見出し画像

『強さ』とは何か? byキンコン西野

このnoteは2021年4月14日のvoicyの音源の内容をもとに作成したものです。
voicyの提供:論語と算盤と鍛練を伝え、実践する『伊豆の渋沢栄一』大竹圭 さん
『光る絵本展in三陸鉄道』を観て、次世代から勇気の産声を貰った54歳、未来の為の終活中、カネコシンヤ さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。


今日は、「強さ」についてお話ししたいと思います。
ちょっと長くなりそうなので、前編と後編で分けたいと思います。

ご安心ください。勿体ぶるような真似はいたしません。この1回の放送でまとめて20分、ダーっと喋ってみたいと思います。

原因を知って、前進する

基本的に、僕のオンラインサロンでは「仮説と検証」を高速回転してサロンメンバーさんに共有していて、結果を共有する回もあれば、「つぎにこういう意図を持ってこの角度からこのジャンルに切り込んでみます」という決意と仮説を共有するだけの回もあります。

当然、全てのプロジェクトがうまくいくわけではないので、失敗とその原因、そしてこれからの対策みたいなものを共有する回もあります。

先日、オリエンタルラジオの中田君が『YouTubeで顔出ししない、やっぱりする』という朝令暮改をしてプチ炎上しておりましたが、あんなの僕にとっては日常茶飯事で、しっかりと内容を固めていたプロジェクトを翌朝にナシにすることって、結構あるんですよ。

「状況が刻一刻と変わるので仕方がない」というのが、西野の言い分、言い訳ですね。

そんなことを繰り返して、結局、サロンの中で何をしてるかというと「データ」を取得しています。このケースでこの球を投げるとこうなるとか、この状況だとこれをやると乗り切れる可能性が75%といったデータです。

「強さ」とは結論、このようなデータの量のことを言うと思うんです。

例えば、自転車屋さんを廃業することになって、右も左もわからない八百屋さんをスタートさせることになった時に、職種は違えど作業内容が重なっている部分って必ずあるじゃないですか。

SNSを使った集客だったり、商品写真の撮り方だったり、お客さんとの間の詰め方であったり、あるいはクラウドファンディングのリターンの組み方だったり。

野菜の扱い方に関しては素人なのでその分野ではどうしても遅れを取ってしまいますが、前職のデータ結果で使えるものって、沢山あると思うんですね。それで、これが仕事や生活に安定をもたらしてくれるということです。

しかし、自転車屋をやっていた頃に、正確なデータがあまり取れていなかった場合、転職してしまうと、ゼロスタートになってしまいます。これはかなり不安定です。

僕は5年に1度程のペースで職業が変わってしまっているのですが、とにかく現場でデータを取りまくっているので、今でもどうにか生き残っています。

それで、プロの方ってすごいなぁと思うのが、例えば、僕のお友達で尾原和啓さんという方がいるのですが、2年程前、オンラインサロンのメンバーがまだ1万人弱ぐらいだったときに、尾原さんに「最終的に僕のサロンは何人になるんですか」と聞いてみたことがありました。

「あーちょっと計算しますね」みたいなことを言われて、まもなく、「イレギュラーがなければだいたい6万人ぐらいですかね」とお返事があり、今その通りになっているんですよ。すごくないですか。二年前に答えが出ていたんです。

あと、僕らはもともとブロードウェイでミュージカルをやる予定でプロジェクトを進めていたのですが、その最中にコロナがやってきてブロードウェイが閉じてしまいました。向こうにスタッフも残しているし、僕らは気が気じゃないわけですよ。

とにかく再開することを願いながら、新型コロナウイルスの状況をすごく細かく見ていたのですが、そんな中、去年の1月中旬だったか2月中旬だったか3月中旬だったか忘れましたが、専門家の方から「来月4日の実行再生産数(一人が何人に感染させてしまうかという数字)が『1.0』を割るので、感染の第1波はそこから落ち着いていきます」という発表があって、どういう計算でそれが割り出せているのかについては分かりませんが、本当に翌月の4日にピークアウトしたんです。その時にも言われていたのが、「イレギュラーがなければ」ということでした。

