ビジネスモデル

『ダンピング』の意味をはき違えるな byキンコン西野

このnoteは2019年10月8日のvoicyの内容を文字起こししたものです。
voicyの提供:植森 江助さん

おはようございます。キングコングの西野亮廣です。
お笑い芸人をやったり、絵本作家をやったり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしています。

今朝はですね、
「『ダンピング』の意味を履き違えるな」というテーマでお話したいと思います。

そもそも「ダンピング」って何?

さあ今朝はですね、
「『ダンピング』の意味を履き違えるな」というテーマでお話したいんですけど。
この放送は是非ですね、
シェアしていただきたいなと思うんですけど。

本当に『ダンピング』っていう言葉を
すごく間違って使っている方が多いんですけどね。

イラストレーターさんに多いんですけれども、
まあ、『ダンピング』ってまず何かというと、
日本語だと不当廉売というか、まぁ安く売るっていうことですよね。

必要以上に安く売っちゃうっていう。

例えばそうだな・・
八百屋さんがあったとするじゃないですか。
Aの八百屋さんは普通の八百屋さんであると。

で、Bの八百屋さんというのは実は、
巨大な資本がある外資系のお店でですね。

他にももうたくさんお店を展開されていて、
そのうちで八百屋さんもやっていると。
その事業のうちのひとつとして八百屋さん。

で、このAとBが競争してるんですね、ひとつの町で。

で、Bの巨大な資本がある外資系のお店がですね、
Aの店を潰すために、一定期間、野菜をもう1円とかで売ったりするんですよ。

そうするとお客さん全員Bに流れるじゃないですか。

するとAの八百屋さん潰れますよね。

で、潰れた瞬間にBの巨大な資本の八百屋さんがですね、
競合がいなくなった瞬間に、値段を張って釣り上げて、
でもお客さんもそれを買うしかない。

こういった、Aを潰すためにBがやっている行為っていうのは、
『ダンピング』って言うんですけど、
これはまあ独占禁止法っていうので禁止されているんですね。

まあ、違法なんですよ。
公正取引委員会みたいなが入って、「それダメですよ」って言うんですね。

これ『ダンピング』なんですよ。

で、これをですね、
特にイラストレーターさんが本当に間違って使っているんですけど、
僕のタイムラインにも流れてきたんですね。

イラストレーターさんの怒りのブログみたいなのが。
これはもう定期的にあるんですけど。

まあ言ってしまったら、
「安く引き受けるイラストレーターがいるせいで、市場が壊れるじゃないか」と。
言い換えると、「私が食いっぱぐれるじゃないか」と。

「お前がそのA1枚引き受けるのに100円で引き受けてしまうと、
A1枚5000円で引き受けてしまう私に、仕事が来なくなるじゃないか。
ダンピングだ!ダンピングだ!」っていうのを言うんですけれども。

もう一度整理するとですね、
『ダンピング』というのは不当な廉売である、ということですね。

このことを整理してもらった上で話を続けたいと思います。

時代に合わせてビジネスモデルが変わった

整理しますね。

『ダンピング』っていうのは、日本語だと不当廉売、廉売店に安く販売することですね。
いたずらに安く販売して、競合を叩き潰す行為であると。

まあざっくりそんな認識で、あんまり間違いないと思います。
『ダンピング』とはそういうものであると。

じゃあ例えばですね、
アーティストさんがCDを売っているじゃないですか、
音源を売って生活されているじゃないですか。

曲を聴いてもらうのにお金を取っていると。

じゃあ例えば、米津玄師さんとかきゃりーぱみゅぱみゅちゃんが
YouTubeでミュージックビデオを全然無料公開している。

じゃああれダンピングかって言うと、そうじゃなくて。
あれは、不当に音を安く売って、競合を潰しているかというとそうではなくてですね、

米津玄師さんとかきゃりーちゃんがやっているのは何かというと、
時代に合わせてビジネスモデルが変わったということで。

マネタイズ、つまり収益化の方法がCD以外にもたくさんできたから、
音源自体はただで提供して、別の方法で回収するになったっていうだけですね。

それだけなんですよ。

あれに対して「ダンピングだ」って言う人いないじゃないですか。

昔だったらね、YouTubeでCDっていうか音源っていうかさ、
一番だけ流して、続きはCDを買ってください、みたいな。
全部聴きたかったらCDを買ってくださいっていう手法だったんですけども。

もう収益化の方法が他にもたくさんできたから、
もう音源は全部聴いてください、と。
YouTubeで無料で聞いてください。
その代わりにライブに足を運んでください、グッズを売りますんで、とか。

色々その他の方法ができたから、
音源自体は無料で提供しまーすっていう時代になりましたよね。

あれダンピングじゃないんですよ。

もう一度言うと、時代に合わせてビジネスモデルが変わったっていうだけです。

で、イラストレーターさんがですね、「これダンピングだ」って。
「こんなに安く引き受けるせいで私が絵が売れない」みたいなこと言っているんですけど。

僕がね『えんとつ町のプペル』っていう本を無料公開した時も、まあそんな声が結構あったんですけどね。

そういう声が、ブログとかに、もうほんとに声明のように書かれていたんですけど。

今回もそのブログかnoteだったかな?
まあそれで流れてきたんですけど、「ダンピングよくない!」みたいな。

これもですね、そのイラストレーターさんに言うと、
昔だったらですね自分の文章を発信しようと思ったら、
文章を書いて、印刷代払って、紙に印刷して、
さらに配ってもらうお金を払って、配ってもらうしかなかったと。

