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挑戦者の痛みを僕は知っている byキンコン西野

このnoteは2020年9月28日のvoicyの音源、『西野亮廣ブログ』の内容をもとに作成したものです。
voicyの提供:福祉用具を愛する京都のごとうまさひろ さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「挑戦者の痛みを僕は知っている」
というテーマでお話しします。

今日は映画「えんとつ町のプペル」との向き合い方と、そこに対する僕の想いをお話ししたいと思います。


今、今年の12月公開に向けて、『えんとつ町のプペル』というアニメーション映画を作っています。

制作スタッフさん、宣伝スタッフさん、各映画館で働かれているスタッフの皆様、そして今は、有志で会社や店や学校にポスターを貼ってくださる方や、クラウドファンディングの支援という形で援護射撃してくださる方までいて…この映画『えんとつ町のプペル』という一つの作品を世に届ける為に、数えきれないほどの人が動いてくださっています。

もちろん、たくさんの人の生活がかかっています。


なので、絵本を作る時とは違って、制作段階から、いろんな声が入ってきます。


ここを隠したって仕方がないので、腹を割って喋りますが……

映画『えんとつ町のプペル』にはオープニング主題歌とエンディング主題歌があって、そこには「すでに多くのファンを獲得している人気アーティストさんにお願いしよう」という声もあります。

主題歌が、人気アーティストさんの新曲となれば、いわゆるウィンウィンの関係で、映画公開に合わせて、アーティストさんもプロモーションしてくださいますし、それこそ『ミュージックステーション』で、「映画『えんとつ町のプペル』の主題歌」として歌っていただき、それがそのまま映画の宣伝となる。


この力はやっぱり大きいので、「上手く組みましょう」という考えは百も承知なのですが……
映画『えんとつ町のプペル』って、突然、降って湧いた企画じゃないんです。


元は【誰も知らない一冊の絵本】から始まって、それを育ててくださった人がいたんです。

国内外で個展をひらいて、その先々で個展のスタッフさんがお客さんの呼び込みをしてくださって、それによって、この作品は少しずつ少しずつ見つかって、少しずつ少しずつ成長してきました。

 
その過程で、いつも流れてた曲があって、それが『えんとつ町のプペル』というタイトルの、僕が今から8年ぐらい前に、絵本の世界観をスタッフに伝える為に作詞作曲した曲です。

サビの歌詞なんてヒドイもんで、「♪ハロハロハロ ハロウィン プペプップー プペル」です。

誰が共感するんですか、この歌詞に(笑)
なんですか、「プペプップ〜」って。

ただ、ど素人が作ったこの曲が、『えんとつ町のプペル』という作品を育ててくださった方の中に確実に流れていて、世間的には見たことも聴いたこともない曲なのですが、僕や彼らの中では、『えんとつ町のプペル』といえば、この曲なんですね。

 
なので、映画になった瞬間に、この曲を切り落とすことなんて考えられなくて……実を言うと、大物アーティストさんとのコラボの話があったのですが、そっちをお断りして、この変な曲をエンディングの主題歌にさせていただきました。

 
やっぱり、雨の日も風の日も、個展会場や各種イベント会場にお客さんの呼び込みをしてくださって、夜遅くまで頭を抱えて最善策を捻り出してくださった彼らがいなかったら、彼らが一冊の絵本を育てくれなかったら、映画『えんとつ町のプペル』なんて、そもそも存在しなかった。
なので、映画のエンディングは、御礼を込めて、この曲で彼に届けたい。

「これは僕たちで作った作品なんだ」と。

その考えに反対の声もあったのですが(※その気持ちも凄くわかります!)、最後の最後は、「僕は『一緒に苦労したい人』と、一緒に苦労したいです」という一言で決まりました。

というわけで、ことエンディング主題歌に関しましては、大物アーティストさんの力にあやかることができなくなったのが映画『えんとつ町のプペル』です。


こういうことが他にもいっぱいあって……それこそ、脚本執筆の段階で「恋愛シーンを入れるか、否か」みたいな議論もあったんです。

恋愛シーンを挟むと、上手くいけば、旬の俳優さんをキャスティングできるので、それによって、女子層を取り込むことができる。

でも、映画『えんとつ町のプペル』は、そういう物語じゃないんです。

「父と子」、そして、その二人を見守る「母」、そして「友達」による、挑戦者達の物語です。

僕が描きたいのは、そっちで、集客のことを考えて、脚本にメスを入れたくはないんです。

そんな感じで、「映画をヒットさせたいのなら、ここは押さえておけ」みたいに言われているポイントを、映画『えんとつ町のプペル』はことごとく無視しているんですね(泣)

食事シーンもなければ、お色気たっぷりの萌えキャラも出てこない。

でもね……僕は「売れそうなもの」を作りたいわけじゃないんです。

自分が腹の底から「面白い」と思ったものを作りたい。

ただ、そこには多くのスタッフさんの生活や、これまで応援してくれたファンの方の期待が乗っかっているので、【世間のニーズには1ミリも迎合せず自分が腹の底から「面白い」と思って生み出した作品】を、なんとしてでも届ける。

「マーケティング」と呼ばれるものを差し込む場所が明確に違うんです。
マーケティングによって作るのではなく、作ったものをマーケティングによって届ける。

世間のニーズに球を投げることを正解とするのであれば、僕は、そもそもテレビを辞めてないので。

その作業はもう20代前半でやったんです。
キチンと結果も出しました。


ただ、僕が興味があるのは偏愛です。
最初は誰からも求められないような偏った愛です。

絵本なんて、最初は誰からも求められなかったし、分業制で『えんとつ町のプペル』を作ることを表明した時なんて、求めらないどころか、「絵本は一人で作るものだろ!」と袋叩きに遭いました。
これまで応援してくださった方からの非難もありました。


それでも、そこを貫いた先に広がる世界があったら、それは次の世代の選択肢になるし、今、誰からも理解されない挑戦者の希望になります。

それを作品の中だけで語るのではなく、ファンタジーの登場人物に言わせるだけでなく、実際に僕がやってみせた方が説得力がある。

今回は、そういった挑戦です。

挑戦者の痛みを僕はよく知っています。

皆を楽しませようと思っているのに、皆から攻撃されてしまう。
それはあまりにも理不尽だけど、その道を進まなきゃいけないのが挑戦者の理で、
たくさんの人から足を引っ張られて、
石を投げられて、
何度もコケて、
立ち上がって、
膝が血だらけになるから、
彼らの隣を伴走して、「僕も同じだ」と励ましながら、どこまでも寄り添っていきたいなぁと思います。

今日は【挑戦者の痛みを僕は知っている】について、お話しさせていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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