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スターの作り方 byキングコング西野亮廣

このnoteは2019年10月12日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:栗原誠治さん

おはようございます。
キングコング西野です。

お笑い芸人をやったり、絵本作家をやったり、国内最大のオンラインサロン『西野エンタメ研究所』の運営をしたりしています。

今朝は、「スターの作り方」というテーマでお話ししたいと思います。

関係性が勝敗に影響する世界

お笑い界であろうと、音楽業界であろうと、エンタメの世界には「スター」というものが存在します。

エンタメに限らず、例えば飲食業界やスポーツの世界でも、いろんな業界にスターはいます。

「スターの作り方」を話す前に、まず「スター」って何か?

スターの定義をはっきりさせておきます。

スターというのは、シンプルに「ファンがいる」っていうことですね。

「たくさんのファンを抱えている」、「支持者を抱えている」。
これに尽きるなあと思うんです。

ここから先は、「影響力がある」とか「いい生活している」とか「モテる」というもあると思うんですけど…その前にはシンプルに「ファンがいる。」
スターというのは、たくさんのファンを抱えているということだと思うんです。

じゃあ、スターってどうやって作るんだ?っていう話をしたいんですけど。

ことお笑い業界を例に挙げると、2001年、2002年ぐらいまでは、実は「お笑いブーム」みたいなのが起こる前だったんです。
2000年とか。
『エンタの神様』っていう番組が火付け役になったと思うんですけど、
あの時から、若手芸人をテレビで見る機会はやっぱり増えたんです。

1999年、2000年くらいまでは、テレビをつけても今みたいに芸人さんがたくさん出てなかったんですね。

少なくとも、若手は出てなかったんです。

つまり、当時は非常に風通しが悪かったんですよ。
お笑い芸人はいたにはいたんですけど、「各劇場」にいて、若手芸人をテレビで見ることはあんまりなかった。

その当時どうだったかというとですね、
各劇場に「スター」がいたんです。
「この人が出たら劇場がむちゃくちゃ湧くし、劇場の前には出待ちしている人がたくさんいる」、みたいな。

そこから、お笑いブームが2000年か2001年かぐらいに起こって、
どうなったかっていうと、
一年目の若手でもテレビに出れるようになったんです。

「大阪におもろいヤツがいる」っていうんだったら、今田さんやサンマさんが取り上げてくださって、
「すごいなコイツ、一年目のヤツおもろいなー」
ということで、一年目でもテレビにけっこう出られるようになったんですね。

「ラッスンゴレライ」とか。
ひとネタ面白いのを作れば、テレビにポンと出て、国民の皆様の知るところになる。

けっこう、風通しがよくなったんですね。
すごいイイ話じゃないですか。
一年目でもテレビに出られたり、一年目でゴールデン番組のテレビのレギュラーをもらったり…そういうことが普通に起こるようになった。

ここからなんですけれども、
テレビの世界に限らずいろんな世界でもそうですけど、とくにテレビの世界の話をすると、

テレビっていうのは、「人間同士、演者同士の関係性が勝敗に大きく影響する世界」なんです。

たとえばわかりやすくいうと、『さんま御殿』に出て、一年目の若手が最初から最後まで一人でバーって一時間しゃべる、ということはムリなんですね。
やっぱりさんまさんが真ん中にいて、さんまさんが「あっちだ!コイツをイジれ!」と
なったら、もう全員そいつをイジる流れができる。
「一人でずっとしゃべる」っていうのは、基本的に『さんま御殿』に参加した時点で無理なんですよ。
「自分に与えられている時間」っていうのがあって、「この人以上喋ってしてしまったらダメだ」っていう。

つまり、「関係性が勝敗に大きく影響する」んです。

これは『さんま御殿』に限らず、いろんなステージで同じことが起こっています。
まず、これがありますね。

鎖国が必要

この「関係性」というのは、演者同士の関係性もありますし、演者とスタッフとの関係性もあります。
ディレクター、プロデューサー、編成の人間…あとは、そこと濃い繋がりのある演者とそうではない演者では、やっぱり出番の量が大きく変わってくる。
関係性が勝敗に大きく影響する世界なので、決して「フェアな世界」ではないということです。
「この人の方が面白いから、この人の方がいっぱい出られる」っていうわけではない。
決してフェアな世界はない。

…まあそれは、どこだってそうですね。

ビジネスの世界だって、当然1年目のベンチャー企業とモンスター企業とではフェアな戦いはできないですね。
そもそも、持っている資本が違いすぎるので。
同じようなアイデアを思いついたとしても、大資本には絶対負けてしまう。
決して「フェアの世界」ではない、ということですね。

でも、「じゃあアンフェアか」というと、そんなことはなくて。
その大物がなぜ大物になったかっていうと、それより前にいろいろ努力したからその位置にいるんです。
たとえば、殿様に対して若い武士が「一騎打ちしろ!」というのはありえない話で。
やっぱり殿様は自分が勝つようにお城を作るし、堀を掘るし、そこに若手が出てきて「城から出ろ!」っていうのは、若手にとって都合が良すぎる話ですよね。

