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イベントの価値を考える by キンコン西野

このnoteは2020年6月19日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:オーストラリアでおたんこナースたかはしなおこ さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「イベントの価値を考える」
というテーマでお話しします。

クラウドファンディング上で仕事をする

今日はまず、ご報告とお礼を申し上げたく思います。
昨日、映画『えんとつ町のプペル』のクラウドファンディングの第2弾が終了しました。こちらは、「映画『えんとつ町のプペル』を全国の子供達にプレゼントしたい」という企画です。

今回は支援総額が、34,635,200円。
そして、支援者数が13,928人。

すごい人数ですよね。
第1弾と合わせると支援総額は、67,419,200円。
支援者数は27,247名という、本当に多くの方にご支援いただきました。

本当にありがとうございました。

こちらのクラウドファンディングでは、「映画を観たい」という子どもたちや、サッカースクールや児童養護施設などの子供施設、子供団体と、映画『えんとつ町のプペル』を見せてあげたい人を、クラウドファンディング上でマッチングするという内容です。

しかしながら当然、マッチングがまとまらない場合もあるんですね。
だからと言って、「今回はマッチングが成立しませんでした」と返すのは、ただのマッチング野郎になってしまいますし、いや西野お前も汗書けよという話になるじゃないですか。

というわけで、支援の手が挙がらなかった子ども施設、子供団体には、僕が個人ですべて支援させていただくことにしています。

同じクラウドファンディング上でリターンとして仕事をして、その仕事の収益を全額支援に回させていただくことにしています。

「映画『えんとつ町のプペル』をみたい」と手を挙げてくれた子どもたちが、5000人であろうと、10000人であろうと、個人的に支援させていただきます。

それで、このクラウドファンディングは、第3弾、第4弾と続けていくのですが、もちろん、今後も手を挙げてくれた子どもたち全員に映画『えんとつ町のプペル』をプレゼントさせていただきます。


そのようなこともあり、クラウドファンディング上で仕事をさせてもらっているのですが、「クラウドファンディング上で仕事をする」って、あまり聞きなれない言葉ですよね。

これは何をやっているかというと、主に、「オンライン講演会を見れる券」というものをクラウドファンディング上のリターンとして販売させてもらっているのです。

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昨日、クラウドファンディングが終わり、早速今日、オンライン講演会があるのですが、
このオンライン講演会の参加者は、1万人を超えています。

実は前回のクラウドファンディングのリターンでも、別の内容で、「オンライン講演会を見れる券」を出させてもらったのですが、そちらも、1万人を超えるお客様にご覧いただきました。

僕は、コロナが今のようにわーっとなる前までは、年間40カ所ぐらい、講演会で回っていました。

毎週どこかの地方に行き、講演会をしていたのですが、実はそれも、クラウドファンディングのリターンであり、「キンコン西野の講演会を主催できる券」といったものを出していました。そちらはそれぞれ、500人くらいのキャパでやらせてもらっていたんですね。

それで、年間40カ所、500人キャパですから、おおよそ年に2万人程の前で、講演会をずーっとやらせてもらっていたのです。ところが、今回のオンライン講演会は、1回1万人じゃないですか。

1回で、日本武道館が埋まるという規模ですね。
これを2回やれば、去年1年間の講演会動員数に届くんですね。

それで、数字だけを見てしまうと、今後、「オフラインのリアルイベントの講演会」をやる理由が見当たらないんですね。

オフラインだと会場費もかかるし、照明、音響の設備も整えなければなりません。
当然その分、チケット代も割高になってしまいます。

つまり、主催者側の負担も、お客さん側の負担も、両方大きくなっちゃうんですね。
これは考えものだなぁと思っています。

オフラインイベントの価値は「お客さん」だ


講演会については、ステージ上の内容を届けるだけなら、オンラインの方がいいよねという結論が、今回出てしまったので、僕らはここで改めて、
「オフラインイベントの価値」というものを考えなければなりません。