それで、映画『えんとつ町のプペル』がまだ全然上映されている時に、舞台挨拶などは禁止されていたので、「一緒に映画を見る」というのをやっていました。

それは、政府や映画館が定めたルールに従っていたにもかかわらず、「コロナ中に集客をするのは良くない」という声がもう日本中から上がりました。

「定められたルールの中で集客をして何が良くないんですか」と聞くともう目の色を変えて、「『密』が生まれるだろう。考えたらわかるだろ」と、もうみんな叫んでいるんです。そんなことを言い出したら、CMを流して全力で集客している全テレビがアウトになっちゃうじゃないですか。

なんでTwitterで西野が集客するのがダメで、テレビが集客するのはアリなのという、そういう話になってきます。

ワイドショーで、「キンコン西野が映画館に集客しているのはどうなんだ!」という議論がされた後に「コンビニのスイーツランキング」とかが流れたりして、これは一体何を見させられてるんだと思ったりもしたのですが、しかしまあ、感情で話している人に対して正論で返しても仕方ないんですよね。

我ながら悪手だなぁと思っていたのですが、ただ、あの時の一番の問題は何かと、政府が定めたルールを守っている人を叩いてしまうと、政府が仕掛けたどの施策が有効性があったかが分からなくなるという点だと思うんです。

つまり、時短営業で20時までという政府のルールに従って、飲食店がつらいなか20時までの営業時間の中でやりくりしていた時に、「コロナ中に集客するとは何事だ!」と暴れちゃう人が出てきて、その店の営業を妨害したとするじゃないですか。それでその店が営業できなくなったとするじゃないですか。それによって、コロナの感染者数が減ったとするじゃないですか。これはめでたしめでたしではなく、20時までの時短営業が効いたのか、営業停止させたことが効いたのかが分からないんですね。もしかしたら20時までの時短営業という打ち手が聞いて感染者数が減ったかもしれないのですが、だとしたら、店は停止しなくて良かったんですよ。

どの施策が効くのかというデータを専門家が必死で集めているのに、それを守ってもらえないと、いつまでたってもデータが取れない。つまり、いつまでたっても薬が作れないんですよ。

これは経営者的に物事を考える人とそうではない人で大きく分かれるのですが、「サロンメンバーが増えた!やったー!」じゃないんです。「何をしたら増えたのか」という点を知らなければならない。「コロナの感染者が減ったーやったー」ではないんです。どの施策が効いて減ったのかという点を知らなければならない。

「前に進む」とは、「原因を知る」ということですね。

原因を知らずに理由がわからずに成功しても、これには再現性がないんですよ。逆もそうですね。原因や理由がわからずに失敗すると、また同じ失敗を繰り返してしまいます。

とにかく大事なことは、「原因を知る」ことです。

原因を知ったときに初めて人は前進するという考え方です。

このことを踏まえていただいた上で、後半戦に参りたいと思います。


強さの正体は、データの量

後半でお話ししたいのは、どうせデータを取得するのであればデータの取得率、吸収率を最大化してから臨んだ方がいいよねというお話です。

「分からないことは否定する前に、とりあえずやってみる」という考え方ってあるじゃないですか。あれって何か前向きですごく良いと思うんですね。

YouTuberを否定してから数年後にYouTube を始めたタレントさんとかってちょっと目も当てられない状況になっていたりするじゃないですか。クラウドファンディングを散々否定して自分の周りからクラウドファンディングの利用者をばーって追い払ったにもかかわらず、コロナが来てからクラウドファンディングに助けを求めた人も、なかなか厳しい状況に追いやられたと思うんですね。

このように、とりあえずやってみる人とやる前に否定する人とでは、雲泥の差、すっごい差が生まれることになります。厄介なことに、新しい文化は最初はやっぱり否定派の方が多いので、否定しておいた方が自分にポイントが入るんですね。

