「キャラ経済」の足音byキンコン西野
このnoteは2020年7月14日のvoicyの音源、『西野亮廣ブログ』の内容をもとに作成したものです。
voicyの提供: お値段以上西野 この出会いに感謝 さかいりょうすけ さん
どうも。キングコングの西野亮廣です。
お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。
今日は、
「『キャラ経済』の足音」
というテーマでお話しします。
今日は、随分前にオンラインサロン内でお話ししたことがある、「今、ボンヤリと起きている時代の変化」を具体例を交えてお話ししたいと思います。
もともと(というか今も)僕らは商品を買う時に「お金」を使います。
この「サービスの取引に際して貨幣が交換手段」となっている経済の仕組みを『貨幣経済』といったりします。
この経済圏は「お金さえあれば、いろんなものが手に入る」というルールなので、皆、こぞってお金を求めるわけですね。
でも、今の若い子達って、オジサン達に比べて「お金、お金」と言ってなくないですか?
そりゃ、お金があれば嬉しいけど、そこまで死に物狂いでガッついている若い子って、あんまり見ないですよね?
それもそのはず。
今は、お金以外の「あるモノ」を持っていれば、いろんなものが手に入るようになったからです。
その「あるモノ」の正体が、『フォロワー数』です。
Instagramの「フォロワー数」が一定数を超えていれば、お店側から「無料でいいので、ウチのサービスを使ってください」と声がかかる。
無料どころか、場合によっては、サービスを受け取っているのに「お金」をもらえたりする。
YouTubeの「チャンネル登録者数」が多ければ、自分のプライベート動画を配信するだけで、場合によっては年間に1億円以上の収入が入ってきたりする。
この「多くのフォロワーを抱えていれば、いろんなサービスどころか、お金すら手に入るようになった経済のことを、「評価経済」と言います。
これは、岡田斗司夫さんが2011年頃に提唱されて、当時は、あまりピンとこない人もいたかもしれませんが、今となっては、メチャクチャ当たり前になっていますよね。
たとえば、「給料30万円の会社」と、「給料はゼロ円だけれど、毎月1000人のフォロワーが自分に付く会社」、この二つの会社があった時に、後者を選ぶ人って、意外と少なくないと思います。
フォロワーさえいれば、お金を作れるからです。
ついには、「お金」よりも「フォロワー」の方が価値が上がっちゃっているんですね。
その典型的な例が、ZOZOの前澤さんのツイッターで、自分のツイッターをフォローしてもらうのに、1億円をかけられた。
これなんて、10年前の人からすると、ワケがわからないと思うんです。
ただ、1億円をかけてフォロワーを700万人にしましたが、フォロワーが700万人もいれば、うまくやれば1億円が作れるんですね。
それだけ「フォロワー」というのは大きな価値を持っている。
ところが。
ある時を境に、この「フォロワーさえ持っていれば、何でも手に入る」と言う『評価経済』に異変が起きます。
「フォロワーをたくさん抱えるTVタレントがクラウドファンディングをしても、お金が集まらない」という事件が起きた。
「数百万人のフォロワーを抱える有名人がオンラインサロンをやっても、人が集まらない」ということが各地で起きている。
ここで、皆、気づくわけですね。
「どうやら、フォロワー数が多ければイイ…というわけでもない」
と。
逆に言うと、フォロワー数がそこまで多くなくても、自分のことをものすっごく信用してくれているフォロワーを抱えていれば、サービスを受け取れたり、お金を作れたりするようになってきている。
事実、ウチのスタッフの田村さんは、ツイッターのフォロワーが1万人ですが、有料オンラインサロンの会員が2000人を超えている。
どうやら「フォロワー数」という単純な「人数」だけでは計ることができない力が働いている。
「広さ」だけじゃなくて、「深さ」も関係していることが、ここから見えてきます。
どちらも「個人の評価」ではあるものの、どうやら『評価経済』の中には、「フォロワー数経済」と「信用経済」の二つがある。
そして今、フォロワー経済よりも、信用経済の方がジワジワと力を持ち始めていて、ついには「フォロワーを集めている人よりも、信用を集めている人に広告をお願いした方がいいんじゃね?」と、広告費ですら「信用持ち」に払われ始めている。
おそらく僕なんかは「信用経済」の住人だと思います。
「西野は嘘をつかない」という信用が、今の僕の生活を支えてくれています。
そして、さすがに皆、気づき始めてきました。
「お金」よりも「フォロワー」を集めた方がいいし、「フォロワー」よりも「信用」を集めちゃ方がいい、と。
そんなこんなで、本音で語る人が増えたんです。
