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先が短いインフルエンサー byキンコン西野

このnoteは2019年10月29日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:小川 和也さん

どうもこんにちは。
キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をやったり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」の運営をしたりしております。

さて今朝もですね、パリからお届けしております。

『西野亮廣「光る」絵本展 in エッフェル塔』が、無事に終わってですね。
もう大盛況の中、幕を閉じましてですね。

今回の挑戦はいろんな意味があったんですけど、
個人的には、運営を学生インターンにゆだねるっていう挑戦をしてみたんですけど、それがうまくいって、インターンの子が一生懸命がんばってくださったし、オンラインサロンメンバーがほんとに一生懸命がんばってくださったおかげで、ほんとにうまくいってですね。

ほっと一息ついているところです。

さて、今日はですね、
「先が短いインフルエンサー」
というテーマでお話したいと思います。

京都市のステマ騒動

「先が短いインフルエンサー」
ってちょっとドキってするタイトルですが・・

昨日かな、おとといかな、ニュースになった、後輩の『ミキ』っていうコンビが、京都市からお金をもらって宣伝ツイートをしていたっていうニュースがネット界隈を走り回ったんですね。

金銭を受け取っているにも関わらず、そのことは伝えずに「京都さいこー!」みたいなことをツイートしていたっていう。

これに対して、ものいいがついてですね、いわゆるステマ、ステルスマーケティングじゃないか、と。

これに対して、京都市に対して、
「どうなんだ?」「ステマじゃないのか?」
っていうクレームがいったときに、京都市側からの返答としては、
「誤認されるような内容ではないので、ステマだとはとらえておりません」みたいな。

つまるところ、ミキが京都市を愛している気持ちは嘘じゃないから、京都市のことをどうでも思っている人にお金を払って「京都さいこー!」って言わせているのであれば、それは問題かもしれませんが、漫才コンビのミキさんが、京都市を愛しているっていう気持ちは嘘ではないので、気持ちをそのまま言っていただいて、稼働したからには金銭が発生、ギャランティーが発生するのは当然だろう、というのが京都市の言い分だったんですね。

これは、厳しいことを言うと、
「ステマじゃないのか?」って質問の答えにはなっていないですね。

金銭の提供を受けて投稿する場合、
「情報発信者に関係性明示を義務付けなければならない」
みたいなかんじになってるんですね。

要は、お金を受け取って宣伝する場合は、
「宣伝ですよ」って言いなさいっていう、ルールになっている。

僕、『キャリオク』っていうサービスのCMをやってるんですけど、
たとえば、YouTubeのタイトルつけるときもですね、ほんとはみんながクリックしたくなるようなタイトルにしたいじゃないですか。

でも、そのタイトルのところに「広告」ってつくようになってるんですね。
それは、僕がお金を受け取っているからです。

お金を受け取っているにも関わらず、そのことは言わずにですね、西野亮廣個人の意見みたいなかんじで「これさいこー!」ってやってしまうと、それは『ステルスマーケティング』じゃないかっていうとこなので、

今回のミキに関しては、ちょっと怪しいところではあるんですよ。
『ステルスマーケティング』って言われても、仕方がないよねっていうやり方なので、京都市がどれだけ釈明しようが、吉本興業が「それはちがう」って言おうが、「これはステルスマーケティング」って言われてしまっても仕方がないラインは超えてしまっているっていうことですね。

ただ、これに関しては、ちょっと微妙なところで、別に1ツイート15万円だったかな、25万円だったかな、ちょっと忘れたんだけど、「1ツイート25万円でツイートさせてる!」みたいなニュースが上がったんですけど、そうではなくて、厳密に言うと。

京都市のPRのお仕事するのに、ひとりあたまのギャラが25万円だったみたいな感じで。
いろいろ京都市のお仕事をする中で、「ツイートもしてくださいね」みたいなのも含まれていたので、ツイートひとつにかかったお金ではないので、ここがちょっとむずかしいところですよね。

だって、僕、『ゴットタン』っていう番組にださせていただいたとき、当然ギャランティーは発生してるんですね。
で、ださせていただいたときに、「ゴットタンみてね」って宣伝はやるんすよ。宣伝ツイートやってるんですよ。

