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「お金を使う」ということの意味 by キンコン西野

このnoteは2020年5月10日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供: たかさわようすけさん

どうも。キングコングの西野亮廣です。
お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「『お金を使う』ということの意味」
というテーマでお話しします。

「お金を使う」のは「命をつなぐ」こと


非常にセンシティブで重要な話だと思うので、今日はちょっと言葉を選んでお話しします。

本当ならば、今からお話しする『当たり前のお金の話』は、幼稚園や小学校で教えてあげないといけないことですが、僕も含めて、日本人という生き物は、それを学ばずに社会に出てしまっているので、お金の取り扱い方を間違ってしまっている方が多いように感じています。

というのも、今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ダウンタウンの松本さんが、芸人さんに最大100万円くらいで「お金貸しますよ」と表明されたり、雨上がり決死隊の宮迫さんが、『串カツ田中』のネーミングライツを購入されて『串カツ宮迫』になったり、それこそ僕が、『ホリエモンロケット』、『インターステラテクノロジズ』のロケットのネーミングライツを買うなど、今、多くの方が『支援』という形で、自分のお金を使っています。


それに対して、「そんなことに使うんだったら、医療機関に支援しろ」
という声をあげられる方が一定数います。

これは東日本の時もありましたが、有事の際に支援を表明したら必ず発生する、伝統芸能みたいに毎回登場する人たちです。

きっと「そんなことに使わずに医療機関に支援しろ」って、正義感から言っていると思うんですよ。
本人に全く悪気はなく、アンチ活動をしているわけでもなくて、「正しいことをしている」と思っての発言だと思うのですが、だからこそ、余計にたちが悪い。

ここは整理しておいた方がいいと思うので、整理しておきますね。

もしよかったら、お父さんお母さん、そして学校の先生は、目の前のお子さんに、こういった話をしてあげてほしいなと思っていて、「『お金を使う』とは、どういうことか?」というお話です。

それを端的にいうと、「命をつなぐ」ということです。

貸し付けをやられた松本さんの場合だと、芸人及び、そのご家族。
宮迫さんの場合だと、串カツ田中の従業員さん及び、そのご家族。
僕の場合だと、インターステラーテクノロジズのスタッフの皆様及び、そのご家族。
お金を使うことで、そういった方々の命をつなぐお手伝いをさせてもらっているということです。

少し踏み込んだ話になりますが、先日、東京都内のとんかつ屋さんの店主が、新型コロナウイルスで経営が追い込まれ、自分に油をかけて自殺するという痛ましい出来事がありました。

不況や失業率と、自ら命を絶たれる方の数は相関関係にあって、お金を使ってもらえなくなると、人は死んじゃうんです。
これは当たり前の話ですが、人が命を落とす理由は、コロナだけではなくて、「経済」で亡くなる方もいる。

こんなことは、今回も散々言われている当たり前のことですが、お金を使ってもらえなくなったら、人は死ぬんです。
あなたがそのサービスを利用していなかったとしてもね。

例えば、キャバクラに行ってなかったとしても、ホストクラブに行ってなかったとしても、劇場に行ってなかったとしても、演劇を見に行ってなかったとしても、そういったサービスをあなたが利用していなかったとしても、その先には、あの人にもあの人にもあの人にも仕事があって、守らなければいけない会社があって、お店があって、従業員さんがいて、守らないといけない奥さんとお子さんがいらっしゃいます。

そんな中、「そんなことにお金を使わないで、医療に寄付しろ」というのは、言い換えると、「あいつらの命なんかどうだっていいから」ということです。

それって、人の命の重みを天秤にかけているわけじゃないですか。
優先順位を決めちゃっているじゃないですか。

おそらくそれは、人間が踏み入れてはいけない領域なんです。

そりゃね、松本さんも宮迫さんもみんな、可能であれば全員救いたいですよ。今コロナで苦しんでいるすべての人を救えるのであれば、迷わずその方法を選びます。

だけど、そんな力を持っている人間は、地球上に一人もいないんです。みんな、助けることができなかった人の悲しいニュースに胸を痛めながら、自分の非力さ・無力さを恨みながら、その中で、ある人はカレー屋さんを支援して、ある人は美容室を支援して、ある人は病院に運ばれてきた患者さんを懸命に治療して、ある人は労働力を投下して、ある人は貯金を崩してお金を投下して、そうやって、自分が助けられる範囲で頑張っているんです。

こういった有事の際には、必ず「そんなことにお金を使うな」という人が、一定数現れるのですが、それは正義感のつもりかもしれないけど、それはほぼ、殺人未遂です。
自分がどれだけ恐ろしい言葉を扱っているか、ちゃんと思い知った方がいいと思います。

お金というものが、お金を使うということが、どういう意味を持っているか、今一度、確認されたほうがいいでしょう。

税金と個人のお金を分けて考えよう


ただ、「そんなことにお金を使うな」という言葉を使うことが唯一許されているものがあって、それが税金です。税金の使い道です。

これに関しては、みんなで議論しましょうというルールになっている。

今回のコロナの騒動では、「そんなことに使うな、医療に回せ」と、税金の使い道に関して議論されることが多かったじゃないですか。
政府の対応に対して、みんな結構思うところがあって、議論が行われていて、それは正しい姿だと思うんです。

税金の使い道をどうするかということは、国民が口をはさんでいいというルールになってるので、そこに声をあげるのは正しい姿だと言えます。

おそらくそれをやりすぎてしまって、個人のお金の使い道にまで口をはさんでしまっている。しかし、このラインは絶対に越えてはダメなんですよ。

なので、もう少しだけ冷静になって、個人のお金と税金をきちんと分けて考えて、議論した方がいいと思います。
そして、その姿をちゃんと子供に見せた方がいいと思います。

要は、「僕たち人間が口をはさんでいいお金って、どこまでなんだ?」という問題で、人様のお金の使い道には、絶対に口をはさんではいけません。なぜなら、命が絡んでいるから。

人のお金の使い道に口を挟み出したらもう終わりなのですが、ただここで僕は、「お前は人として終わってるな」とは言いたくないので、少しだけ冷静になって、耳を傾けてもらえると嬉しいです。

今、本当に大変な時期なので、冷静でいられなくなる気持ちもすごくわかります。多分、みんなもう少しだけニュースと距離を取った方がいいんじゃないかな。

よっぽど軸がしっかりしていないと、感情が振り回されて、精神がどんどんどんどん削られて、今回のように「そんな使い方するな、こっちに使え」みたいな誤った判断を正義感で言ってしまうので。

言ってしまえば、それによって苦しんでしまう人を作ってしまうので、もう少し Twitter のタイムラインと距離を取った方がいいのかなと、思っております。

というわけで、
「『お金を使う』ということの意味」
というテーマでお話させていただきました。

とっても大事な話なので、覚えていただけると嬉しいです。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。

※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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