それで、イベント関係者および会場を運営する会社は、「オンラインで再現できないもの」を一度、書き起こしてみた方が良いと思います。

そうすると、「空間」や「匂い」、「食」など、いくつかのことが出てくると思うのですが、中でも、一番オンラインで再現が難しいのは、「お客さん」だと思います。

改めて考えると、「イベント」は、「客席が盛り上がっている光景」が、イベントのコンテンツの一つになっていましたし、場合によっては、「お客さんと出会える」ということも、コンテンツになっていました。

僕は、毎年年末に『天才万博』という音楽フェスのような忘年会に参加しています。僕はお客さんとして参加していて、開催期間の5日間はずっと、仕事を休みにして、ずーっと客席でお酒を飲み、ばーっと騒いでいます。

その中で去年、『お前らが頑張れ』というカラオケバンドと、『タテノサンズ』という素人のおじさんバンドが出演したんですね。

多分、コロナの影響を受けたイベント関係者さんには、ちょっとヒントになると思うのですが、『お前らが頑張れ』というカラオケバンドは、ボーカル不在のバンドなんです。

ステージ上の巨大スクリーンに歌詞が出て、ボーカルマイクは、客席に向いているんですよ。

客席側にボーカルマイクが向いているって、ちょっと変な形ですよね。
それで、ステージ上にいるのは、音楽を演奏する人たちと MC ですね。

MC は何をするかというと、例えば、松田聖子ちゃんの『赤いスイートピー』ならば、
曲のラストで、「♪赤いスイートピー 好きよ」という、むちゃくちゃやりたくなるところがあるのですが 、

あれが難しいのは、「♪赤いスイートピー」と言ってしまうと、言った人は、「♪好きよ」が言えないということですよね。なので、MCは、客席を2つに分けて、「こっちは「♪赤いスイートピー」を言う側で、こっちは「♪好きよ」を言う側ね」と、役割分担をし、皆で練習した上で本番に臨むということを行うのです。変な感じですよね。

『タテノサンズ』というバンドは非常にユニークで、ボーカルは、『幻冬舎』で働いている舘野さんという普通のおじさんなんです。

この舘野さんは、舞台上でガッチガチに緊張するんですよ。手とか震えちゃって、ギターは全然うまく弾けないと。それで、そのままだとイベントがグズグズになるじゃないですか。

ということをお客さんが知っているので、お客さんは全力でフォローするんですね。
舘野さんが歌っている途中に歌詞が飛んだら、すかさずお客さんがフォローに入り、舘野さんがMCトークで噛みかけたならば、食い気味で「よいしょ!」って、噛んでいることをかき消すのです。

彼らは舘野さんのファンではないのですが、「ファンがいない」ということが舘野さんに バレてしまうと、舘野さんの緊張が増してしまうので、応援うちわとかを作り、舘野さんの「ビジネスファン」をお客さんがやるんですよ。

もちろん、舘野さんが出てきたら「キャー」とか言うんです。要するに、開場全員で「サクラ客」をやりましょうねということが 、『タテノサンズ』のコンセプトですね。

客席が頑張らないといけないんですよ。

この、カラオケバンド『お前らが頑張れ』と『タテノサンズ』は、毎回めちゃくちゃ盛り上がるんです。これって主役がお客さんたちじゃないですか。

お客さんたちにマイクが向けられていて、お客さんたちに照明が当たっている。
ステージ上のパフォーマンスというものは、むしろきっかけでしかないのです。上手い歌を聞かせるだけなら、オンラインでもなんとか頑張って届けることができますが、カラオケバンド『お前らが頑張れ』と『タテノサンズ』のような、お客さんにスポットが当てられたパフォーマンスというものは、オンラインでは再現不可能だということですね。

今、新型コロナの感染を防ぐために各イベント会場では、間をあけて座るという対策が取られているのですが、これ結構、悲しい光景なんですね。客席がスカスカで。

なので、客席の照明を落としてなるべく客席を見せない方向にイベントを設計するなどしているのですが、この方策はむしろ逆効果で、それをやってしまうと、オフラインイベントの価値がなくなってしまうんです。

オフラインイベントは、客席が最大のコンテンツですから、客席にマイクを向けなければならないし、客席に正面を当てなければなりません。

ここに気をつけて、イベントを設計されると良いと思います。

というわけで、
「イベントの価値を考える」
というテーマでお話しさせていただきました。

お付き合い頂きましてどうもありがとうございます。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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