つまり、「お城にいる人に対して一騎打ちを挑んでいる」っていうのが、テレビの世界なんです。

この状況でテレビに出続けると、どういうことが起こるかというと、
露出が増えて知名度は上がるんですけど…「負ける」んですよ。
もっというと、「負けているところを見せている。」たくさんの人に。

たとえば、自分は「明石家さんまさんよりもしゃべりてない」とか「たけしさんよりもおとなしい」みたいな姿を、露出しちゃってるということですね。

そうすると、知名度は上がるけど「負けてしまっている」からシンプルにファンが減る。
「認知タレント」になってしまって「人気タレント」ではないっていうことですね。

「認知」と「人気」っていうのは全く別物なんです。

お笑いブームが起こって風通しがよくなったから、「認知」は上げやすくなったんだけど「人気」が上げにくくなっている、ということです。

これを踏まえて、じゃあスターを作るには何が必要かというと、
一種の「鎖国性」が必要だってことです。

当時、各劇場にスターがいたのは「鎖国していたから」です。
ようは、5年目、6年目の芸人が、圧倒的にその狭い世界ではあるんですけど、牛耳ることができた。
ずーっと、勝つことができたんです。

スターのもう一つの条件として「勝ち戦しかしない」。
ここですね。
むやみやたらに戦うわけでなくて、スターは基本的に「勝ち戦」しかしない。
ここに尽きるんです。
そのためには、あまり広げすぎると具合がよろしくない。

なので、スターを作ろうと思ったら「鎖国性」が必要で。
テレビでお笑いブームが起こって、いろんな人が生活しやすくなったし、いろんな人がいろんな人に知ってもらう機会が増えたんだけれども
…それは「スターができる環境」ではなかったですね。

じゃあ、今はどうなのかというと。

今は、「YouTube」というものが出てですね。
非常に面白いなと思うが、むやみやたらに競争してないんですね、あれ。
自分たちの世界…つまり当時でいうところの「各劇場」で頑張っているので、ユーチューバーになっているタレントはその世界ではもう完全に「王様」になっている。
なのでここからは、けっこうスターが生まれやすいと思います。

まとめ

話をまとめますね。

スターを作るには「鎖国性が必要である」と。

歴史を振り返ると実は、先輩でいうとダウンタウンさんもそうだったんです。
当時、「2丁目劇場」っていう劇場があったんです。
百何十人かの劇場で、完全に鎖国された空間ですね。そこで、ダウンタウンさんがスターだった。
で、実はですね。そこで彼らはスターなったんですけれども
じゃあ「東京に出て行く」ってなった時に、実はダウンタウンさんってそんなにすぐに売れたわけではないんですよ。けっこう苦労人で。
東京進出がスムーズにいけたかっていうと、そんなことはなくて、
やっぱり最初、東京のテレビに出るときに苦戦されているんです。
だって、フェアな戦いではなかったんで。
ダウンタウンさんの面白さが、出し切れなかったんです。

東京では出し切れなかったんですけど、大阪に戻ってきて「2丁目劇場」でやったら、
やっぱりダウンタウンさんは、むちゃくちゃ面白い。
それをずっと繰り返していて、その「2丁目劇場」でドンドン影響力と人気を膨らませていって、歯止めがきかないぐらいに人気を得て、東京に来た時に一気にズバッといったんです。
やっぱり「自分がスターになれるような空間」があったんですね。

で、今やっぱりすごい面白いなって思うのは、
当時のダウンタウンさんの「2丁目劇場」にあたるものが「YouTube」になると。
「各ユーチューバーが、各劇場を持っている」っていう感じですね。

僕の相方のカジサックの場合でいうと、
カジザックって、不必要にいろんな人と絡んではいないんです。
絶対にカジサックが真ん中で、カジサックが最初から最後まで画面に映っていて。
「スターができる構図」ですね。オリラジのあっちゃんもそうです。
すごく面白い時代に入ったなあ、と。
僕でいうところの「オンラインサロン」もそうかもしれないですね。
やっぱり、「鎖国性」がある。
ここからしかスターが生まれないので。

今、各々がそういう自分の世界を持ち始めているので、けっこうスターが出てくるんだろうなぁ。
もちろん、「人気が細分化する」っていう見方はあるんでしょうけれども、
当時(2000年代)よりかは、ずいぶんスターが生まれやすくなったな、と見込んでおります。

…というわけで、
「なかなか面白い時代に入ったなぁ」と思っている西野です。

今朝はですね、「スターの作り方」っていうテーマでお話しさせていただきました。

シンプルに、「鎖国性が必要」だ、と。
鎖国を作るところから、…というか
「鎖国からしか、スターは生まれない」
っていうことです。

このことを踏まえてエンタメを見ていくと、けっこう面白いかもしれないですね。
「じゃあ、次誰がスターになるんだ?」「誰が大きな影響力を持つんだ?」というと、間違いなく「鎖国を上手に作ってる人」です。
ここを注視してください。

以上でございます。

それでは、台風が迫っているのでくれぐれもお気を付けください。
いうわけで、西野でした。素敵な一日をお過ごしください。

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