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コロナ時代を生きる芸人に求められる能力byキンコン西野

このnoteは2020年5月1日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供: 宮城 周平 さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日はですね、
「コロナ時代を生きる芸人に求められる能力」
というテーマでお話したいと思います。

いつまでもカッコつけてる場合じゃないよ

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、吉本興業の芸人は『吉本自宅劇場』と題して、自宅から届けられるエンタメを模索していて、その中で、ここに来て吉本興業発のクラウドファンディング『SILKHAT(シルクハット)』が機能しています。

『SILKHAT(シルクハット)』が『チケットぴあ』のような役割を果たしていて、みんなそこでオンライン飲み会やオンラインお茶会、オンライン単独ライブ、オンライン座談会、オンライン似顔絵屋さんなどのチケットを販売しています。

コロナによって、大きく時代が変わったことは周知の事実ですが、何がどう変わって、抜け道はどこで、僕ら芸人には新たにどんな能力が求められているのかということを把握し共有しておいた方がいいと思うので、今日はそんな話をしたいと思います。

とても大まかに整理すると、『広告収入』というものと『ダイレクト課金収入』というものがあります。僕はよく言っているのですが、収入には、大きくこの2つがあります。

『広告収入』で一番有名なのはテレビです。

テレビはスポンサーさんがいて、スポンサーさんが広告費(つまり番組の制作費)を支払って、その制作費の一部がタレントのギャラになっています。

ですから、テレビのギャラの出所というのは、スポンサーさんの広告費です。

YouTube も同じように『広告収入』です。

次に『ダイレクト課金』で有名なのはライブなどです。

お客さんがチケット代を払って、グッズを買って、その売り上げの一部がタレントに入ります。ギャラの出所はお客さんです。

これが『ダイレクト課金』です。

クラウドファンディングやオンラインサロンもこの『ダイレクト課金』にあたります。

『広告収入』であろうと、『ダイレクト課金』であろうと、それらの収入を得るためには、それぞれ求められていることが違います。

『広告収入』をメインにする人と『ダイレクト課金収入』をメインにする人とでは、その求められる役割が違うということです。

まずは、このことを把握しておかなくてはなりません。

スポンサーがタレントに広告費を出しているのは、商品を多くの人に知ってもらい買ってもらうことが目的です。

ですから、タレントというのは、基本的に広く認知されていなければならないのです。

『広告収入』で生きるタレントは、基本的に広く認知されていないといけない。

それで言うと、テレビという箱はよくできています。

まだまだ無名の自分の鮮度や持ちネタとトレードオフで、すでに広く認知されている人とを絡ませてもらうことによって、自分の認知度を上げていくという道筋が整っていて、うまくいけば自分単体にスポンサーがつくこともあるからです。

これは、本当にテレビのよくできた仕組みだと思います。

ただ一方で、認知度が高くても、主義主張が強すぎると嫌煙されるということがあります。

スポンサーさんは商品を売るのが目的なので、その商品イメージと逆のことをされると具合が悪いし、政治的な発言を繰り返されると最終的にはそのタレントが勧めている商品の不買運動をされたり、クレームがスポンサーさんに行ったりするのです。

