戦地に放り込むのなら、戦い方を教えろbyキンコン西野
このnoteは2020年3月28日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:やんべだい さん
どうも。キングコングの西野亮廣です。
お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。
今日はですね、
「戦地に放り込むのなら、戦い方を教えろ」
というテーマでお話したいと思います。
精神論で片付けるな
僕、ツイッターは基本やってないんですけれども、2、3日前に新型コロナウイルス対策についての都知事の会見を受けて、
「『仕事は自宅で』っていう説明をする会見に、大勢の人を集めるボケなんなん。配信したらいいと思うよ」
っていうツイートをしたところ、これに大きな反響があったんですね。
ヤフーニュースとかにはなったと思うんですけども、これを受けてほとんどの人は「そりゃそうだ」という反応だったんですけれども、
一部の方からは「一生懸命働く人に対してボケとはなんなんだ」という声が上がってですね。
これは以前、お話しした「文脈脳」と「単語脳」のうちの、典型的な単語脳の人の声です。
単語脳の人というのは、この「ボケ」っていう単語だけを切り取ってしまって、前後の文脈を削ぎ落として罵る言葉として捉えてしまっているんですね。
文脈読めばわかると思うんですけども、ここでのボケっていうのは「人が集まるところに行くな」と言いながら人を集めているという、ボケツッコミのボケで。
まぁこんな説明をしなくても、多くの人は理解できると思うんですけれども、単語脳の人にはそれがなかなか伝わらないと。
「絵本作家が『ボケ』なんていう汚い言葉を使うのはどうなんだ」ってなっちゃうっていうことですね。
ここに関してはまぁ、議論するだけ無駄で、ちがう時空の人なんだっていう理解でいいと思うんですね。
問題はそこじゃなくて、今回の会見のあり方で。
ちょっと話が逸れますが、僕のことを昔からを愛してくださっている方からすると、もう何度も聞かされている話なんですけれども、「ヨット理論」っていうのがあるんです。
ざっくり説明すると、ヨットっていうのは風を利用して、「揚力」というものを利用して進むわけですが、追い風だともちろん前に進みますよね。
でも、向かい風でも前からくる風でも、風に合わせて帆を操作することで45度くらいの角度でジグザグと前に進んでいくことができると。
このヨットの最大の弱点は何かというと、風が吹いていないときはにっちもさっちもいかないんですね。
もう、手こぎでえっさほいさと行くしかない。
これが一番辛いんですよ。向かい風はラッキーなんですよ。
風が吹いていないという状態が一番、ヨットにとって厳しい状況であると。
これはあらゆることに置き換えて考えることができて。
例えば、あなたが芸人だったとするじゃないですか。
で、禿げていたとします。
一般的にハゲっていうのは、ネガティブに、つまり、向かい風として捉えられがちですが、トレンディエンジェルを見る限りマイナスに働いてないんですよね。
じゃあ、あなたがチビだったとします。
やっぱり一般的なチビっていうのは、ネガティブに、つまり、向かい風として捉えられがちですが、池乃めだか師匠だとか、ナインティナインの岡村さんを見る限りマイナスには働いてないですよね。
芸人からすると、ああいった「向かい風」とされるものは、オイシイとなるわけですね。
「ネタにする」って言い方をしたりします。
逆にツラいのが、デブでもハゲでもチビでも貧乏した経験もない、標準の状態ですね。
応援される要素がないから大変なんです。
僕個人の話をすると、「好感度低い」とか「嫌われ芸人」とか言われてた時期が一番ラクでした。
渋谷ハロウィンでゴミが山ほど出たから、ゴミ拾いイベントが生まれたし、「はれのひ」事件が起きたから、リベンジ成人式っていうものが生まれた。
これら全ては何もしなければ向かい風だったんですけれども、帆の傾け方次第では、前に進めてくれる力となる。
ポイントは、向かい風が吹いているときに「これは何をするチャンスなんだ」ということを問い続けることですね。
今コロナの影響で、各業界が大きな打撃を受けていますが、その裏で僕のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、