最初から言っていました。僕としても、後出しジャンケンだと思われたくないので、「これは最初から言ってたよ」という念を押した上で言わせていただきますが、やっぱりClubhouseって「時間を奪われすぎる」んです。

特に、フォロワー数が増えれば増えるほど、ルームに参加した際にトークに誘われてしまって時間が奪われてしまうという構造上の欠陥があったので、もう持つわけがないんですよ。

始めてみて皆それに気づいたりしたと思うのですが、持つわけがないんですね。時間めっちゃ奪われるじゃんみたいな。

ちなみに僕は、当時、匿名でClubhouse用のスマホを使って皆さんのお話を聞かせて頂いておりました。トークに誘われたくなかったので。僕の友達はみんなClubhouseというこのサービスが持つわけないのはもう分かっていました。ただ、「招待制」という引き算的な発想は面白いし、デザインとか触り心地も洗練されているので、勉強がてらこれがどこまで持つか見たいと言って始めていたんですね。

それで2日ぐらい触ってみて、「まぁ持って今月いっぱいですね」という結論を出して、みんな辞めていったんですよ。voicyの緒方さんとか、結構その辺の解像度を高く捉えておられたと思います。

確か、「ピークアウト来週すね」みたいな感じでつぶやいていたの、緒方さんじゃなかったかなぁ。もう来週で落ち着きますねといった感じで答えを出していました。

要するに、とりあえず始めた人と確かめるポイントを持って始めた人とでは、持ち帰ってくる「宝」の量が全然違っています。とりあえずやってみるというのは、合格点だと思うのですが、どうせとりあえずやってみるのであれば、自分の中で仮説を持った上でやってみた方がいいんじゃないかなというお話ですね。

その仮説は外れていてもいいと思うんですよ。「俺の仮説って結構外れるよね」「俺の仮説って10回中7回は外れるよね」というデータはとれるので。

これは全てにおいて言えることで、「実験癖」というか「仮説癖」みたいなものはつけておいた方が良いと思います。

例えば、お店をやっていたら、店の前の行列は「何人」の時が一番売り上げが出るかというデータを取るとか。行列がないときの方がお客さんが来てくれるとか。行列は5人の時、行列に誘われたお客さんが来てくれるとか。行列を22にしてしまうと、「並ぶのが面倒」というお客さんが生まれ、かえってお客さんが減ってしまうとか。

そういった仮説を立ててひとつずつ検証していく。

そうすれば、レジを回転させるスピードの正解が割り出せるじゃないですか。

あまり速く回転させてしまうと、行列は「5人」の時の方が行列に誘われたお客さんが来てくれるという答えが出たにも関わらず、レジをあまりにも速く回転させてしまい、行列を潰してしまうこととなり、かえって売上が下がってしまう。店的にはあんまりキビキビ動くのって良くないよね、みたいな答えが出るじゃないですか。

なので、「仮説検証」は、そういうときにすごく活きてくるので、重要だなぁと思います。

とにかく、「強さ」の正体は、基本を言えば「データの量」なので、データを取ることが重要です。

繰り返しますが、二、三歩後退しようが何であろうが、データを取ることが重要で、データを効率よく取得するためには仮説を持って臨むことが大事だと思います。

そんなこともあって、白状すると、今日はvoicyを初めて20分やってみました。

「20分だと聴き応えがありました」とか、「20分は疲れるよ」とか、「僕は朝のこの10分の間にいつも聴いてたのに、20分やられてしまうともう聴けないじゃないか」など、いろんな声が上がってくると思うのですが、今回の結果がどちらに転んでも、ああそれやっちゃダメなのねというデータが取れるので、成功だと思います。

まあ、そんなことよりも、20分の話をちょうど20分でまとめた西野を褒めてあげてください。明日からはいつもの放送に戻ります。



▼西野亮廣の最新のエンタメビジネスに関する記事(1記事=2000~3000文字)が毎朝読めるのはオンラインサロン(ほぼメルマガ)はコチラ↓

▼Instagram版はコチラ↓



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?