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アートから学ぶ働き方 by キンコン西野

このnoteは2019年1月21日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供: フクオカ ノ ソウシさん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「アートから学ぶ働き方」
というテーマでお話したいと思います。


本当は、こういった働き方の話は、学校で教えてあげなきゃいけないことなのですが、日本は芸術に関する教育がごっそりと抜け落ちていて、トンチンカンな正義を持ち合わせた大人を量産してしまっているので、このことについて改めて説明させていただきます。

ダヴィンチの絵が高い理由

まず、アートの定義は人によってさまざまなので、今日は「アートとは何か」みたいな話は一旦置いておいて、『アートの価値』についてお話しします。

おそらく、いま世界で一番高い絵画は『サルバトールムンディ』だと思います。競売にかけられたら、間違いなく『モナリザ』ですね。いずれも、レオナルドダヴィンチの作品です。

彼の絵には、一枚何百億円という価値がついていて、本当にやばいです。しかし、ここで考えなきゃいけないのは、レオナルドダヴィンチの絵が一番高いのだけれど、「じゃあレオナルドダヴィンチが世界で一番絵が上手いか」ということです。ここはちょっと微妙ですよね。上手いのは間違いないのだけれど、画家としての技術が世界で一番であるかどうかは別の話です。

それこそ、ダヴィンチが生きていたのは15世紀頃なので、その後も絵を描く技術がどんどんアップデートされていることを考えると、ダヴィンチよりも絵が上手い人はたくさんいると言えます。何百人、何千人では利かないくらいいると思います。それでも、ダヴィンチの絵が世界で一番高いんです。

理由はいくつかありますが、その一つは、「ダヴィンチはもう死んでいるから」だと言えます。つまり、今後ダヴィンチの作品の数が増えることは絶対にない。どんな金持ちがどれだけの大金を用意しようが、ダヴィンチの作品はもう増やすことができないのです。

だからこそ、現存するダヴィンチの絵の価値がどんどん上がっていると考えられます。

2つ目は、ダヴィンチという人、およびダヴィンチの絵というのは、後世の影響力が足し算的に増えているということがあげられます。つまり、『モナリザ』を見て育った画家が量産されており、彼の絵が後世に与えた影響がすごく大きいということです。

『モナリザ』は教科書に載ってるくらいなので、あれを見て何かの影響を受けている人がたくさんいると、後世の影響力が足し算的に増えていくので、結果的にダヴィンチの絵の価値がどんどん上がっていきます。

あとはシンプルに、有名であるということです。「みんなが知っている」ということもひとつの『価値』です。

なぜなら、有名だと観光資源になりえます。ルーブル美術館の近くまで行った時、「モナリザがあるらしいから1回見とくか」と言って、ルーブル美術館に足を運ぶ人がいます。そのことにより、入場料が発生する。しかも、過去に『モナリザ』は盗まれたことがあるのですが、そのことによってさらに有名になって絵の価値が上がりました。

このように、3つほどの例を挙げましたが、そのうちの一つも「絵が上手いから」という理由ではありません。

つまり、絵が上手いかどうかは、多少は価値には影響しますが、『絵画の価値』と『絵の上手さ』というのは、本質的には関係がないと言えます。

しかし、学校の美術の授業では、クラスで一番絵が上手い人の通知表が5になるので、絵が上手い人、および絵が描ける人を高く評価するきらいがある。ただ、あれはあくまで『技術点』であって、『価値』ではありません。

どれだけ絵が上手くても、1円も稼げないアーティストなんてざらにいます。つまり、すごい「アーティスト=絵が上手い人」ではないということです。絵が上手くてすごいアーティストもいるし、絵が下手でもすごいアーティストもいます。

提供すべきは「技術」ではなく「価値」

では、現代のアーティストで高い評価を得ている人は何をしているかというと、みんなが解きたくなるような問題を投げかけたり、みんなが参加したくなるような世界観を提供したりしている。つまるところ、『価値』を提供しています。

ここが整理できていない人は、「あの作家は、実は他の人に絵を描かせているらしい」というような批判をしてしまいます。

昔、僕は『えんとつ町のプペル』という絵本を分業制で描くと発表したとき、その類の批判をたくさんいただきました。でも、分業制とはいうけれども、40人のスタッフに指示を出さなければいけないので、当然僕自身もびっくりするほどの量の絵を描きます。

しかし、そのような批判がきたということは、「アーティスト=絵を描く人」だと考えている方が結構いるということです。おそらくその人たちは、『となりのトトロ』の背景を宮崎駿が描いてると思っています。そうではなくて、宮崎駿さんはもちろん絵も描きますが、彼は作家であり監督なので、彼が作っているのは『世界観』です。

例えば、トトロの背景を描いているのは男鹿和雄です。これは、村上隆さんや、アンディーウォーホル、ガウディにも当てはまると言えます。確かガウディは、図面すら弟子が書いていたはずです。

このように、その作家が生み出す『世界観』や、作家の頭の中にある『答え』に価値があるわけであって、その作家の『手の技』に価値があるというわけではありません。

くれぐれも言っておきますが、『手の技』に全く価値がないというわけではなくて、もちろん価値はあるけれど、あれだけの大きな価値を生む本質的な理由はそこではないということです。

つまるところ、ここを分けて考えられる脳みそを持っていないと、給料を上げることはできません。ここから働き方の話につながってきますが、この話は画家でなくてもどのような人にも当てはまると言えます。

どれだけ働いても、どれだけ技術が高くても、そこに『価値』がなければお金生まれないということです。技術が上がれば上がるほど、ある程度のところまでは給料は上がるので、そこから先も地続きだと考えがちですが、労働時間および技術の成長と、給料の増加の比例関係はある一定のところで終わります。

これ大切なことなので、もう一度言います。
労働時間および技術の成長と、給料の増加の比例関係はある一定のところで終わります。

それは、絵が上手いのに作品の単価が上がらないアーティストと全く同じです。そこから先は『価値』の協議で、時間の長さや技術の高さとは全く別の問題なのです。

つまり、「どうすれば『価値』を作れるか」という思考にチェンジしないといけません。ここが、今日のテーマである『アートから学ぶ働き方』です。僕は様々な言い方をしていますが、やはり提供しなきゃいけないのは『価値』であるということです。

一度、「なぜあの絵はあれだけ高いのか」というのを調べてみてください。結構面白い答えが出てくると思います。

というわけで、
「アートから学ぶ働き方」
というテーマでお話させていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。

※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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