ラジオは隣に座る byキングコング西野亮廣
このnoteは2019年10月5日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:日向崇文さん
おはようございます。
キングコングの西野亮廣です。
お笑い芸人をやったり、絵本作家をやったり、
国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしています。
今朝はですね、『ラジオは隣に座る』というテーマでお話したいと思います。この放送は、日向崇文さんの提供でお送りします。
演者とお客さんの位置関係
さあ、提供の名前が突然個人名になっていたので、
びっくりされた方もいらっしゃるかもしれませんが、
日向崇文さんはオンラインサロンメンバーの方です。
詳しくは僕のオンラインサロンの方で発表しておりますので、そちらをご覧ください。(注:voicyの放送は、毎回個人スポンサーの提供によりお送りしています)
というわけで今朝は、『ラジオは隣に座る』というテーマでお話したいんですけど。
今、羽田空港からお送りしているんですけど、これがいかにダメなことなのかっていうことを文章化したいなと思っています。
「羽田空港からお届けすることがいかにダメなのか」ということですね。
これを話す上で、多分エンターテイメントの歴史からさかのぼっていくとすごく見えてくると思うんですけど、
基本的に、僕がずっと意識しているのは『お客さんとの位置関係』なんですね。
エンタメ作る時に意識しているのは『お客さんとの位置関係』であると。
これはどういうことかと言うと、
例えば・・
能とか。能って「いよ〜〜」みたいに言ってる感じのやつです。
能の舞台って面白くて、出演者の搭乗口みたいなのがあってですね、
搭乗口から渡り廊下みたいなのが斜めに伸びているんですよ。
そして、渡り廊下みたいなのを渡ったら、正方形のステージがあると。
で、この渡り廊下がよくできていて。
能って大分歴史は古いんですけど、この渡り廊下の脇に松の木が3本あるんですよ。
一の松、二の松、三の松ってあるんですけど。
この松の木のサイズが、奥からだんだんだんだん手前に向かって大きくなってるんですよ。
どっちが一の松だったか忘れたんですけど、一番奥が一の松だとしたら、
一の松の松の木は『小』で、二の松の松の木が『中』で、三の松の松の木が『大』であると。
手前に向かってどんどんどんどん松の木のサイズが大きくなってるんですね。
これは何かって言うと、言ってしまえば3Dですね。
奥行きを出しているっていうことですね。
VRです、もう。
あの時代から立体感を出すっていうことはすでにされていて、
能っていうのは言ってしまったら、飛び出す感じをすごく設計されていると。
これはお客さんと演者の立ち位置で言うとですね、『縦関係』なんですよ。
演者はお客さんの方を向いていて、演者が前に出てくるんですね。
それで、能がどんどんどんどん進化していく訳ですけど、
「この渡り廊下ちょっと細いよね」みたいになって。
「渡り廊下は斜めに出しているから場所取れないんじゃない?」っていうことで、
この渡り廊下をもう真横にして、
渡り廊下の太さとステージの太さを全く一緒にして、
もう舞台袖から出てくるようにしたんですよ。
舞台袖からステージが繋がっているという。
これ『額縁舞台』というんですけど、僕たちが1番よく目にしている舞台ですね。
体育館のステージとかをイメージしていただけるとよく分かりやすいと思います。
あれです、あれができたんです『額縁舞台』というのが。
で、額縁舞台になってくるとですね、演者の動きが横移動になるんですね。
演者の身体は横に向くんですね、横から出てきて横に帰っていくので。
そうするとこれ『横関係』になっちゃうんですね、お客さんとの関係が。
『横関係』っていうのはあってるのかな。
なんかそういうことになっちゃうと。
次にですね、「これでは何かもうひとつ面白くないよね」っていうことで、
歌舞伎が『花道』っていうのを作ったんですよ。
客席の後ろから登場するような登場口を客席の後ろに作ったんですね。
この瞬間に、お客さんと演者の関係は『縦関係』になったと。
面白いでしょ?
ずっとエンタメって、このお客さんと演者の関係が縦になったり横になったりしてるんですよ。
もちろん、テレビ、映画、映像メディアというのは横関係ですね。
飛び出してこないんですよ。
ずっとエンタメっていうのは縦と横の移動を繰り返してきたと。
とりあえずこのことをまず踏まえておいてください。
キミの隣にいる
じゃあラジオは『表現者』の僕と、『リスナー』のあなたの立ち位置がどうなってるかって言うと、これが面白くて。
縦関係でも横関係でもないんですよ。
何かって言うとですね、
例えばあなたが今見ているものって、
あんまりこのスマホの画面見ていないはずなんですよ。
スマホ画面というか、スマホ画面にいる西野を見ていないはずなんですよ。
スマホの画面を見ていたとしても、
何かネットニュースを見たりだとか、別に対象があって西野以外の何かを見ていると。
場合によってはドライブしているかもしれないし、
場合によってはいまお料理されている方もいらっしゃるかもしれない。
通勤通学でどこかに移動していて、景色を観ている方もいらっしゃるかもしれない。
つまり、西野は見てないんですよね、西野以外の何かを見ていると。
じゃあ西野は今どこにいるかっていうと、
あなたの『隣り』にいるということですね。
位置でいうと、隣りに座っちゃったんですよ。
ここがやっぱりすごく音声メディアの面白いところで、正面にいないんですね。
『隣り』にいると。
だから、ラジオが絶対にやらなきゃいけないことは、
『隣りにいる感』みたいなものを出さなきゃいけない。
すると、部屋の中で聞いている人の隣にいようと思ったら、
あんまり声を張っちゃ駄目なんです。
つまり、羽田空港からお届けしちゃ駄目で。
隣に座っていることを出さなきゃいけないから。
すると、ほとんどの人は小さな部屋で聴かれているんだから、
やっぱり収録する場所もその部屋のサイズに合わせなきゃいけないんです。
ラジオってよくできているのはですね、
聴いている方がいらっしゃる空間と録音する空間が
ラジオスタジオって大体サイズが一緒なんですよ。
場合によってはすごくでかいスタジオで録るときって、
何かついたてみたいのを立てて、
壁を無理から作ってちょっとちっちゃくするんですよ。
やっぱりでかいスタジオで取ってしまうと、マイクがどれだけ高性能であろうが演者が声を張ってしまうので。
で、隣に座ってて大声で腹から声出すやつっていないじゃないですか。
なので結論、羽田空港からお届けちゃ駄目だっていう。
たぶん今日の放送っていうのは、
隣にいる感じはあんまり出なかったはずなんですよ。
これがすごく大事だなと思うところですね。
ここは、ラジオをやる以上は踏まえなきゃいけないと。
そういうことを思いました。
というわけで私は、今日は熊本に来ております。
今から天草に行ってきます。
それでは素敵な一日をお過ごしください。西野亮廣でした。
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