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キンコン西野が近大のスピーチで仕掛けたこと

このnoteは2019年10月23日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:臼井 博美さん

どうもこんにちは。キングコングの西野亮廣です。
お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、
国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

ロザリーナと御飯に行ったよ

さ、毎度この冒頭の挨拶が、
定型文みたいでちょっと味気ないかなと思ったので、
ちらっとだけ近況を報告するとですね、

今日からパリに行きます。

西野亮廣『光る絵本展 in エッフェル塔』のレセプションやら何やらでですね、
顔出さなきゃいけないので、パリに行きます。
スタッフは先にパリに飛んで、いろいろ準備してくれているみたいです。
本当にありがとうございます。

昨日はですね、
『えんとつ町のプペル』っていう絵本の主題歌を歌ってくれている
ロザリーナに呼び出されて、ご飯に行ってきました。

非常に才能あるヤツで、
僕は彼女の将来についてもう
希望しかないんですけど、
なんか面白いコトしでかしてくれそうだなぁと思って、
ずっと話を聞いていました。

本当に素敵なヤツなので、
ぜひ知って欲しくて、このチャプターの方にリンクを貼っておきました。
良かったら覗いてみてください。

というわけで、
今朝は「キンコン西野が近大のスピーチで仕掛けたこと」
というテーマでお話ししたいと思います。

まずは、御覧ください

さ、というわけで、今朝はですね、
「キンコン西野が近大のスピーチで仕掛けたこと」
というテーマでお話ししたいのですが、

昨日ね、お喋りに関する投稿を二つほど
出させていただいたのが結構反響でですね、

お笑い芸人が、お笑いとかおしゃべりのこと語るのって
なんとなくご法度な雰囲気があるんですけれども、

まぁまぁ、
裏側を語れるとか知れるっていうのも、
ラジオの良いところだなと思うので、
ここはちょっとですね、
包み隠さず、 お話していきたいなと思います。

近大のスピーチです。

今年3月に行いました近大のスピーチ、 これが非常に話題になってですね、
YouTubeにアップされてもう600万再生を超えているのかな。
(注:voicy収録当時。2020年3月現在、約770万再生)

まあすごい勢いで回っていて、
非常に話題になったんですけれども、

近大のスピーチ、ご覧になられてない方は、
まずはこちらをご覧ください。

どうぞ。

失敗する瞬間を見せる

じゃあここからは、
YouTubeに上がっている近大のスピーチを
ご覧いただいたという前提でお話しさせていただきます。

近大のスピーチで仕掛けたことっていうのはですね、
私冒頭でですね、

ノープランで出てきました。

と言ったんですけれども、
半分ホントで、半分ウソなんです。

もちろん、ノープランの部分がほとんどなんですけれども、
事前にいくつか仕掛けをしていたことがありました。

まずは、仕掛けていたというか、全体の構成として、
しゃべろうと思ってたことは決めていたんですね。

過去の登壇者の方と、
比較されるわけじゃないですか。
じゃあ、僕と去年の又吉くんが多分最年少なんですよ。
で、この最年少の人間が、
あんまり、ありがたい話をしても、
説得力で言うと、そりゃあ先輩方に絶対負けてしまうし、

スピーチをするからには、
当然、世界で一番
を取りに行こうと、本気で思ったんですね。

やるからにはもう、
地球上で一番、これまでのスピーチで一番、
素晴らしいスピーチをしてやろう
ということを思ったんですね。

そうすると、説得力が必要な、
年輪が必要なことは、
手を出しちゃダメだなと。

じゃあ自分が伝えるメッセージってなんなんだ
ってまず考えた時に、

極めて普遍的で、
いちばんシンプルなものにしよう
と思った時に、やっぱり、

『挑戦しましょう』

っていうことをを伝えようと思ったんですね。

「じゃあ、この挑戦しましょうっていうことを、どうやって伝えようか?」
っていうところが、勝負の分かれ目になると。

そのままステージに立って、「皆さん挑戦してみましょう」
って言ったら、これ、芸も何もないですから、

「やっぱ流石お笑い芸人だな」
「やっぱ流石おしゃべりで生きている人だな」
って思ってもらうためには、
普遍的で、かつシンプル、極めてシンプルなこのテーマを
どういう風に見せるかって
ところが腕の見せ所だなーとか思ってですね。

