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アルゴリズムを追うな、ユーザーを追え by キンコン西野

このnoteは2020年2月8日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:いしもだむつ さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「アルゴリズムを追うな、ユーザーを追え」
というテーマでお話したいと思います。

西野がYouTubeをやる理由

Googleさんがよく言う言葉で、「アルゴリズムを追いかけるなユーザを追いかけろ」というものがありますが、僕はこの言葉に非常に共感できます。

今日はそのわかりやすい例として、僕のYouTubeチャンネルについてお話しします。2ヶ月前に、僕のvoicyの音声をマネージャーの須藤君がコピペする YouTube チャンネルを始めたのですが、先日このチャンネルの登録者数が10万人を突破しました(2020年5月21日段階では25万人を突破)。派手に仕掛けて1日に数万人の登録者数を獲得するタレントさんもたくさんいらっしゃいますが、その中で2ヶ月かけて10万人というのは、そこそこ地味な数字と言えるでしょう。

これを受けて、一般の方からよく「もっとこうすれば登録者数が伸びますよ」というアドバイスをいただくのですが、こういったアドバイスは本質的ではないと思っています。

まず大前提として、キングコング西野はYouTubeをバズらせようとしていません。この部分がいまいち理解されにくいです。

「YouTubeをバズらせようとしていないって負け惜しみでしょ」と言われますが、そういうことではないのです。なぜなら、キングコング西野は、企業からの広告費で生きているのではなくて、お客様からのダイレクト課金で生きているので、『広さ』より『深さ』の方が大切なんです。この姿勢は、YouTubeを始める前から一貫していて、『認知』よりも『人気』のほうが大切です。

ここでの『人気』とは、「本を買ってくださったり、チケット代を払ってライブに足を運んでくださったりする」という意味です。つまり、「お金を払って応援してくださるファンがたくさんいること」と定義させていただきます。イオンモールの無料イベントで人を集めても、有料の単独ライブになった瞬間に人が集められない人は、人気タレントではなくて認知タレントという整理で、話を続けさせていただきます。

これはどちらが良い悪いの話ではなくて、ダイレクト課金で生きるのなら人気タレントにならなければいけないし、そこに向けたアプローチをしないといけないということです。

これに関する話は、一週間くらい前に『自分の活動のポイントがどこに入っているのかを把握しろ』という回で詳しくお話しさせていただいているので、もしよければそちらもご覧ください。


本末転倒になってしまう戦略

このことを踏まえて、今日はみなさんが何かと口にしがちな『SEO対策』についてお話しします。まず、『 SEO対策』とは、検索エンジンで上位表示されるための対策のことです。

インターネットというのは検索に引っかからないと始まらない世界ですから、当然、SEO対策は必要なのですが、そこに注力するあまりにユーザーの満足度、コンテンツのクオリティが後回しになってしまうのは、全く無意味で、すごくコスパが悪いと思います。

ではなぜ、SEO対策をしすぎるとコスパが悪いのか。例えば、「今はこういう動画がよく見られます」というアドバイスがあったときに、それに従う方針で進めてしまうと、Googleさんがアルゴリズムをアップデートするたびに、方針を変えていかなければいけなくなります。アルゴリズムを追い続けないと食っていけない体になって、少しでも追うことを休むと食いっぱぐれてしまうということです。

いわばこれは、資産がない状態です。ずっと日銭を稼ぐ自転車創業、その日暮らしであると言えます。

一方、Googleのアルゴリズムをあまり気にせずに、自分の理念に従って活動していれば、そこを支持してくださる方、つまり『ファン』ができます。そして、ファンというのは、ザッピングするのではなく、『キングコング西野』とピンポイントで検索してくれるので、Googleのアルゴリズムがどう変わろうが、活動に支障をきたさないということです。

また、動画を長時間見てもらうために、動画の前半では結論を出さずに、後半でみどころを残しておくというやり方がありますが、これがすごくテレビ的、広告ビジネス的で、言ってしまえばアルゴリズムファーストなので、ユーザーファーストになっていないのです。

そして、ユーザーファーストになっていない以上、当然、ファンはできないので、結果的にアルゴリズムを追い続けて日銭を稼ぐ自転車操業になってしまいます。

さらに、アルゴリズムを追った先は、アルゴリズムを追った人たちで渋滞しているので、ひとり当たりの取り分が小さくなるという現象が起きます。つまり、発信者が増えれば増えるほど、取り分は小さくなるということです。これは、めちゃくちゃコスパが悪いことですね。

それでも、『SEO対策』というのは必要だと思います。よく自分も、マーケティングの必要性について語りますが、それはあくまで「いまどこに需要があるか」を頭に入れておくことで、自分の狙いと結果が伴っていないときにその原因を理解するためです。例えば、自分が左の方に玉を投げて、結果がでいなかったとしても、「みんなが右を求めている」とわかっていれば「だってみんな右を求めているよね」と、自分の気持ちの整理をつけることができます。つまり、どのくらいズレているのかを把握した上でズレた玉を投げるというのは、自分に傷がつかないために大切なことだということです。

そういった意味でマーケティングはしておいたほうがいいし、SEO対策で「今どういったものが検索の上位に表示されるのか」とか、「どういった動画がみられるのか」は、把握しておいたほうがいいと言えるでしょう。

ただ、あくまでそれは参考にするもので、くれぐれもコンテンツの形を変えるほど注力することではありません。自分が発信したい内容がオープニングのほうにあるのにも関わらず、動画を長くみせるためにオチを後ろに変更するようなことはすべきではない、ということです。やはり、ユーザーファースト、自分の気持ちファーストの方がお客さんは喜ぶし、ファンを作ることができます。

今日の結論としては、コンテンツの形を変えてしまうほどのSEO対策は、最終的には自分の首を絞めることになるのでやめておいた方がいいのではないかということです。すべての人がこれに当てはまるわけではないと思いますが、少なくとも僕は一切そういったことをするつもりがありません。

というわけで、
「アルゴリズムを追うな、ユーザーを追え」
というテーマでお話させていただきました。

素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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