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コメンテーターは世界を変えられない by キンコン西野

このnoteは2020年5月2日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供: 子どもの身体から世界を変える子どもの身体づくりトレーナー やまちゃんさん

どうも。キングコングの西野亮廣です。

お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。

今日は、
「コメンテーターは世界を変えられない」
というテーマでお話しします。

届かない声もある

くれぐれも、今からお話しすることは「お前は影響力がないから黙っておけ」という意図はないということを踏まえて、お聞きいただければと思います。

今、新型コロナウイルスで世界中が悲鳴を上げていて、おそらく皆さんの精神もかなり削られていると思います。終わりが見えない不安が、より一層僕らの気持ちをかき乱して、例えば政府の決定や、メディアの報道の仕方に苛立ってしまって、意見することもあるでしょう。

その気持ちはすごく分かるのですが、一方で、自分の影響が及ぶ範囲と相談しながら発言や行動を決定した方がいいのかなと感じています。

一人一人の小さい声が集まり、大きくなって時代動かすということは、実際にあると思います。ただそれは、一人一人の小さい声が集まり大きくなって時代動かすという覚悟を、一人一人が持った上で発言しているということが前提で、感情に任せて吐き出された言葉の集合体では時代が変わらない。
最近はそこがすごく気になっています。

皆さんもお察しの通り、国民全員がコメンテーターになってしまってコメントに精を出している場面をよく見かけます。

SNSをやっていると、世の中に言葉を発信している気持ちになります。
ですが、ちょっと厳しい言い回しになりますが、「届かない声もある」という現実を受け止めるべきだと思います。


聞いてもらえる人間になれ

僕の話を少しさせてください。

僕は、ジャンルを飛び越えて、いろいろなお仕事をさせていただいています。それぞれの仕事場では、その業界のトップクリエイターさんがいらっしゃいます。

出版にしても、大イベントの音響さんにしても、照明さんにしても、今作っている映画『えんとつ町のプペル』にしても、ブロードウェイのミュージカルにしても、そのジャンルには、そのジャンルで、もう何年も何年も…、経験と信頼を積み上げられた方がいらっしゃいます。

そういうところに、単身飛び込んでいくわけですから、当然、最初は聞き入れてもらえません。

お笑い芸人崩れが、急に出版業界に絵本業界に来て、絵本作家崩れが、急にアニメーション業界に来て、ミュージカル業界に来て…。

だから、行ったら絶対最初はかまされるんです。
「お前なんぼのもんじゃ?」という空気がある。

別に意地悪されているわけではないですが、ただ、やはり向こうはすごく経験を積んでいるし、お仕事を大事にされているので、外野から来た人に対しては、やはり「お前なんぼのもんじゃ?」というかましが入ります。

そういう空気が絶対あるのです。

その時、僕の「こうした方がいいと思うんですよ」という言い分が、どれだけ正しかろうが、僕がそういった方々から信頼を得ていないと、僕の声は届きません。

どれだけ正しかろうが、届かない。
だから、声が届くための努力をします。

「僕はアニメーションの動かし方を知りません。ですが、ここは誰よりもやります。」
「僕はミュージカルのイロハを知りません。なので、ここを誰よりも努力します。」
といったようにです。

そうやって、結果を積み重ねて、信頼を積み重ねて、ようやく声が届くようになるのです。

言い分が正しいから届くのではありません。
聞いてもらえる人間になったから、声が届くのです。

これは、もう絶対にそうで、どれだけ正しいことを言おうが、声が小さかったら届かないのです。

実際そうだと思いませんか。
例えば、あなたが飲食店経営者だとして、飲食ド素人のキングコングの西野が、突然ずかずかやってきて、「飲食店はこうすべきである!」などと、どれだけ叫んでも、どれだけ説いても、やはり聞き流すのではないでしょうか。

ただ、そのキングコング西野が、翌日から実際に屋台を引いて、汗水を流して、1ヶ月で屋台だけで2000万円くらい売り上げたら、その時は、「飲食店はこうすべきである」という西野の意見も少しは聞く気になる。

これが、届く声と届かない声の違いです。

意思を表明して声を上げることは、素晴らしいことだと思います。
ただし、最終目的は「声を届けること」なので、自分の声のボリュームを把握しておくことは大切です。そして、もしかすると、事態を好転させるために、今やるべきことは、声を上げ続けることの他にあるかもしれません。これが今日の話のポイントです。

誰からも求められていないTwitterのコメンテーター業に時間と精神を削られている余裕など、おそらく今はないはずです。今この瞬間に、自分が置かれている状況を好転するためにやれることは何なのか、本気で探しに行ったほうがいいと思います。

そこで出てくる答えは、きっと「なんちゃってコメンテーター」ではないはずです。
最善の策が「Twitter でコメントする」ではないはずなのです。

やらなくてはいけないことは、「なんちゃってコメンテーター」ではなく、
もっと手前にあります。

僕がどう思っているかという僕の主観を1回抜きにして、現実問題、「これだけ正しい主張をしているのに聞き入れないなんておかしい」などと言うのはおこがましい、というのが現実です。

お前がどれだけ正しいことを言おうが、お前の声が小さいうちは、お前の声は届かない、というのが現実です。

結論、厳しい事を言うようですが、とはいえ、やはりあなたの意見が通った方がいいので、寄り道せず、今やれること・今やるべきことを、精いっぱいやって、強くなってください。

意見を通そうと思ったら、強くなるしかないです。
僕もそこと向き合って頑張るので、一緒に頑張りましょう。

自分で言うのもなんなのですが、ここ何年かで、キングコング西野の意見は通るようになってきました。2年〜3年前と今とでは、僕の意見は通りが全然違うはずです。内容を世間の皆様に聞いてもらえるようになったと思います。

ですが、昔から、僕の言い分はあまり変わっていません。
8年前から、「クラウドファンディングはいいと思うよー」などと言っていましたし、「エンタメは、バーベキュー型じゃない?」と言っていましたし、「オンラインサロンいいと思うよ。」「オンラインのコミュニティ持ってないとちょっとつらいと思うよー。」と言っていました。
そういった言い分はあまり変わっていないのです。

ただ、最近になって聞いてもらえるようになったのは、僕の言い分の精度が上がったわけでは決してなくて、シンプルに結果を出したからです。

まだまだ僕は志半ばで、目指してる山頂には届いておらず、まだ2合目くらいにいます。
とはいえ、いくつか結果を出して、ようやく聴いてもらえるようになったので、自分の言い分が、いくつか世間の人に届くようになりました。

この順番なのです。
だから、正論をずっと言っているよりも、まずは、とっとと結果を出した方が、自分の言い分が届くのではないでしょうか。
そこから逃げちゃ駄目だということです。

コメンテーターは一番楽なのです。
要は自分が滑らなくて済むので。
だけど、コメンテーターは世界を変えられません。

というわけで、
「コメンテーターは世界を変えられない」
というテーマでお話させていただきました。

それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。


※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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