「今だからこそ、こういう仕事ができるよね」とか、「試してみたけどこれも仕事になったよ」といった感じで、毎日のように新しい働き方、新しい職業が生まれていて、それを共有しているんですね。
事実、今回のコロナで売り上げを伸ばした飲食店やお花屋さんはポツポツ出始めています。
帆をうまく傾けたわけですが、これは訓練で手に入る能力だと見ています。
向かい風が起きた時に、頭を抱えて病んでしまう人と、
向かい風が起きた時に、ニヤニヤしながら帆の角度を探る人。
ここには、大きな大きな差が生まれる。
ここでようやく話は本題に戻るんですけれども、
では、新型コロナウイルスについての今回の会見は何をするチャンスだったのか。
僕ね、「配信すりゃいいじゃん」と呟いたんですね。
すると、「配信だったら見れない人がいるだろう」とか、「テレビや新聞で情報を得る人もいるんだ」という声が上がって。
いやいやだから、世間一般に対してもそうだし、記者にも配信すればいいじゃん、という話ですよね。
記者が、配信されたものをテレビで流したり、文字に起こして翌朝の新聞にするわけだから。
記者が会見場にいなきゃいけない理由なんて、ひとつもないんですね。
っていうことを伝えると、今度は「質疑応答ができないだろう」っていう意見があったんですね。
記者会見ってのは一方通行なものではなくて、記者とのインタラクティブなものであるっていう意見ですね。
それについては、「世間一般にはyoutubeで配信して、記者とはzoomで繋げばいいじゃん」と返したら
「zoomってなんだよ」っていう声が返ってきたんです。
そうなんです、ここです。zoom を知らないんです。
zoomで会議をしたことがない人がいるんです。
なんとなく、まあテレビ電話ぐらいは、イメージできているんですけれども、一対一のね。数十人を動画で同時接続するっていうイメージがついていないんです。
だから、質疑応答ができないだろうみたいな声が出てきてしまう。
どれだけ政府が「テレワークでお願いします」と言ったところで、テレワークのやり方が分からないっていうのが世間なんですね。
いよいよ、話の結論に向かいますが、
今回の会見っていうのは、外出の自粛を求めるなら尚のこと、テレワークのやり方を会見でやって見せるチャンスだったという話ですね。
「こういうシステムがありますよ」
「Zoomっていうものがありますよ」
「記者会見ですらこれでやれますよ」
「なので、皆さんもこういうものを使ってみてください。」
「週末は Zoom のみをして下さい」
って言えるチャンスだったってことですね。
問題を解決したいのなら、「なんとかしろ」とか「我慢してやれ」っていう、この精神論で推し進めるのではなくて、ちゃんとこのシステムを整備して、問題を解決する方法をセットで教えてあげることが重要で、
外出の自粛を要請するのであれば、在宅の満足度を上げてあげることが大切だと思いました。
「在宅でも働けるんだ」とか、「在宅でもこういう楽しみ方があるんだ」っていうことを、あそこの会見で教えるチャンスだったっていう話ですね。
くれぐれもこれは、今回の会見に限った話じゃないですよ。
手の甲にタトゥーを入れておいたほうがいいくらい、「これは何のチャンスなんだ」っていう問いを問う癖をつけておいたほうがいいですね。
そして、次の段階として、人をどこかに向かわせたいのであれば、それが社員でも部下でも後輩でもお子さんさんでもいいのですが、「歩き方を教えてあげる」っていうことが非常に重要だと思います。
今はもうサバイバルの様相を呈してきたので、きちんと戦い方、生き延び方を教えてあげることが大切だと思います。
とても重要な話なので、今回の話に共感してしてくださった方は、シェアしていただけると嬉しいです。
というわけで、
「戦地に放り込むのなら、戦い方を教えろ」
というテーマでお話させていただきました。
それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。
※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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