見出し画像

キンコン西野が絵本「1万冊」を自腹購入した本当の理由とは?

このnoteは2019年1月19日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供: 松村湧太さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「キンコン西野が絵本1万冊を自腹購入した本当の狙いとは」
というテーマでお話したいと思います。

2020年は、年末に映画『えんとつ町のプペル』が公開されるということで、僕にとって今年は過去最大の『プペルイヤー』です。この『えんとつ町のプペル』のプロジェクトは、絵本の構想段階から考えると、7、8年も前にスタートしていて、今年の年末がついにその集大成になります。

そして、オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、この映画『えんとつ町のプペル』をメガヒットに持っていくまでの戦略を連日語っています。

つまり、西野は今、バキバキの戦闘モードでお届けしていて、「作ったものをお客さんに届けるためには何をしなくちゃいけないのか」とか、「何をしちゃダメなのか」といったようなことを、毎朝サロン記事に書かせてもらっています。

やっぱり、売れるものには理由があって、売れないものには原因がある。個人的には、そこに偶然など信じたくありません。なので、「広告販売戦略を徹底的に追い込んで考えた上で、確実にメガヒットを出す」ということを掲げてやっています。

また、舞台『えんとつ町のプペル』も間もなくスタートするということで、僕は今一日中『えんとつ町のプペル』をエゴサーチしています。『えんとつ町のプペル』のワードを検索しては、「世間はこういう感想を持っているんだ。だったらこういう球を投げようか」と日々試行錯誤しています。

そんな中、『えんとつ町のプペル』でエゴサーチしまくっていたら、おそらく今から3年ほど前のニュースをたまたま見つけました。

今日の本題になりますが、そのニュースとは「キンコン西野が絵本1万冊を自腹購入絵本1万冊を自腹購」というものです。

1万部購入の本当の理由

今から3、4年前に『えんとつ町のプペル』が出版されたとき、僕は自分の絵本を自腹で1万部購入しました。

当初、出版社からは『初版1万部』と打診されていたのですが、1万部ではすぐに売り切れてしまうので、3万部に上げてくれるよう要求しました。結局、現在までで42万部くらい売れていると思いますが、はじめは初版1万部と言われていたんです(2020年1月時点)。

絵本は5000部とか1万部でヒットと言われるような世界なので、1万部でもまあまあ頑張ってくださっている方なのですが、それに対して僕は「1万部なんか絶対にすぐに売り切れてしまって、本屋に行ったら2週間くらい在庫切れみたいな状態になってしまう」と反対しました。

なぜなら、『えんとつ町のプペル』の発売に合わせて、記者会見や結構大規模な個展をぶつけていたからです。だから「初版は3万部にしてくれ」と言いたかったのですが、その時点では1万部がすぐに売り切れるという説得材料がありませんでした。ならば1万部を自分で買うことにして、約2400万円分を自腹購入しました。それがニュースになったのです。

ただ、ネットニュースや報道でも、かなりこのストーリーが端折られていて、「1万部越え大ヒットって宣伝するためにやっている」とか、「『1万部売れている絵本』と言えば、みんなが買っていると思っちゃうよね」といった批判的なコメントが寄せられました。他にも、「買った本は寄贈でもしたのか」とか「損して徳とれの精神やな、さすが商売人ですね」といったようなコメントもたくさんありました。

ここでコメントされている方たちはおそらく大手の音楽事務所が自社アーティストのCDを大量に買ってランキングを上げる『自社買い』と同じようなことを西野がやっていると考えたのだと思います。

一応、その時も説明したのですが、当時は「キンコン西野のやることは全て叩け」という風潮であまり聞いてもらえなかったので、あらためて説明します。

例えば、予約販売のプラットフォームについて考えるとき、代表的なものとしてAmazonがあげられますが、Amazonでは、発売の3カ月くらい前からでないと予約できません。
一方、僕の絵本は1冊作るのに数年はかかります。そして、オンラインサロンなどでその制作過程も公開していると、制作途中で絵本が欲しくなる人もいるはずです。

ただ、そこで欲しいと思っても、Amazonではまだ予約することができません。なので僕は、発売の1年前から予約販売サイトを自分で作って、そこで予約を受け付けていました。結果的に、その予約数が1年間で1万冊ほどになったので、その1万冊を出版社に注文し、予約者さんに送ったというだけの話です。

当然、僕の家には絵本の在庫は1冊もありません。言い換えると、「発売前に自分で1万冊の絵本を売った」ということです。だからこれは、先ほど述べた『自社買い』とは事情が全く違います。『自社買い』の場合は、おそらく事務所に1万枚のCDが残っています。

つまり、僕が仕掛けた予約販売の方法は、金に物を言わせてランキングを上げているのとはわけが違います。僕が2,400万円に物言わせてランキングを上げたわけではなくて、1万冊の予約を取って、1万冊売ったというだけの状態ですね。

この方法でやりたかったのは、出版不況が叫ばれている中でも「本にはこういう売り方もありますよ」ということを著者さんや出版社さんにお伝えすること。ただ、メディアでは肝心な部分を切り取られて報じられてしまったので、結局この売り方で初版部数を上げているのは、今なお僕くらいです。これはすごくもったいないと思います。

今はECサイトも自分で作れてしまうのだから、予約開始を前倒しするだけで初版部数は上げることができます。そんなわけで、クリエイターさん、著者さんの生存戦略として、非常に使える一手ではないかと考えられます。

やはり、メガヒットとか社会現象になるのを狙うのは本当に難しいです。、ヒットのラインは絵本だと1およそ万部で、ビジネス書だと5万部あたりです。ただ、この辺のラインは、努力次第では確実に狙えると考えています。僕が紹介した予約販売の方法は、結構足し算的に狙える部分です。

ここは確実に狙える範囲なので、自分で予約を取る、あの手この手でクラウドファンディングするといったような努力をするかしないかだけの話です。あとはもうこの方法を知っているどうかですね。まずは知っていないと、こういった努力はできないので。

なので、僕はこれからも、作品の届け方、サービスの届け方、人の巻き込み方について色々な提案をしていくと思いますが、どうか脊髄反射的に怒って耳をふさがずに、少しお付き合いいただけると嬉しいです。

僕は、すべての挑戦者が挑戦しやすい環境を作っていきたいと、本気で思っております。

というわけで、
「キンコン西野が絵本1万冊を自腹購入した本当の狙いは」
というテーマでお話させていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
んでもって、ビジネス書に掲載するレベルのコラムを毎朝投稿しています。
興味がある方はコチラ↓




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?