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まだ何者でもない人間の戦い方 byキンコン西野

このnoteは2020年8月26日のvoicyの音源、『西野亮廣ブログ』の内容をもとに作成したものです。
voicyの提供:ゴルフ大好き川西ランク二位 たけうちそういちろう さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「まだ何者でもない人間の戦い方」
というテーマでお話しします。

僕は吉本興業の芸人として活動する傍ら、「株式会社NISHINO」というエンターテイメントを生業とする会社をしているのですが、サロンメンバーさんの中から定期的にインターン生を募集させていただいているんですね。

で、いつからか、僕を含め、サロンメンバーの皆が、甥っ子とか姪っ子とかの成長を見るように、インターン生を見守るようになりました。

ポイントは一流ホテルのように「成長したスタッフ」をお客様の前に立たせているわけではなくて、もちろん最終的には世界で戦ってもらいますが、そこに至るまでの「成長の過程」がコンテンツになっているんです。

そんなこんなで大学生がある日突然プロの現場に放り込まれるんですが、もちろん最初は、まったく話にならないんです。


「努力」って、よく「努力する/努力しない」の二元論で語られますが、そんな簡単な話じゃなくて、「努力する」と決めても、「努力できない」というのがあると思います。

たとえば、この記事を読んでくださっている貴方が今この瞬間に「今日からキンコン西野と同じだけ努力する」と決めたとして、じゃあ今この瞬間から一年365日、毎日20時間ほど働けるかというと、たぶん無理だと思います。

体力的にも厳しいと思うのですが、体力だけの問題じゃなくて、シンプルに精神が持たない。

極端な話、僕、パソコンが一台あれば1年間牢屋の中にいても生産力が落ちないです。


僕の生活空間は、牢屋とあまり変わらないので。
ちなみに、刑務所のご飯の方が、僕の毎日の食事よりも豪華です。


皆、それ無理じゃないですか。
同じ場所にずっと閉じ込められることを嫌がる。

「友達に会いたい」とか「相談にのって欲しい」とか「ストレス発散したい」とか「海に行きたい」とか、そういう感情があったりしますよね。


僕、そういったものが無いんです。
あったのかもしれませんが、ずっと昔に忘れました。


一日20時間ほどエンタメに向き合おうかと思ったら、この「精神」の部分を養わないといけない。

それって、普通の生活をおくっていたら、絶対に手に入らないんです。


ウチに来たインターン生が一番最初に面食らうのはココで、「頑張らなきゃいけないのは分かっているんだけども、そもそも頑張れる身体になってないじゃん」という部分。

「せめて努力量だけでも、西野さんを上回らなきゃいけないのに、私、めっちゃ寝るじゃん」みたいな(笑)

要するに、学生さんはまだ贅肉だらけで、努力できる身体・努力できるメンタルになってないんです。


これを手に入れるには、戦場に飛び込んで、一旦タコ殴りにされて、そこから這い上がっていくしかないんですね。
……と言われても、学生さんの多くは、まだ「戦場」の想像がついていないかもしれない。


端的に言うと、これまでの競争相手は受験生だったと思うのですが、ここからは「嫁」や「子供」や「社員」といった『守らなきゃいけないモノを持っている人』が相手になってくる。

そりゃ、死にものぐるいで襲いかかってくるし、それがたとえば「億単位」のお金を動かすレベルになってくると、もう、その時の相手は人じゃない。

「鬼」です(笑)

※鬼の代表例

ただ、先ほども申し上げたとおり、成長過程がコンテンツになっているので、僕個人的には、インターン生が面食らっている感じも、結構、好きで、面白がっているんです。

「ああ、コイツ、今、テンパっテルなぁ」という(笑)。

もちろん、ギリギリのところでフォローにいきますが、基本的には放ったらかして、彼らのジタバタしている様を産地直送でサロンメンバーさんにお届けしています。

 
スタート時がポンコツなのは折り込み済みなので、ウチの会社はそこに関してはオモクソ甘いのですが、ただ一つ、「周りの連中が一年かかって得る成長は、1週間で片付けろよ」というのはあります。
「お前、まさか、同世代と同じスピードで成長するつもりじゃねーだろうな」という脅しをかけています。