じゃあここ、どこにお金発生してんの?
ってちょっとむずかしいとこですよね。

でも、もっと言うとですね。
「ステマステマ」って言うんだけれど、それで言うたら、インスタグラムなんかステマだらけで。だって僕レベルでもありますもん。

「うちのお店、西野さんきてくださって、店のこと投稿してくださったら、タダで提供しますよ」みたいな。

つまり、金銭ではないけれども、極めて金銭に近いようなものを受け取っていて、その対価として、こっちが宣伝するっていう。

だらけですね。インスタなんか、もう。

かわいい服着て、なんか、店のブランドのハッシュタグつけて投稿したらいくらっていう。
いちいち「これ宣伝です!」とか言ってなくない?あれってね。

だから、「ステマアウト」って言い出したら、世の中のものはほぼステマなので、微妙なところではありますよね。

ステマはよくないんだけど、厳密に取り締まっていくと、ほとんどのものがステマだっていう、いまね。

大切なのはそこじゃないんですよ。
そんなのはどうだっていいんですよ。

厳密に言うと、ステマだろうが、ステマじゃなかろうが、そんなことは本質ではなくてですね。
大切なのはその先ですね。

「影響力」を軽視するな

何年も前から言っていることなんですけど、
やっぱりいまは、貯金ではなくて、貯信の時代で。
信用さえ貯まっていれば、さまざまなメリットを受け取ることができる、と。

一昔前の通過っていうのはお金だったんですけど、現代の通貨っていうのは、完全に信用とか影響力なんで。

圧倒的な影響力さえあれば、いい服着れるし、だって、ブランドからしたら影響力ある人に着てほしいから。「べつにお金いらないです」って世界なんで。

影響力さえあれば、いい服着れるし、いいホテル泊まれるし、場合によっちゃお金を集めることもできるし。

現代の通貨って、完全に、信用とか影響力なんですね。
ここが、非常に大事だってことです。

その上でね、いちばんやっちゃダメなのが、
影響力を語るときに、ぜったいに間違っちゃダメなのが、
影響力は、フォロワー数とイコールではないってことですね。

フォロワー数が200万人いようが、影響力のない人はたくさんいるし、
一方で、フォロワー数が5万人、6万人のチームラボの猪子さんはやっぱ影響力あるし、信用あるし、みたいな。

数字ではあんまりみえないところですよね。フォロワー数ではないですよね。
誰がフォローしてるかによって変わってくるんで。

一般の方が100万人フォローしてるのと、影響力ある人が1000人フォローしてるアカウントって、どっちのほうが潜在フォロワー数多いの?って話になってくるんで。

なので、やっぱり一概にフォロワー数で影響力っていうのは語れないんですね。

なんせ、信用、影響力っていうのは重要であると。現代の通貨であると。
すっごく大事にしなきゃいけないので、影響力あるインフルエンサー、まぁ、タレントもそこにひっくるめたとしてね、影響力を振りかざしている人。僕もそうかもしんないです。

そういう人がいちばん気をつけなきゃいけないのは、
「アイツ、お金さえ払えば宣伝してくれるぞ」
っていう人になってしまったら、もう、信用、影響力がガタ落ちです。

「30万くらい払っといたら、アイツ、商品紹介してくれるよ」
って人になったらダメ。

なので、インフルエンサーマーケティングってめちゃくちゃ矛盾してるんです。

「お金さえ払ったらやりまっせ」っていうのは、「嘘つきまっせ」っていうのと同義なのね。これいちばんダメで。

もっと言うと、「お金さえ払えば紹介しまっせ」って思われてしまったら、もうマイナスだってことです。「お金さえ払えばなんでも宣伝してくれる人」ってイメージがついてしまうと、極めてマイナス。

今回、ミキのふたりが踏んだ地雷っていうのは、まさにそれです。
「ミキって、25万くらい払ったら宣伝ツイートしてくれる」っていう風に。

ほんとはそんな子たちじゃないですよ。もちろん、今回の仕事にしたって、そういう主旨じゃないんですけど、そういう風に思われてしまう行動であったってことですね。

なので、むちゃくちゃ慎重にやらなきゃいけないんですよ、宣伝って。
だから僕は、宣伝仕事、基本的にはやりません。やるからには「なんでこれを宣伝してるか?」って説明もキチッとする。

今回は、キャリオクさんからお金を受け取っています。だけれど、僕がこのサービスを宣伝する理由はこれがこうでって説明をした上で宣伝をする。ここまでやらないと、信用度はどんどん下がってしまうので。

「お金払ったら宣伝してくれるんでしょ?」っていう風になってしまうから。

これが、たぶん、インフルエンサーがこの先陥るところですね。
影響力で生活してきた人、けっこういると思うんですよ。この何年か。

もう、けっこう、全員倒れるんじゃないですかね。

「あいつらお金払ったらやってくれるんでしょ?ウソついてくれるじゃん」ってなってくるんで。絶対に。

なので、宣伝に関してちゃんとルールを設けている人の方が、さらに影響力を手にするので。

「僕は、自分が使った商品しかオススメしません」とか、「ほんとにいいと思ったサービスしかオススメしません」っていう風に、ちゃんと決めてる人でないと、ちょっとやばいですね。ちょっとどころか、もう先はないですね。

けっきょくなんなのかっていうと、やっぱり、生活に余裕がないと仕事って断れないんで。

だから、インフルエンサーっていっても、ほんとに影響力だけで仕事してる人ってちょっとむずかしくて。ちゃんとそれ以外で本業みたいなものがあって、そこで食えてる人じゃないと、影響力みたいなものは、上手に使えなくなってくるんじゃないかな?

やっぱ、仕事断れないって、けっこうな頭打ちというか、けっこうヤバイ状況なんで。

なので、先の短いインフルエンサーっていうテーマでお話すると、
インフルエンサーとして生きている人はちょっとヤバイかもねっていうことですね。

ちがうな、もっと言い方あるな。
仕事を断れないインフルエンサーは、ジリ貧のインフルエンサーはもうヤバイっていうことかもしんない。

大切にしなきゃいけないのは、守らなきゃいけないルールはただひとつ。

お金を払ったら宣伝してくれる人
っていう風に思われないってことです。

そう思われてしまったら、非常に危ないっていう。

今回の騒動をみて思ったのは、これまでタレントさんってそういうことを無自覚にやっていたと思うんですけど、そこをけっこう大事にしていかないと。

「CM本数9本。やったー!CM女王だ!」とか言ってる場合じゃなくて。

「金払ったら、使ってもない商品宣伝してくれんの?」ってなったら、その数が増えれば増えるほど、
露出は増えるけど信用は落ちる
っていう風になるんで、そうすると、認知タレントになって、人気タレントではなくなってしまうので。たぶん、ジリ貧になると思います。

「先の短いインフルエンサーっていうのは、そういう人のことを指すんだろうな」
と思った一件でした。

というわけで、素敵な1日をお過ごしください。
西野亮廣でした。

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