見出し画像

経営者を守れ by キンコン西野

このnoteは2020年4月26日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:I was born to love sweets みうらうさこ さん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「経営者を守れ」
というテーマでお話しします。

経営者さんの苦労

今日のお話は、仕事のノウハウというよりも、僕から皆さんにお願いしたいことです。

昨日、公式Youtube チャンネルの方で、絵本『チックタック〜約束の時計台〜』の読み聞かせ動画をアップしました。

女優の戸田恵子さんに朗読していただいたのですが、戸田さんがもう最高なんです。朗読に立ち会わせていただいたのですが、本当に戸田さんが可愛すぎて、ちょっと緊張しちゃいました。

戸田さんは最高だし、サロメンバーが作ってくれた音楽も最高だし、それらをまとめてくれたうちのインターン生の仕事も最高なので、この動画をぜひ見ていただきたいです。


さて、『チックタック〜約束の時計台〜』は、飛沫感染する感染症にかかってしまった主人公の物語です。

主人公は、「会わないことで守れる命がある」というメッセージを発信しているのですが、まさに今ですよね。

これにはちょっと裏話がありまして、実は、『チックタック〜約束の時計台〜』の出版寸前に、カットしたページが1ページあります。

イラストも完成しており、そのページに載せる文章も完成していたのですが、出版寸前に何か嫌な気がして、自分としてはどうもしっくり来ず、急遽外したページがありました。

ちなみに、4月3日のオンラインサロンの投稿で、世に出なかったそのイラストページを出したのですが、それがどんなシーンだったかと言うと、パンデミックで街から人が消えたシーンなんです。

これ、まさに今じゃないですか。


絵本を出版したのは1年前で、制作をスタートしたのはそこからさらに2年前です。

これを受けて、一部Twitter 上では、僕が預言者扱いされていたりもするのですが、しかし、僕が『チックタック〜約束の時計台〜』のストーリーを書き始めた時には、すでに「人から人へ感染するウイルスが感染爆発する日が迫っている」ということは、結構言われていました。

もう3年以上前の話なので、記憶がおぼろげなのですが、その頃、鳥の中だけで流行っていた鳥インフルエンザが、鳥から人に感染する事例がいくつか挙がっていました。

ただ、そこで感染した人は誰か他の人に感染することはなく、その時は鳥から人への感染はあったのですが、人から人への感染はありませんでした。

自分はファンタジーを作る人間なので、このあたりのことは結構調べるのですが、人から人への感染が起きなかった理由の一つに、体温の壁があります。

ウイルスには、ウイルスごとに増殖しやすい、過ごしやすい温度というものがあり、鳥インフルエンザウイルスの場合は、おそらく鳥の体温である42度くらいです。

一方、人の体温は36度ぐらいですね。なので、万一、鳥インフルエンザウイルスをもらっても、人の中で増殖することはほとんどないので、人から人への感染はほぼありませんでした。

ところが厄介なことに、鳥と人間の間の39度の体温を持つ豚が、鳥インフルエンザと人間のインフルエンザの両方にかかってしまうことが分かりました。

そうなると、豚の体内で鳥インフルエンザと人間のインフルエンザが結合してしまい、人の対応に適合する新型のインフルエンザが生まれる、という話が上がりました。

もちろん、ウイルスというのは、インフルエンザだけではなく、他にもたくさんあり、じわじわじわじわと人間社会に迫ってきているので、ウイルスの感染爆発は時間の問題だということです。

そして、感染爆発が起きてしまうと、今の社会は対ウイルス用に作られてはいないので、かなり厄介なことになるという話が、もう3年ぐらい前の段階で上がっていました。

ここまで調べて、『チックタック〜約束の時計台〜』という物語を書いたのですが、普通に生きていたら、研究者でもない限り、このようなことは調べないじゃないですか。

それで、最近少し胸が痛いのは、「こういう事態に備えて事業をオンライン化してなかった自分のせいだ」と自分を責めている経営者さんや、実店舗を構えているお店の店長さんが一部いらっしゃるということです。

会社のすべての責任は経営者にあるので、自分を責める気持ちもすごくわかるのですが、ただ「甘い」と思われるかもしれませんが、会社を経営していく中で、こんな日が来ることなんて、見越せないですよ。

経営者さんに対して思うのは、あんまり自分を責めて欲しくないなぁということです。

西野からのお願い

そしてもうひとつ、従業員さんに対して思うことがあります。
これが、今日のお願いです。

先日、Twitter で世の中の美容師さんに質問してみました。

「美容室は、緊急事態宣言で休業要請の対象からは外れていて営業すること自体は悪いことではないのですが、ぶっちゃけ本音はどうですか?今、お客さんに来て欲しいですか?」と聞いてみました。

これはくれぐれも、営業している人を否定しているわけではなく、シンプルな疑問として聞いてみたということです。

すると、皆さんまず口を揃えて言ったのは、「大手を広げて『来てください』とはなかなか言いづらい」ということでした。

要するに、他の色々なお店が閉めている中、「寄ってらっしゃい見てらっしゃい」とはなかなか言えないということです。

「さすがになかなか堂々とした宣伝はできない」

これは皆さん口を揃えて言ったことでした。

その上で、これは全員ではなく、あくまで傾向として見えてきたことなのですが、やはり経営者さんには「来てほしい」という本音があり、従業員さんには「感染を広げてしまうかもしれないから休みたい」、「お客さんにあまり来て欲しくない」という本音がありました。

これはどちらも、生きていくための意見なので間違ってないと思います。

高い家賃と従業員さんへの給料を払わなければならない経営者と、給料をもらえる従業員の立場の違いというものがあり、このまま売上が立たないと最後の最後で破産するのは経営者さんなんです。

もちろん、経営者にはそれを背負う責任があるわけですが、ただあまりにも酷だなということを感じています。

今、このラジオをお聞きのあなたのお店の店長さんは、全然眠れない日々が続いているだろうし、経営者やオーナーは、そのようなことを従業員の前では話せないんです。「俺がなんとかするから」としか言えません。

こういう時に、「経営者なんだから当たり前だろ」という正論で片付ける世界よりも、そういった苦しみを一人に背負わせない世界の方が僕はやっぱり好きです。

なので、このラジオをお聴きの従業員さんにお伝えしたいのは、店のお客さんがなかなか呼べないこの状況下で、それでも会社やお店を何とか続けていくための方法を、経営者さんに寄り添って一緒に考えてあげてほしいということです。

「背負わなくてもいい痛みを背負いに行った経験」というのは、必ず今後あなたを助けてくれるので、ここはどうかひとつよろしくお願いします。

なぜか勝手に僕がお願いしているのですが、そういう世界のほうが素敵だなと思ったので、今日はそんな話をさせていただきました。

この期間ばかりは、従業員も経営者目線でお店や会社を考えてあげられると良い世の中になるなあと思っております。

というわけで、
「経営者を守れ」
というテーマでお話させていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
んでもって、ビジネス書に掲載するレベルのコラムを毎朝投稿しています。
興味がある方はコチラ↓



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?