まず決めたのは、
シンプルなメッセージ、
『挑戦しましょう』
ということを伝えるっていうことですね。

あんまり変化球は投げない。
『挑戦しましょう』だけを言う。

じゃあ、これをどうやってみせていこうかって
考えた結果、あの構成になるわけですけれど、

構成自体はなんとなく決めてたんですよ、
ドジな話をして、
それを笑い話にして最終的には
ほら過去は変えられたでしょっていう。

で、「これから皆さん失敗することもあると思いますが、
それもいずれ過去になるから、
それは変えることが可能である」と。

理論上つまるところ失敗なんてものは存在しない。
そこでやめてしまうから失敗であって、
失敗した過去をその瞬間に
料理して変化させてしまえば、

失敗なんて基本的に存在しないから。
だから挑戦しましょう。

要は言葉だけで言うのではなくて、
自分が1回目の前で人様の前で登壇しているその瞬間に
失敗してみせて取り返してみせて、
ほらねって言った方が説得力あるなと思ったので、
失敗することが大事だったんですよ。

決めたことは、
あの瞬間、登壇時間16分の間に
絶対に失敗するっていうことです。

それを取り返した瞬間もまるごと見せる
っていうことですね。

失敗を実際にしたヤツが「取り返せるから」
って言ったほうが、説得力があるなと思ったので、

まず決めたのは、失敗すること。

で、 ここからが思いっきり仕掛けたところなんですよ。

「じゃあどうやって失敗してやろうか?」
っていうところですね。

近大のスタッフさんとの連携プレー

それでですね、
もう盛大に失敗してやれって思ってですね、
僕が近大の卒業式を運営しているスタッフさんに
お願いしたことは二つですね。

一つ目は、これは事前にお願いしました。
司会者の方に、くれぐれも
「キングコングの西野さんの登場です。盛大な拍手でお迎えください。」っていう、
お客さんを煽るようなことはしないでくれと。

静かーに出させてくれと。
近大のスピーチって、順番でいうとですね、
卒業式のだいぶ終盤なんですよ。

卒業式、重っくるしい行事が続くじゃないですか。
会場の雰囲気むちゃくちゃ重いんですよ。

で、1時間から1時間半ぐらい
ずっと重いのが続いて、
最後のスピーチなんですね。

で、司会者の方が煽らない限りは、
基本的にお客さんが異常に沸くっていうことはないので、
絶対に客席を沸かさないでくれ
って言ったのが一つですね。

二つ目です。
「登場をやり直すので、VTRすぐ出せる準備をしておいてくれ」
って言ったのが二つ目のお願いですね。

つまるところ、もう決めていたことは何かというと
VTR終わりで僕が登場するんですけれども、

拍手が、がーって盛り上がる前に喋りだして、
「おい、パラパラやないかい、せっかくこうやって出てきたのにパラパラ
やないかい、やり直しましょう」って言って、
VTRをすぐ出してもらってまたすぐ登場して
バーって沸くっていう。

ここまでは思いっきり仕掛けたことです。

ここまでは演出ですね。もう完全に狙いにいった。
要は、1回目の登場で失敗して、2回目の登場で取り返すっていう
もう2回目はむちゃくちゃ湧くわけですけれど、
2回目の登場で取り返すっていう
ところを見せるっていう。

一番大きな仕掛けはここですね。
登場で失敗するっていう風に演出したっていう。
でもね、ここでもう一度 、
そのYouTubeを見返していただきたいんですけれども、
登場で僕が出てきて拍手パラパラやないかって言ってるんですけど、

これ言ってるだけでですね、
面白いことにですね、
パラパラじゃないんですよ。

もう、1回目の登場で沸いてるんですよ。
よくよくお客さんのリアクションを見てもらえると分かるんですけど、
もう沸いてるんですよ。

わーってなっちゃったんですよ、やばいなーと思ったんです。
で、だから駆け足で出てってすぐしゃべりだしたんです。

これちょっとでも間あいたら、うわーっとかいええええとか、
はしゃぐ人が出てきてそれに引っ張られて、
沸き切ってしまうなって。

沸き切ってしまうと、
今回のスピーチの狙いというのは
登場で失敗するっていうことですから、

失敗しなきゃいけないんですよ。
登場で沸いてしまうと困るわけだから。

これまずいなーと思って、沸き切る前に
がーって言葉で潰して、
「おいパラパラやないか」って言ってるんですけど、
よくよく見て下さい、パラパラじゃないんですよ。

でもホント面白いなと思うのが、
「パラパラやないか」って言った瞬間に、
お客さんのリアクション、ネットのリアクションとか、
コメント欄でもツイッターでもなんでもいいんだけど、