で、今日は、「新人(新卒&インターン生)はココで戦え」というタイトルで、僕からのアドバイスなんですけども…


少し自慢をさせてもらうと、吉本の芸人はNSCという養成所を卒業したところから「デビュー」としてカウントされるのですが、それでいうと僕がデビューしたのは20歳。ですが、デビュー前の19歳の頃(NSC在学中)には関西の漫才賞のビッグタイトルをとっているんです。

で、20歳で「はねるのトびら」がスタートした。

子役から始めて、その歳の頃に、その場所にいたわけじゃなくて、昨日まで普通に田舎の高校生をやっていたヤツが、ある日、突然、その環境に放り込まれたので、状況としてはインターン生に近いかもしれません。

要するに「歯が立たない」んです。


「いいとも」のレギュラーになったのが、22〜23歳の頃なんですけども、それこそ周りは自分よりも人気も実力もある方ばかりで、本番で「どうも〜」と僕が出て行っても、お客さんは、皆、SMAPの中居さんしか見ていなかったりする。

誰も僕のことなんて見ていないし、僕にパスが回ってきても、「お前はいいから、早く中居君を映せ。お前が喋れば喋るほど中居君の時間が減るだろ」みたいな(笑)。

ただ、ここで怯んでしまうと、何も始まらないわけじゃないですか?

そこで、考えたのが、「戦う場所を決めよう」と思ったんですね。
 
結論、「本番中に戦うのは分が悪すぎる」となって、「どこだろ?」と考えた時に、そういえば、本番前にメイク室でタモリさんと一緒になる時間が10分だけあったんです。

本番前は、皆、楽屋に籠っているし、「ここなら、お客さんの力も働いていない」と思って、その10分にかけたんです。

とにかく、その1週間のタモリさんの番組およびタモリさんの発言を全部チェックして、前日の夜には、メイク室のシミュレーションです。

明日の10分で何を話すか?
この話がハマらなかった場合、次の手はどうするか?

あとは、タモリ倶楽部で取り扱った題材を、さらに深掘りして勉強していく。
そして、「先週のタモリ倶楽部のアレなんですけど、あの話には続きがあって…」みたいな球を投げる準備をしておく。

 


僕にとって、初期の「いいとも」の本番はメイク室の10分だったので、そこで確実に結果を出すために、徹底的に準備していきました。


 
今、僕の会社は広告代理店みたいなこともやらせてもらっていて、いろんな企業さんと組んで、「新商品を仕掛けていくか?」みたいな会議があったりするんです。

 
試しに、昨日、新しく入ったインターン生を何も言わずに、この会議に呼んでみたんです。

ただ、案の定、「呼ばれたから来ました」みたいなスタンスで来て、さして何の準備もしていない。
当然、会議で一言も発言できなかったんですね。

これって、新卒・インターン生あるあるだと思いますが、同期にキンコン西野がいたら秒速で殺されています。
#僕の同期芸人は全員その被害に遭いました
#相方も


もしかすると「西野のコミュニケーションおばけ」みたいなことを聞いたことがある人もいるかもしれませんが、たとえば西野がインターン生だったら、会議までに相手企業さんのことや、今回の商品のこと徹底的に調べあげますし、「今回、会議があるということで、個人的に、御社の商品を買って、一瞬間使わせてもらったのですが…」というユーザー代表のポジションを取りにいく。

 
この時点で勝負がついているんです。

新人は本番で結果なんて出せないんです。

発言を求められてもいないし、信用もない。「思いついたら発言します」と言ったところで、思いつきもしない。

ただただ、時間が過ぎていくだけです。

これ、結構、皆やっていると思うんです。
ちなみに、芸能界で一度でもこれをやると、もう数年間はチャンスがないです。


じゃあ、どこで戦うかというと、「頼まれてもいないのに、準備している」という部分です。

しかも、その「準備」は、強い人と被らない場所。
今回の場合だと「学生ユーザーならではの意見」みたいなところに、全コストを割く。

まとめると、

「まだ何者でもない奴が本番で結果を出そうとするな。戦うべきポイントを絞り、徹底的に準備をして、本番が始まる前に勝負を決めろ」

といったところです。

 
昨日、ずっとモジモジしているインターン生を見ながら(かわいかった)、そんなことを思いました。


ほとんどの新人があそこで終わるので、ポイントを押さえて、ちょっと努力すれば、一気にブッちぎれると思います。

全ての新人さんを応援しています。
頑張ってね。

というわけで、
「まだ何者でもない人間の戦い方」
というテーマでお話しさせていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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