ですから、主義主張が強すぎるタレントさんはちょっと煙たがられてしまいます。

これは、テレビでもYouTubeでもだいたい同じです。

スポンサーさんにはスポンサーさんの事情があるのです。

『広告』で生きる道というのは、ここで頑張ればこれくらいの収入がいただけるという道筋が整っている反面、言動に制限がかかってしまうという事実があります。

一方、『ダイレクト課金』はそうではありません。

むしろ、主義主張がはっきりしていた方がいいし、収入だけに目を向けるなら、広く知られなくてはいけないということでもない。

例えば、YouTubeの広告再生1回が0.3円だとすると、3000円稼ごうと思ったら最低1万回再生、つまり1万人に見られる必要がある。

これが『ダイレクト課金』なら、3千円のチケットを買ってくれる人1人でいい。3千円のチケットを買ってくれる人1人で広告再生1万回分の威力がある。

『広告費』と『ダイレクト課金』には、これくらいの違いがあります。

なので、『ダイレクト課金』を抑えていたら、そんなに多くの人に知られなくても生きていこうと思ったら生きていけます。

今、テレビのバラエティは難しいです。
YouTubeを今から始める人も、収益化まではなかなか難しいです。

不況になると企業は広告費から削っていくので、その面も期待できないです。

つまり、芸人は今『広告収入』が絶たれている。

ですから、それを得るために必要だった「広く認知される」という作業の重要度も下がっています。

くれぐれも、これは「今は」ということです。

後々もこんなものはいらないという話ではなく、「今は」その重要度が下がっているということです。

となってくると、『ダイレクト収入』に移行するしかない。

けれども、これまで吉本興業がお膳立てしてくれていた「劇場」という『ダイレクト課金』も断たれてしまった。

残されているのは、オンラインで、お客さん一人一人に自分を買ってもらうという道のみです。もうそれしか残ってないのです。

「劇場」のように芸人がセット売りされることはありませんし、オフラインのようにザッピングもないのです。

ザッピングというのは、つまり、オフラインの場合だと、例えば、目当ての芸人さんをテレビでみようと思ったら、まずテレビをつけてザッピングをして、お目当ての番組やお目当ての芸人を探します。

その過程で、お目当て以外の芸人を発見したりすることもあるということです。

しかし、インターネットの場合だと、お目当ての芸人の名前を検索して一発でその芸人にたどり着いてしまうので、ついでに見つかるということはないのです。

これが、インターネットのルールです。

『和牛』の単独ライブを検索する人は、吉本から検索をはじめないで、いきなり、「和牛」と打ち込みます。それで、ダイレクトで『和牛』に届くということです。

その上で、オンラインでお客さん一人一人に自分を買ってもらうとなると、もう求められている能力は一つしかないです。

『営業』です。

SNSで「僕を買ってください」をどれだけ言えるか、です。

芸人ってこう見えてプライドの高い生き物ですから、ぶっちゃけ、これが言える芸人と言えない芸人がいる。これが言える芸人を馬鹿にする芸人もいる。

ただ、今は、これが言えない芸人はなかなか厳しいです。

待っていて仕事が転がり込んでくることはないですし、誰かのついでに買われるということもないからです。

ネット上に投げた商品って、ネット上には商品だらけなので、自分からちゃんと自分のお客さんに「買ってください」という売り込みをしないと、本当に見つけてもらえないのです。

だから見誤ってはいけないのは、シルクハットに自分の単独ライブのポンって投げたあと、手放しで売れるわけがなくて、「ここで売ってますよ!」ということを自分のファンの方にアナウンスする必要があります。

そこをオフラインの時の感じでやってしまうと、つまり「自分の知名度からいけばそれほど営業をかけなくても売れるだろう」と考えてやってしまうと痛い目に合うと思います。

これは芸人に限った話ではなくて、オフラインからオンラインに売り場を移行せざるを得なくなってしまった人たち全員に言えることです。

「買ってください」が言えない人は、今ちょっと厳しい。

「営業」ができない人は、今ちょっと厳しい。

自分が一生懸命作ったものをポンと置いて、オフラインだったら、まだザッピングで見つけてもらうということがあったのですが、オンラインの勝負ではそういうわけにはいかないということです。

たまたま見つかることはないので、自分の商品を「買ってください、買ってください、買ってください!」と頭を下げていかないと、ちょっと厳しいのです。

必要な能力は『営業力』です。

でも、守りたいものがあるんだったら、それぐらい言えるでしょ?

というわけで、頑張っていきましょう。

今日は、
「コロナ時代を生きる芸人に求められる能力」
というテーマでお話させていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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