「西野の近大の卒業式、登場パラパラだった笑笑笑」

みたいになる。

そっか。
現象っていうものは、
言葉で変えることは可能なんだ。

ってことをこの時に思いましたね。
全然パラパラじゃないんですよ。

まぁでも、こんなもんじゃないぞということでですね、
卒業式の登場としてはこの拍手では足りてないぞ
っていうふうに何とか強引に持ち込んでですね、

無理から失敗したっていうことですね。

で、もう一回やり直しだって言ってすぐに下がった瞬間にもう
VTRが食い気味でバーンてスタートしたんですけれども、

あんなものは事前に用意してないと出てこないので、
スタッフさんがいいタイミングで出してくださったっていう。

一つ目の仕掛けとしては、

登場絶対に失敗する

っていう演出を用意していたっていうところですね。

芸人として戦う

ね、
プロって本当にいやらしいんですよね。
こういうことをやるんですね。
プロっていうのは。

で、ここまでは大したことないんですよ。
事前に用意してた部分だから。

ここまではどう転んでも計画通りいくことは分かっていたんですけど、
問題はこっからなんですよ。

実はこっからの構成としては登場してからですね、
過去のドジ話を喋って、
エピソードトーク喋って笑いにして、
それ7〜8分くらい喋って終わって、

最終的には失敗した過去は変えられる
っていう風な話に持っていくっていうことは、
まあここの構成は決めていたんですよ。

ってことはですね、
過去のドジ話を喋って、
その後、その7、8分後ぐらいに、

失敗した過去はその時の立ち振舞いで
変えることは可能だと。

あのとき失敗した恥ずかしかったことも、
輝きを増すこと、輝きを出させることは可能である
というふうな話が後に控えているわけじゃないですか。

そうするとですね、
ここが一番恐ろしいところなんですけど、

ドジ話で絶対にウケなきゃいけないんですよ。

ドジ話を喋ってスベってしまうと、
その後に待っている、過去は変えられる
って言うところにつながっていかないから。

変えられてないじゃんという。
失敗した過去のエピソード喋ってまた今回も
盛り上がってないじゃん失敗したままじゃん
っていう話なってしまうから
絶対にウケなきゃいけないんですよ。

あの構成上、あそこのエピソード、僕は3発ぐらい
喋ったんですけど、
全部当てないといけないっていう。

ここが大勝負ですね。
ここが大勝負で、ここがノープランの場所ですね。

要は事前にこのエピソードとこのエピソードとこのエピソード喋るぞ
って決めてしまうと、
会場の空気とマッチしない場合があるから。

例えば、急に母親のドジエピソード喋って
この空気に合わないということ、普通にあるからね。

なのでこうやって、
助走しながら探りながら、
このお客さんにはどの話をしたらハマんのかな、
一発目この話ぶち込んでみよう、ハマった。
ってことはこの話がハマるってことは、
あのネタ持ってこようっていう、

ここは、ゴリゴリにお笑い芸人の仕事です。
ここが一番コワイの。
ここが一番コワイんです。

多分、芸人だったらこのコワさ超わかると思うけど、
1時間から1時間半、
ずーーーーっと黙ってたお客さんが目の前に居るわけですね。

例えばライブとかにしたってテレビの収録にしたって、
前説っていうものがあって、
前説でがーって盛り上げてくれて、
お客さんを温めてくれてようやく、
本ネタに入るんですね。

しかし近大の場合は前説がないんですよ。
強いて言ったら、僕が自分でやった
オープニングのやり直しぐらいですね。

とはいえ、温まり切ってないお客さんに対して、
もっと言うとエピソードトークを待っていないお客さんに対して、
あの場でエピソードトークなんか喋ったところで、
お客さんの中でハテナずっとあるわけじゃないですか。

