犯罪になりますが、絵本に関する著作権は僕にありまして、絵本のラストページについている「©️」(著作権マーク・copyrightマーク)は、「©️西野亮廣」「©️幻冬舎」になっています。

この辺は、吉本興業とも話し合い、「吉本興業は西野亮廣のマネージメントをする会社であって、西野作品の管理をする会社ではないでしょう」というお話をして、ここからは吉本興業を外しています。

なので、読み聞かせ動画をアップして何か言ってくるとすれば、西野か幻冬舎しかいないのですが、幻冬舎とは仲が良く、絵本の全ページ無料公開などもOK してくれているぐらいなので、広告に関しては、僕に任せてくれています。
そして、その西野が「おい」と言ってくることはありません。

つまり、西野作品の読み聞かせ動画をYoutube にアップすることに関しては、オールOKです。その動画に広告をつけて、広告収益で食べていってもらっても全然構いません。

そこに関して、西野とか幻冬舎とか吉本興業が何か言うことはありません。
どうぞ使ってください。

ただ、企業の方が使うのは問題です。

例えば、トヨタさんが急にやるとなれば、広告の競合みたいになったり数るので、「ちょっと話し合いましょうよ」となりますが、個人でやってもらうのは、全然構わないということです。

ただ、もう一つ、著作者の西野がOK なだけで、他の作家さんそうではないので、くれぐれも「西野が OK を出してるんだから」と、他の作家さんに著作権フリーを求めるのは、控えていただきたいと思います。

それでは、本題はここからです。

「なぜ、西野の絵本は著作権フリーなのか?」というやんわりなあなあにしてる部分です。

表の理由としてよく言っているのは、「お母さんはお金に余裕がないから、ハズレ作品を購入するわけにいかない。だから確実に面白い本を買いたいけれども、本屋さんで全作品立ち読みする時間の余裕もない。となると、絵本購入で外さない方法は一つで、子どもの頃に読んで、面白かった絵本を自分の子供に買い与える。」という流れです。

絵本業界はこのループで回っているので、本屋さんの絵本コーナーは、50年前の作品が平積みされていたりします。絵本がロングセラーの理由は、そこです。

つまり、絵本はネタバレしているものしか、反応してもらっていないのです。絵本はネタバレを隠すメディアではなく、ネタバレしたところからスタートするメディアなのです。

ここを突破しようと思えば、歴代のロングセラー作品を超える方法は一つで、家の中で空き時間に立ち読みしてもらい、そこでおもしろいかどうかを確認してもらうという方法です。

なので、僕の絵本は全ページ無料公開していますし、Youtube の読み聞かせ動画もOKにしています。

これが表のキャッチーな理由です。テレビで話すときは、だいたいこっちの説明をします。

そして、ここからがサロンで話すようなゴリゴリのビジネストークになります

絵本は2次展開、3次展開を見越して設計する

僕は「絵本を作る」と結構簡単に言っていますが、僕が絵本を作る時は、産業構造から作ります。

つまり、絵本の2次展開、3次展開、4次展開、5次展開まで見越して、あらかじめ設計しているということです。

例えば VR。
今も『えんとつ町のプペル』VR の最新版を開発している途中なのですが、VR にも、VR映えする作品と、VR映えしない作品があるんです。VRの良さって、プレーヤーがその世界の中に入ることじゃないですか。

となると、その世界が魅力的でないといけない。
例えば、一歩踏み外すと、奈落の底に落ちてしまう世界なら、VR映えしますよね。「おー怖い怖い怖い怖い」みたいに、プレーヤーがドキドキするじゃないですか。

なので、高さがあると良いですよね。
ただ、高さがあっても、走れちゃいけません。
VRゴーグルをつけて走って、ずっこけたら大事故になってしまいます。

なので、『えんとつ町』です。煙突の上なら走れないけれども、高さはある。なので、『えんとつ町』は、VR映えするように作っているということです。


こう聞くと、同じ絵本でも『はらぺこあおむし VR』 って、ちょっと想像できなくないですか。
はらぺこあおむしの背景は真っ白なので、VRの良さは出せないのです。

これは、はらぺこあおむしの作品の良し悪しを言っているわけではなく、VR が出来るか否かという話です。

このように考えると、はらぺこあおむしのVR化は、やはりちょっと難しいでしょう。なので、僕はそういう絵本を作りません。

必ず、 VR 化、個展化、グッズ化、映画化、ミュージカル化、美術館化ができるように、一番最初の段階から設計しておきます。

細かいことでいうと、個展で回ろうと思ったら、当然、絵の中に文字があったら、エッフェル塔では出来ないわけです。

ここに日本語が入っていたら、絵だけを楽しみたい人からするといらないですよね。

じゃあ、文字だけ取っ払えばいいかっていうと、そうではありません。文字を入れるスペースを残して絵を描いているはずなので、絵の中に文字がある絵本、文字のページと絵のページが分かれていない本は、個展化しにくいということです。

このように、あらかじめ設計しておくんです。

建物の基礎工事と同じです。「最終的に50階建ての建物になりました」というのはありえなくて、基礎工事の段階で見越しておかないと、50階建ての建物は物理的に立ちません。

そして、VRや映画などの2次展開3次展開でマネタイズした方が、本の印税なんかよりも利益が大きいです。

つまり、本の役割は、売上を出すことではなく、より多くの人に知られ、愛されることになります。極端な話、1冊も売れなくても、10億人に知られさえすれば回収できるというモデルです。

ウォーターサーバーみたいなノリです。ウォーターサーバーが出回ったほうが、詰め替え用の水が売れるじゃないですか。「そこで回収しましょうよ」というモデルです。

一般的な作家さんは、2次展開、3次展開の収入は、「作品が売れました。じゃあグッズ化しましょう」「ああぜひぜひ」といったノリなので、棚ぼた的に捉えていて、基本的には無いものとしています。

だから、絵本が売れてもらわないと困るわけです。ここで、無料公開や読み聞かせ動画のOKとNGの違いが出るということです。

絵本が売れなくてもいい人と、絵本が売れてもらわないと困る人と、ここで違いが出る。どちらが正しいという話ではなく、こういうビジネスモデルの違いがありますよというのが、今回のお話です。

ただ、時代を見た時に、この国民総発信者時代には、素材を無料提供した方が強いなというのが僕の見立てなので、僕は無料提供させていただいております。

というわけで、
「Youtubeで絵本の読み聞かせ動画をアップするのは悪か?」
というテーマでお話させていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。

※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
んでもって、ビジネス書に掲載するレベルのコラムを毎朝投稿しています。
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