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偏愛をニーズにする by キンコン西野

このnoteは2020年8月12日のvoicyの音源をもとに作成したものです。
voicyの提供:さくらいけいたさん


どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「偏愛をニーズにする」
というテーマでお話しします。


作品と商品の違い


明日あたりに、東宝さんの公式 youtube チャンネルの方で、映画『えんとつ町のプペル』の予告編が公開されると思います。


実は、オンライサロンの中では、3、4日前にこっそり先行で公開させていただいたのですが、いよいよ迫ってきているという感じがしています。
映画『えんとつ町のプペル』の公開が。

制作の方も、もう佳境を迎えておりまして、もう行くぞという感じになっています。
なので、僕もここは本当に気をつけなければならないなぁと思っているのですが、やっぱり、かかっちゃうんですよ。

かかっちゃうっていうのはこう、スイッチが入ってしまうんですね。
なんかこう、ものづくりしている時のスイッチが入ってしまって、

そうすると、ちょっと言葉は厳しめになってしまうし、
もしかすると乱暴になってしまうかもしれず、
慎重にしゃべらなければならないなぁと思っているなか、

今日は、ものづくりのお話をさせていただきたいと思います。
僕はよく、「西野さんって、クリエイターとビジネスマンどっちなんですか?」
とか聞かれたりするんですね。

イヤミの割合が多い場合だと、「西野さんってビジネスの人ですよね」
とか言われたりするんですね。

これに対しては、「何を眠たいこと言ってるんだ」というのが、
僕の本音なのですが、そういった黒西野に関しては、オンラインサロンの方だけで出して、ここでは極力抑えてお話ししたいのですが、

ただ、このラジオは、世のクリエイターさんや、これからクリエイターを目指す方もたくさん聞かれていると思うので、本当に純度100%のものづくりをしたいのなら、この認識でいた方がいいと思いますよ、というお話を今日はしたいと思います。

この話をするために、まず、「作品」と「商品」をそれぞれ定義したいと思います。

「作品」は、芸術的制作物です。
一方、「商品」というのは、売買を目的とした品物のことです。

売ることを目的としたものが商品です。
作品と商品をそれぞれ定義すると、だいたいこんな感じになると思うんですね。

それで、この上で、クリエイティブの、ものづくりの結論を言いますと、

作品の売り上げで作品を作ると、商品になるんです。

これ、どういうことかと言いますと、
作品の売り上げで次回作を作るというサイクルで回してしまうと、
作品がヒットしなければ、次回作が作れないということになります。

その時点で活動が止まってしまうんですね。当然そうですよね。

となると、作り手は、ヒットする作品を作らなければならなくなりますね。
つまり、ヒットしない作品はもう作れないんですよ。

この時点で、クリエイティブの主導権は、お客さんが握ってしまうことになります。
お客さんのニーズに合わせて、イケメン俳優をキャスティングして、恋愛シーンを多分に入れてという、マーケティング要素が含まれたものづくりになります。

これ自体は、お客さんを楽しませているので決して否定されるものではありません。
しかし、カテゴリーでいうと、売買を目的した目的とした品物なので、これは作品ではなく、商品なんですね。

商品がダメと言っているわけではありません。
ただ、商品を届ける人は商売人ですね。

僕は表現者でありたい。やっぱりそうなんですね。
じゃあ、表現者であり続けるためにはどうすればいいかということを問うわけです。
そのためには、まずは、クリエイティブの主導権を僕が握っておかなければなりません。

お客さんには決して握らせない。
ここから逆算していくのですが、そうすると、確実にヒットしない作品であろうと、僕が作りたいと思ったら、作るんです。

ヒットしないということは分かっていたとしても、僕が作りたいと思ったら作るんですね。

じゃあ、ヒットしない作品を作っても活動が止まらないようにしなければならないとなる
と、作品の売り上げで作品をつくっていてはダメですよね。

だって、作品の売り上げで作品をつくってしまうと、ヒットする作品が作れなくなるので、結論、お客さんなんて無視して、作りたいものを作り続けるためには、

作品以外の売り上げで作品を作るシステムを組む必要があるんですね。

そのシステムが組めた瞬間に初めて、
作品の中からマーケティングの要素を排除できるんです。

お客さんがイケメン俳優を求めてます、知らねー。
今恋愛ドラマが流行ってます、知らねー。が言えるんですね。

商品ではなく、作品を作り続けるために、お金の流れから全てを設計しています。
オンラインサロンの売り上げで、自分のエゴだらけの絵本を作っているんですね。

僕は、随分と書き込み量の多い絵本を書いているのですが、
元々、そんな絵本のニーズなんて有りませんでした。

僕が1冊目の絵本を作っていた時に、とある出版社さんから、
「西野さんの絵本をうちで出してもいいですが、子どもはもっとカラフルで、もっとシンプルなタッチで、もっと可愛いキャラクターが出てくる絵本が好きなので、その方向で作っていただけますか」と言われたのですが、

「うるせーよ」と返したんですね。うるせーよ、なんですよ。

商品を作って生きていくのであれば、僕はテレビの世界をやめていないので。

僕は、びっくりするくらい売れっ子タレントだったのですが、そこにさようならをしたのは、「偏愛」に興味があったからです。

「ニーズ」に応えてたまるかという気持ちがあり、
僕の偏愛をニーズにしてみせるという覚悟があったということですね。

なので、時々、クリエイターを自負する方から、皮肉を込めて
「西野さんってビジネスの人ですよね」みたいなことを言われるのですが、

「作品の中に商売を入れてんのはお前だよ」と思っています。
「ずいぶんと、もともと存在しているニーズに向かって球を投げてますね」と思って見ています。

これ以上言うと、黒西野が出てくるのでやめておきます。
続きはオンラインサロンか、『スナック西野』の方でご確認下さい。

そちらでは、あまり手加減しない言い方をしているので、面白いと思います。

それで、後世何百年も残る作品を生み出したルネサンスの芸術家を支えたのは、
作品の売り上げではなく、メディチ家じゃないですか。

つまり、銀行や別の事業の売り上げで作品が作られていたのです。
あの時もし、作品の売り上げで作品が作られていたら、今頃何も残っていなかったと思うんですね。フィレンツェという街なんて無かったはずなんですよ。

もっと言うと、作品の売り上げで作品が作られていたら、シラケた街になっていたし、あんな偏った街は生まれませんでした。メディチ家が、パトロンとして支えていたからこそ、芸術家がフルスイングできたということですね。もう俺が好きなものを作るみたいな。

やっぱり思うことは、人々の心臓に長く強烈に刺さるのは、結局、表現者の偏愛やエゴであり、僕はそういった表現者の膿を出し続けるための基盤を作っていますということですね。

そこを作らなければ、偏愛とかエゴというものを出し切ることができないからです。

なので、話を頭に戻すと、「クリエイターとビジネスマンどっちなんですか」という質問って、もう愚問です。いやそんなもん、クリエイターに決まってる。表現者に決まってる。ただ、それであり続けるために、その周りの整理はしなければならないですよという、そういうことですね。

結論、クリエイティブとビジネスを分けてはダメなのです。
分けてしまった時点で、クリエイティブなんて、作品作りできなくなりますよという、そういうお話でございました。



というわけで、
「偏愛をニーズにする」
というテーマでお話しさせていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
んでもって、ビジネス書に掲載するレベルのコラムを毎朝投稿しています。
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