あれこの人なんでこんな話してんの
っていう。
この状況でウケなきゃいけないっていうのは、
まあむちゃくちゃコワイです。

ただ僕は、ずっとそれやってきたの。
『西野亮廣独演会』と言ってですねぇ、
もう何百回も1人しゃべりをやってきたんで。

講演会じゃないですよ。
講演会なんか、いい話をするじゃないですか、
ためになる話をするじゃないですか。

そうじゃなくて、
独演会っていうのは本当にくだらない話を
1時間半から2時間ぐらいするっていうイベントなんですけれど、

それで、日比谷公会堂とかで2000人のお客さんとかを
楽しませなきゃいけないっていう、
沸かせなきゃいけないっていう
勝負をずっとしてきた人間ですから。

ここは勝負だぞとか思って。
あの近大のスピーチの、あのエピソードトーク入った時間帯というのは
もう芸人としての能力を全部使ったっていう感じです。

一番汗をかいているっていう。
そういう時間帯です。

で、そこで笑いさえ取ってしまえば、
もう金輪際、来年再来年このあとずっと続く
スピーチでこのジャンルで、自分に勝てる人は出てこないだろう
っていう風になんか思ったのかなぁ。

まあ本当にもう、フルスロットルで行ってやろう。
ここでもう、力でねじ伏せてやろう
って思ったっていう。

あそこはもう芸人の牙が生えに生えまくってる
っていうところですね。

まあそれなりにコワかったですが、
そういう勝負に出てみて、
そこで無事ウケて、
その後に、
ね、過去は変えれるでしょ
っていう話をしたっていう。

まあそういうところです。

まとめ

さあというわけで、
いかがだったでしょうか。

まとめでございます。

仕掛けたこと、
まず一つ目は、

登場で絶対失敗する。
失敗することを演出したっていうこと。

二つ目は、一番コワイ勝負ですけど、

芸人としてウケるかウケないか、
笑いを取れるか取れないかっていう
大勝負に出たっていうことですね。

二つ目に関してはもう仕掛けでもなんでもないですね。
真似しようと思っても、昨日今日から急にステージ立ち始めた人が
真似しようと思っても到底できない。

本当にこう芸人の経験と才能みたいなことを
ふんだんに使ったことですね。

あそこは多分なかなか難しいところですね。

なので、大事なのは、

用意してた部分と、用意してなかった部分がある

っていうところですね。

で、みなさんもスピーチを今後やられる機会ってあると思うんですね。
結婚式のスピーチであろうがなんであろうが、
ええと、くれぐれもですね、ノープランで出て行くと多分失敗すると思います。

僕は正直別に結婚式のスピーチであろうが、打ち上げの挨拶だろうが
どっかの挨拶だろうが、僕はお笑い芸人だから
ノープランで行ってもまあなあなんてことないですけど、乗り越えれますけど、

ほとんどの人は多分ノープランで行くと、
マゴマゴマゴマゴマゴマゴマゴマしてしまうので、
やっぱり準備をして行ったほうがいいと思います。

だけど、ガチガチに準備していくと、
会場の雰囲気と用意していった構成がそぐわない場合があるので、

要は、
遊びの部分。

つまり、内容ちょっと変更してもですね、
全体の構成に響かないような部分は入れておいた方がいいと思います。

その時その時に、合う合わないが絶対に出てくるので。
で、スピーチのポイントとしては、
どんだけ、内容しっちゃかめっちゃかになっても、
最後のまとめさえ締まれば、
なんかそれっぽく聞こえるので、

多分用意して行ったほうがいいのは、
最後ですね。

一番最後のまとめの言葉だけは用意して、
練習して行ったほうがいいと思います。

そうすると一つの作品として、
良いスピーチになってくると思います。

参考にできるのはそこぐらいですね。
くれぐれも、エピソードトークとかは
あんまり仕掛けない方がいいとは思いますね。

そんなに経験ない場合、危なすぎるので。
ウケるスベるの勝負って危なすぎるので。

いい話って勝負はまだいいんだけど
ウケるスベるは、結果が如実に出てしまうので。

笑い取りに行って笑いが起こらなかった時に、
失敗っていうのがもう目立ってしまうので、
ウケるスベるの勝負はあんまり得策じゃないと思います。

近大のスピーチでは、僕は芸人なので、
ウケるスベるの勝負をしてみました
っていうところでございました。

というわけで今朝は、
「キンコン西野が近大のスピーチで仕掛けたこと」
というテーマでお話をさせていただきました。

それでは素敵な一日をお過ごしください。
西野亮廣でした。

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