つまり、お金を払って届けるしかなかったんですけど、
インターネットかそれを無料にしたわけじゃないですか。

じゃあインターネットはどこで回収しているかと言うと、
広告とか貼って、広告モデルで回収していると。

じゃあ例えば、そのイラストレーターさんにちょっと手厳しいことを言うとですね、
その無料アウトっていうんだったら、あんた文章書くのにお金払ってるかっていう。

文書を届けるのに、今あんたこのブログを世間皆様に届けることに、
もっというとツイッターで皆様に届けることに、Twitter社にお金を払ったか。
ブログの会社にお金払ったかって言ったら払ってないんですね。

無料でやっちゃってるじゃないですかで。

じゃあこれ、そのインターネットの会社やツイッターがダンピングかって言うと
そうじゃないんですよ。

インターネットの会社は、そのブログを運営している会社は、
広告モデルでちゃんと回収できているから、
もうそのプラットフォームは無料で使ってもらっていいですよ、と。
無料であなたもちょっと書いて届けることできますよってやってる訳じゃないですか。

ここ履き違えちゃ駄目ですね。

実際に昔、ブログを批判している作家さんがいたんですよ。
ブログというものが世に出てきた時にですね、
「文章を無料で書いたら私たちが食いっぱぐれるじゃないか、
文章を打っている私たちが食いっぱぐれるじゃないか、ダンピングだ」
って言ってた人が実際にいたんですよ。

今思うと本当に不思議な批判でしょ?

ブログを書いたら批判されるんだよ。
批判してたんだよ、昔の作家さんは。「ダンピングだ」って。

じゃないですよね、今。
ブログというものは、なんか作家さんを潰してやるとか
そう思って書いているはずじゃないと思うんですね。

単純にビジネスモデルが変わったという、それだけの話ですね。

まとめ

話をまとめますね。

もう『ダンピング』という言葉を言い訳にしちゃダメで、結論。

そのほとんどはですね、時代に合わせてビジネスモデルが変わったってことなんで。

収益化の方法がそれ以外にもたくさんできたから、
もうここは無料にしましょうねっていうのは色んなところで行われてる。

LINEの電話はだってそうじゃないですか。
無料じゃないですか。
あれ別に電話代払ってないですよね。

みたいな感じで、
時代に合わせてビジネスモデルが変わっていることに対して、
それをうまいことを言い訳にしたい気持ちはわかる。

自分の絵が売れない理由をどこかに・・作りたいっていうのはわかるんだけど。

むちゃくちゃ手厳しいことを言うと、
例えばですね、イラストレーターさんが100円で引き受けるようになりましたと。

色んなサイトを使って、イラスト1番描くのに100円で引き受ける人がいたとしても、
別に、1枚絵を描くのに、1000万円で引き受ける人もいるから。

実力さえあれば、別にそれ可能だからね。
そういう人がいる以上は、結局イラスト安く引き受けるっていうのは
ダンピングでもなんでもねーっていうことです。

で、「言い訳にするな」。

もう結論それでしかないですね。

で、ダンピングの意味を吐き違うなっていうのと、
もうひとつ厳しいことを言うとですね。

ここエンタメ業界だぞ。

1万人が入って、1万人が首突っ込んで、1人が生き抜けるぐらいの。
そういうまあ全員が食えるわけじゃないという、この修羅の世界だから。

そこに首突っ込んどいて、私たちが食いっぱぐれるじゃないかっていうのは、
そんなあの・・ぬるいこと言ってんじゃないっていう。

ほとんど食えない世界に首突っ込んだんだよっていう、そういうとこですね。

で、これが食えない人の数が多いから、
どうしたって「ダンピングだー」っていう声が
クリエイターさんの中でシェアされてしまうんですけど、
同じように食えてないクリエイターさんとかが、
「そうだそうだそうだ!そのせいで私たちも食えないんだ」っていうんだけど。

そんなことをしてる場合じゃないっていう。

そんなことに時間使うんだったら、
とっとと自分の実力を上げて、
とっととビジネスの勉強した方がいい。

あと、時代を読み取る勉強に時間を割いた方ががいいと思います。

どうしてもね、弱い人の声が多いものですから、
そっちが大きくなってしまうんですけれども。

これは僕は基本的にはアンフェアだと思っていて、
実力でのし上がっている人が叩かれてしまうっていう、
勝つと叩かれてしまうっていうのは
基本的にはアンフェアだと思っていて。

じゃあ米津玄師さんとかきゃりーちゃんとかが良くないのかっていうと、
よくなくないじゃないですか。

なので、2019年なんだから
もういい加減そういうのはやめませんかっていうお話です。

イラストレーターさんが本当に多いんだけど、
そういうの本当にやめませんか。

ぜひ今日の放送はですね、
シェアしていただけると嬉しいなあって。

もうこんなことしてたら、
どんどんどんどん全員のレベルが下がっていくから。

そんなことは日本にとってもあまりよろしくないことなので。

一応ちゃんとこの辺は勉強して、
それはダンピングじゃないよっていうことは、
その認識は広まるといいなと思っています。

今朝はですね。「『ダンピング』の意味を履き違えるな」というテーマで
お話させていただきました。

それでは素敵な一日をお過ごしください。
西野亮廣でした。

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