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「無料公開」戦略がハマらない人の特徴 by キンコン西野

このnoteは2020年5月26日のvoicyの音源、『西野亮廣ブログ』の内容をもとに作成したものです。
voicyの提供: 千葉県のオオキ ヒトミさん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「『無料公開』戦略がハマらない人の特徴」
というテーマでお話しします。

売り上げを伸ばした『えんとつ町のプペル』の無料公開


数年前、『えんとつ町のプペル』という絵本を全ページ無料公開して、ずいぶん批判されたことがありました。「そんなことをしたら、クリエイターが食いっぱれるじゃないか」とか何とか(笑)。

それこそ、「ミヤネ屋」さんで、そのことについての特集を組まれたほどです。ずいぶん燃えましたね。

ところが、この「無料公開」によって、「おお、無料なら読むか」といった感じで手に取ってくださった方がたくさんいて……
結果、『えんとつ町のプペル』の売り上げが伸びたんです。

まぁ、要するに、分母と分子の比率の問題で、分母、つまり「立ち読み」をする人が増えたので、購入する人も増えた、ということですね。

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あの日から「無料公開」は、広告戦略の一つになって…今は、あまり珍しくないですよね。
今、「無料公開」しても炎上しないと思います。
まぁ、このへんに関しては、日本人全員で、一回、キングコング西野に謝ってください(笑)

「あの時は、マジでごめん」と言ってください。「いいよ」って言いますんで(笑)

で、今日の本題はここからなんですけど、そういえば、ここの違和感を言語化することを忘れていたなぁと思うことがあって……

それが何かと言うと、まだ世間的には、まったく無名で(才能の有無はさておき)、まだ評価を獲得していない人が、自身のサービスを「なんと今は無料で提供します」という無料キャンペーンを仕掛けているところを、時々、見かけるのですが……あの(特別感を匂わせた)打ち出し方は裏目に出ているので、やめといた方がいいと思います。

「無料」にすることで価値が出るのは、「その商品、そのサービスにはお金を払う価値がある」ということを皆が認識しているモノに限ります。

「これ、だいたい、2000円ぐらいだよね。…え? 無料でもらえるの?」という【落差】が無料提供の価値なんです。

ちょっと耳の痛い話になりますが…自分の作品、自分のサービスには、思い入れもありますし、それを作り上げるまでに費やした時間の存在を自分は知っているので、自分の作品や自分のサービスというのは、“自分にとっては”有料の価値があるものなのですが、それが売れていなかったら、世間的にはそもそも無料なんです。

価値というものは奪い合うことで発生するものなので。

つまり、それを生み出すことにどれだけの労力を割こうが、それが奪い合われるものでないと、価値がないんです。
道端に落ちている石ころと全く一緒なんです。

辛いでしょ? 
「頑張って作ったのに」といった言い分は、モノの価値には1ミリも関係ないんです。

でも、この現実は受け止めなきゃいけない。

知らないオジサンが、その辺に落ちている石を持ってやってきて、すっごい特別感を出して、「この石、今だけ無料であなたに差し上げます」って言ってきたら、どう思います?
そうなんです。

気持ち悪いんです。

怪しいんです。
何か(その先に良くないことが)あるんじゃないか?と思っちゃうんです。

世間的にはまだ価値が認められていない、あなたの商品やサービスを、「今回は特別に無料で提供します」という感じで打ち出してしまうと、「気持ちわるっ!」って思われちゃう。

ここでお話ししているのは「お前は無名なんだから、まだ無料提供をするな」と言っているわけではありません。

無料提供してもいいんです。
無料提供してもいいんですが、その際、「特別感を出すな」という話をしています。

特別感を出すな


それを無料で提供することを特別だと思っているのは貴方だけで、世間的には、貴方の作品やサービスが無料で提供されることは特別でも何でもない。

ここのズレが、怪しさを生んでいます。
ここのズレが、「お客さん目線」「他者目線」を持てていない自分を露呈してしまっている。

せっかくだから、もう少しだけ厳しい現実をお伝えします。

「作品をお客さんに提供する」って、どういうことかというと、それが映像や音楽だと「お客さんの時間を奪う」ということだし、それが物質だと「お客さんの手や場所を奪う」ということなんですね。

お客さんからすると、自分の時間や場所を気持ちよく奪ってくれるものに、お金を払います。

逆に、得体の知れないものに時間は奪われたくないし、手を奪われたくないし、場所を奪われなくない。

それでも奪うというのであれば、こっちの時間や、こっちの手や、こっちの場所を提供してあげるから、その対価をよこせよ……という話になってくる。

つまり、

まだ、全く評価されていない作品をお客さんに渡す時は、価値の理屈でいうと、「お代を頂戴する」どころか、「無料で提供する」どころか、お金を払わなきゃいけないんです。

自分が一生懸命生み出した作品は、それが無評価のものであれば、お金を払って提供しなきゃいけないんです。

…という(お金を払わなきゃいけない)立場の人が、「今回は特別に無料で提供します」ということをやっちゃってる。
「いやいや、得をしてるのは、お前じゃないか」という話です。

無料公開とか言いながら、搾取しちゃってるんです。

今、このラジオをお聴きの方で、ここに当てはまっている人って少なくないと思います。
もしかしたら、貴方もその一人かも知れません。

「なんで、おもいきって無料公開したのに、受け取ってくれないんだよ」という疑問を持たれているかも知れませんが、皆が貴方に抱いている違和感は、そこです。

自分が生み出した作品やサービスの現在の価値と、お客さんの時間や場所の価値を天秤にかけて考えた方がいいです。

少々、耳の痛い話ですが、ここを受けとめなきゃ何も始まらないので、頑張りましょう。


というわけで、
「『無料公開』戦略がハマらない人の特徴」
というテーマでお話しさせていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。

※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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