気持ちは分かるけど、○○だけはするな!byキンコン西野
このnoteは2020年4月17日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:池永 香織 さん
どうも。キングコングの西野亮廣です。
お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。
今日は、
「気持ちは分かるけど、○○だけはするな!」
というテーマでお話したいと思います。
刻々と変化する「道徳」
昨日の配信では、コロナ時代にテナントの家賃交渉に応じなかった大家さんのあり方について少しお話しさせていただきました。
要するに、「ここは交渉に応じて一緒に頑張りましょう」っていうスタンスを取っておかないと、
このタイミングで入居者に出て行かれてしまったら次の入居者は簡単に見つからないし、今回は長期戦になりそうなので、収入ゼロが更新されてしまって「あそこで値段交渉しておけばよかったなあ」っていう後悔を迎える可能性が極めて高い。
というお話をさせて頂いた直後に、これまで7都道府県だけに出されていた緊急事態宣言が全国に拡大する気ニュースが出ました。
ほらね、という流れになっています。
今の状況は、2年、どう楽観的に見積もっても1年は続くという前提であらゆる決定をした方がいいと思っています。
全ての会社に求められているのは、まずは生き延びること。
これまでのような殿様商売は通用しないし、ビルや土地のオーナーさんなら、これまでのように「土地を持っている」っていうマウントは絶対取れないですね。
今、日本は5月6日までの緊急事態宣言の実施期間を延長するかどうかの話にもなっていると思いますが、
これもまた基本は延長するものだと思って、ビジネスを設計しておいた方がいいと思います。
それで、その時ちょっと危ういなぁと思うのが、ここ最近けっこう見かけることなのですが、
時々、 ツイッターなどで見かける、現在休業中の美容室の美容師さんが、
現在営業中の美容室に向けたコメントです。
その内容は「こんなときに営業するなんてどういうことなんだ」というものです。
これを言いたくなる気持ち、めちゃくちゃ分かります。
だって、自分の店を世の中のためを思って、自分の身を削ってお店を閉めているのにも関わらず、その目の前で普通に営業されていたら「俺の覚悟が無駄になるじゃないか」という気持ちになりますよね。
むずかしいですね、これ。今みんな悩んでいることです。
お店を開けてお客さんに来てもらえないと食っていけない。
だけど感染のリスクがある。
そんな中、あんまり大声で「来てください」とも言えない。
でも来てもらわないと食っていけない。どうすりゃいいんだっていう。
そうなんです、今回は正解がないんです。
ただ、この局面ではまず、「規制」と「自主規制」を整理した方がいいと思います。
今回、国は美容院を休業要請の対象には入れていないので、閉めている店は、あくまで自主規制ということになります。
お客さんと従業員のことを守り切れないかもしれないから、自主的に店を閉めているということですよね。
これはもう本当に素晴らしいことだと思います。
一方で、自主規制を強制する「俺も閉めたんだからお前も閉めろよ」という言動は考えものだと思っています。
それは、相手に対してではなく、結果的に、自分に対して結構のリスクになるなぁと。
というのも、今回は、まず間違いなく長期化する。
そうなってくると、休業に入った店も、さすがにどこかのタイミングで再開しなきゃいけなくなってくるんですね。
休業に入った実店舗のキャッシュが持つのって、せいぜい2ヶ月とかですよ。
今から2か月後には、泣いても笑っても再開せざるを得なくなると思う。
ですが、2か月後なんて「こんなときに営業するなんてどうなんだ」と言っている今と状況はあまり変わっていないと思いますよ。
つまり、「結局お前もこんなときにやるの」という強烈なブーメランとなって自分に返ってくる。
ここは、本当に気をつけた方がいいと思います。
なんか、1週間おきぐらいに「道徳のトレンド」が変わっているなぁと思っています。
もともとは自粛しろだったんですよ。
「自粛だ自粛だ」「延期しろ延期しろー」だったんですよ。
その次に、「とはいえ経済を回さないと」っていうブームがきて、
その次に、「いやいやこれ本当に死ぬ奴だからいったん全部止めようよ」っていうブームが来て、
それで今は、「えちょっと待ってこれ、2、3年戦争なの、さすがに3年もは止められへんよ」ということになっていると。
この日本で2年間活動を止めるということは、絶対に不可能なわけで、今求められているのは、ウイルスとどう共存していくかっていうことですよね。
国はそれを考えて、どこを止めてどこ動かすかっていう判断をしてるわけじゃないですか。
ライブは止めたけど、電車は止めていないとかそういうことですよね。
どれだけ「ステイホーム」って言おうが、「テレワーク」って言おうが、現場に行かないと回らない仕事はあるわけで。
それこそ、「テレワークだ」って言ってる人たちが買っている食材を売ってくださっている近所のスーパーは、店員のおばさんが電車通勤してくださっているおかげで回っているので。
ここは、電車が抱えているリスクを承知の上で、ライブハウスほど飛沫が飛ばないという判断のもと運転を続行している。
少しでもリスクがあるものを全部止めるとなってしてしまうと日本が破綻するから、リスクと相談しながらウイルスとの共存を図っているわけですね。
いきなりゼロにするなんて不可能なんですよ。
それをするには経済を止めなきゃいけないから。
それで、少しテクニカルな話をすると、1人の感染者が生み出す二次感染者数の数を「実効再生算数」という言い方をしますが、これが東京は今、1.7人とかだと思います。
つまり、1人が平均で1.7人に新型コロナウイルスを移してしまっていると。
早い話、この実効再生算数が1未満になると、感染症が終息に向かうわけで。
経済を止めないように、ウイルスと共存しながら実効再生算数をじわじわと下げていくっていうのが、今取られている戦略ですね。
生活空間を上手に線引きして、ウイルスと共存しながら、どうウイルスを追い込んでいくかというのがテーマです。
その無計画な、「お前の店も閉めろー」というのは、先ほども申し上げた通り、いずれ活動を再開することになる自分の首を絞めることになるので、あまり言わない方が身の為だと思います。
もう胸中は、死ぬほどお察しします。
言いたいもん、だって。
自分が店を休んでて、やってる店があったら「ふざけんなよ」って言いたい胸中は、死ぬほどお察しするのですが、ちょっと、状況が変わってきました。
先ほども申し上げましたが、「道徳のトレンド」のようなものが、コロナ対策対応がちょっと変わってきた。
自粛になり、次は経済を回せ、次は「これ本当にいったん止めよう」、次は「ちょっと待ってこれに3年戦争なの」という。
今ここになっているので。
状況に合わせた道徳を持っておかないと大変です。
今回のことについては、みんなで一番いい形を探っていきたいし、そのためには、細かく冷静に情報と道徳を共有していきたいと思っております。
また何か思うことがあれば、こちらの方でお話ししたいと思います。
というわけで今朝は、
「気持ちは分かるけど、○○だけはするな!」
というテーマでお話させていただきました。
「俺の店も閉めたからお前の店も閉めろよ」というのだけは、今ちょっとあまりしない方がいいなというところです。
それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。
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