見出し画像

「閉じたインターネット」の運営コストについて考える by キンコン西野

このnoteは2020年6月17日のvoicyの音源、『西野亮廣ブログ』の内容をもとに作成したものです。
voicyの提供:寝ても覚めてもまゆのことばかり 旅ガエル さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「『閉じたインターネット』の運営コストについて考える」
というテーマでお話しします。

今、「有名税」がとても高くなっています。

「憎悪」とか「嫌悪」のことを英語で「ヘイト」と言いますが、ヘイトは社会が不安定になればなるほど増えます。
ヘイトの種になっているのは、多くの場合、「ストレス」なので。

以前、生配信中に「貴方のことがムカついて仕方ありません。何故ですか?」とコメントをいただいたので、「考えられる理由は二つです。西野の性格がシンプルに悪いか、貴方の人生が上手くいっていないか」と返したところ、メチャクチャ怒られたのですが、真実だと思います。

人生が充実している人は、他人の言動なんて一切気にならないので。

社会が不安定になると、ストレスのハケ口を探す人が増えて、その際、槍玉にあげられるのが有名人です。
くれぐれも「有名人に罪は無い」と言っているわけではなく、「罪に対する罰の量がワリに合わなくなってきてるよね」という話です。

こんな話をすると、おそらく今、皆さんの頭の中にあるのはコロナの自粛期間中のSNSの暴走っぷりだと思います。が、あれは、まだまだ続くと思われます。
というのも、こと日本におきましては、コロナ前から不景気が始まっていまして、しばらくはあまり明るい状況が待っていません。
シンプルにいうと、貧富の差が大きくなって、多くの方が今よりも貧しくなるでしょう。
つまり、今よりもヘイトが増えると思います。

やっかいなことに、「有名人へのヘイト集めに協力しているのも有名人」という皮肉な構造になっていまして、たとえば今は「他人の夫婦関係に口を挟むのはどうかと思うのですが…」といった予防線を張りながらも他人の夫婦関係に口を挟み、傷口を広げるのも有名人の仕事の一つになっていますから、この循環によって、おのずと有名税は上がっていきます。

現在、「月1ペースで有名人が社会から抹殺されていく」という、16世紀や17世紀のヨーロッパのような「大迫害時代」を迎えています。

これが続くと、さすがに有名人サイドも馬鹿らしくなってくると思うんですよね。
「有名人になる道を選んだ時点である程度は覚悟していたけど、ただ、そこまで社会のストレスのハケ口にならなアカン?」という。
許容量をオーバーしている問題ですね。

こうなってくると「発信場所を閉じよう」と考える有名人が増えてくるのは当然で、有名人がそれをやり始めたら、一般の方も「僕も私も」と続きます。これによって、「鍵垢」や「オンラインサロン」のような、「閉じたインターネット」が増えると思います。

最近だと蜷川実花さんが500人限定のコミュニティーをスタートされて、そこで発信されています。
彼女のインスタで約60万人のフォロワーを抱えているのにも関わらず、一つの発信場所として「500人の閉じた場所」を用意している。
当然、彼女の人間臭い発信を見ようと思ったら、閉じた方です。


閉じたインターネットを本丸にする人達

コンテンツのメインを(むしろ)「閉じた方」に持ってきて、そちらを有料にするという流れも増えてきました。

オンラインサロンは、まだまだ馴染みが無くても、たとえばネットフリックスがそうです。

その中では、「なんで、あのタレントを使うんだ〜」みたいな電凸がスポンサーに行くこともないので、攻めたキャスティングができるし、攻めた企画ができる。
「全裸監督」なんてまさに。

発信者側が付き合うお客さんを決めることによって、存分に表現できるようなる。

これを個人単位でやり始めているのがオンラインサロンで、この流れは止められないと思います。

ただ、何度も言うように、オンラインサロンの運営って、難易度が高すぎるんですね。

各オンラインサロンのプラットフォームのトップページを見ていただけると分かると思うのですが、最近は、各サロンの会員数がトップページの段階では分からない仕様になっています。

事情は色々あるでしょうが、「流行っていないことが可視化されるてしまうから」という事情もあると思います。

世の中のオンラインサロンの95%ぐらいは集客に失敗しているんです。
95%の店が集客できていないショッピングモールに行こうと思わないし、そのショッピングモールで店を出そうと思わない。
プラットフォーマーは「流行っていない」ということを隠さなきゃいけないんですね。

ちなみに僕も「salon.jp」というオンラインサロンのプラットフォームをやっていますが、このプラットフォームのオーナーさん達は皆、1000人とか、2000人とかの会員を抱えていますが、そのことは表に出していません。

「面倒臭い」が一番の理由だったりするのですが、そもそも「salon.jp」は誰でもサロンを開設できるわけではなくて、「キングコング西野が嘘偽りなく宣伝できる人だけ」という縛りがあるので、「開設したい」という人がたくさん来られると困っちゃうんです。

話を戻します。

これまでもオンラインサロン運営の難しさについては散々語ってきましたが、何故、皆、ことごとく失敗するのでしょうか?
もしかすると、今からお話しすることが一番の理由かもしれません。

オンラインサロンは「閉じたインターネット」じゃないですか?

当然ですが、「閉じたインターネット」は、インターネットのクセにバズらないんです。

その中で、どれだけ面白い記事を書いても、どれだけ面白い動画を投稿しても、拡散されることはない。
インターネットに慣れてしまった僕らからすると、この「決して拡散されることはない」という感覚を、まだ捉えきれていない。

自分の全力を「閉じたインターネット内」に投下して、この中でメチャクチャ面白いことをやっていても、これだけだと見てもらえないんです。

これを見てもらう為には、これとはまた違うネタを、今度は外に向かって発信して、それでもって「閉じたインターネット」の宣伝をしなくちゃいけない。

外に対する発信が面白くなかったら、「閉じたインターネット」に興味を持ってもらえないので、当然、外に対する発信も手を抜くわけにはいかない。

つまり、オンラインサロンのような「閉じたインターネット」を運営していこうと思ったら、単純計算、作業量が今の倍になるんです。

一日1本新ネタを作っていたところを、2本にしなきゃいけないんです。
当然、インプットの時間も倍にしなきゃいけない。

僕は「西野亮廣エンタメ研究所」という有料のオンラインサロンをやっていますが、これを運営する為には、無料のコンテンツを発信しなきゃいけない。
それこそ毎朝7時に10分間のラジオを配信しなきゃいけない。
そしてこの10分はウダ話であってはいけないし、もちろん芸能ニュースに対するコメントであってもいけない。
ここで話す10分間は、オンラインサロンに繋がるような強度がなくてはいけないわけですね。
当然、オンラインサロンは有料ですので、ここで喋っていることの10倍、20倍、価値があるものでなくてはいけない。

おそらく毎朝、ある程度の強度がある内容を10分喋るだけでも大変だと思うんです。
ルーティンじゃないんではありません。
毎日新ネタです。
でもって、それ自体は本業でも何でも無い、という(笑)

でもって、その何倍も面白いものをオンラインサロンの方に投下し続けなきゃいけない。
「オンラインサロン」を不労所得として捉えている人には絶対に不可能です。
逆なんです。
むしろ、労働量は増えているんです。

「閉じたインターネット」はバズることがない分、運営コストがメチャクチャかかりますよ、というのが今日の話でした。


というわけで、
「『閉じたインターネット』の運営コストについて考える」
というテーマでお話しさせていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
んでもって、ビジネス書に掲載するレベルのコラムを毎朝投稿しています。
興味がある方はコチラ↓




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?