「自分が実際に使っていない商品のCMの仕事は受けません」という人が出てきた。
オリラジの中田くんが自身のYouTubeで書籍を紹介する時に、どれだけ出版社から誘惑されようが、何がなんでも「お金を受け取って、書籍を紹介する」ということをしないのですが、それなんて、まさに。
そこで「お金」を受け取ってしまうと、本当に良いと思ってススメているのか、お金を貰ったらかススメているのかが分からなくなる。
つまり、信用を落としてしまう。
それは、今の時代、かなりの損失なんですね。
出版社から貰える程度の「お金」は、大きな信用さえあれば、稼ぐことができるので。
こうして、「信用持ち」がジワジワと増え始めたおかげで、実は「本音」「真実」の価値がジワジワと落ち始めている。
「正解」の価値が落ち始めている。
そこで、出てきたのが「キャラ経済」です。
「あいつ、本当にクソだけど、ほっとけないよな」というキャラクターに、人とお金が集まり始めている。
後輩にホームレス小谷という男がいるのですが、コイツなんて、遅刻・寝坊は当たり前で、現場に来ても、まるで働かないww
こんな奴、昔なら、世の中から真っ先に消えていたのですが、ところが小谷がクラウドファンディングをするとお金が集まるし、小谷のブロマイドは10万円とか、20万円とかで売れるし、年末には「天才万博」というイベントで2500人集める。
何か特別な能力があるわけでもない。
遅刻・寝坊の常習犯なので、いわゆる「信用」を持ち合わせているわけでもない。
彼が持っていたのは一つ、「キャラクター」です。
ウチのインターン生にも「べえ君」という東日本を代表するポンコツがいるんですけども、彼もまた「ポンコツ」というキャラクターを持っていて、もっと言うと「ポンコツというキャラクターを守っていて」、彼のところには人とお金が集まっている。
品質の良いサービスは他でいくらでも手に入るから、皆、少々自分が損をしてもいいから「ネタ」を買い始めている。
「また、あいつにやられたよ〜」というネタを。
▼ なっとう三姉妹物語
僕は2日に一度ぐらいのペースで、サロンメンバーさんの会社のコンサルをやっているのですが、一昨日、面白いことがありました。
「粉なっとう」という粉末状の納豆を販売している「はすや」という会社の方から、「どうすれば、ウチの粉なっとうを広めることができますかね?」という、ご相談を受けたんです。
会社は母と娘三人で運営されていて、「粉なっとう」は、亡くなられたお父様が開発した商品らしいんですね。
ただ、ある時、一部界隈で「粉なっとう」が話題になって、そこから競合の会社がポコポコ出てきたらしいんです。
どうやら、よくよく話を聞いていると、その競合の会社にシェアを奪われ始めているみたいで、ピンチだと(笑)
で、競合の会社は、どういった広告戦略をうっているのか聞いてみたところ、「あいつらスゲーんっすよ〜」と、競合の会社の褒め言葉しか出てこない(笑)
で、僕も相談を受けている以上、なんとかしなくちゃいけないですから、「SNSで、こうこう、こんな感じで頑張れますか?」と提案したところ、「ちょっと無理かもしれません」とか言い出すんです(笑)
「でも、最近、インスタは頑張ってます」とか言うもんだから、インスタを覗いてみたところ……カニがアスファルトの上を歩いている写真がアップされていて一言、「カニが道歩いてて、子供がびっくりして大喜び」……なんで、それで「粉なっとう」を買おうと思う人がいるんだよ。。
(※問題のInstagram)
そういうことを片っ端から突っ込んでいったら、「ギャハハ」と笑って、三姉妹揃いも揃って馬鹿野郎なんです。
これは、今の時代、メチャクチャ強いなと思って、実はその過程を僕のフェイスブックで生配信したんです。
すると、そのやりとりをしている間に「粉なっとう」が爆発的に売れた。https://www.rakuten.ne.jp/gold/has/
買った人達は「粉なっとう」が何かよく分かってないんです。
皆、「キャラクター」を買ったんです。
彼女たちがポンコツじゃなかったら、こんなに売れなかった。
ここは、これからメチャクチャ重要になってくるので、絶対に抑えておいた方がいいと思います。
というわけで、
「『キャラ経済』の足音」
というテーマでお話しさせていただきました。
それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。
※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
んでもって、ビジネス書に掲載するレベルのコラムを毎朝投稿しています。
興味がある方はコチラ↓
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?