負けるプロジェクトの共通点 by キンコン西野
このnoteは2020年6月27日のvoicyの音源、『西野亮廣ブログ』の内容をもとに作成したものです。
voicyの提供:踊るお坊さん コバケンさん
どうも。キングコングの西野亮廣です。
お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、国内最大のオンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』の運営をしたりしております。
今日は、
「負けるプロジェクトの共通点」
というテーマでお話しします。
僕は、仕事合間に時々YouTubeの生配信をしています。
「チャンネル登録者数を増やす!」とか「再生回数を~」といった大それた目的はなく、お客さんと雑談することが目的で、しいて言えば、「お客さんがどんなことを考えているのか?が知れたらいいな…」ぐらい。
視聴者さんとの生のやりとりがメインで、広告収入も要らないので(吉本はスネるけど!)、アーカイブに残すこともありません。
突然始めて、しれっと終わっています(笑)
昨日も生配信をさせてもらって、そこで視聴者さんとやりとりさせていただきました。
いろんな話が聞けて、楽しかったです。
その中で「オンラインサロン」の話になりました。
「西野が2000文字〜3000文字の記事を毎日書いている」という話に。
これを受けて、「毎日2000文字〜3000文字の記事を書けるのは、すげえ。できて、せいぜい1日」というコメントをいただいたのですが、おそらく、このコメントをくださった方はサロンメンバーさんじゃないと思います。
なので、「サロンに投稿している2000〜3000文字」を、「ただ文字数が埋まっているだけの2000〜3000文字」だと思われている。
「文字数が埋まっているだけの2000〜3000文字」なら誰でも書けるんです。
極端な話、「あ」を2000回押せば良いだけなので。
サロンに投稿する2000〜3000文字は、サロンの中にいる中学生から、お爺ちゃんお婆ちゃん…はたまた数万人の経営者さん、上場企業の社長さん達を唸らせるものでないといけないんですね。
有料記事なので。
「それでも1日ぐらいなら書けるかも…」という声もあったのですが、無理なんです。
これほど「絶対」という言葉が似合うことは他に無いぐらい、絶対に無理です。
それ、どれぐらい見当ハズレなことを言っているかというと、「年に一回ぐらいは、100メートルを9秒台で走れるかも」みたいなコトを言っちゃってます。
「一年間、パワーをためたら、一回ぐらいはイケる」という話じゃないじゃないですか?
サロンに投稿している記事というのは、世界の学者さんがどこかで発表した論文や、ヒットしているビジネス書から引用したものではなくて、僕自身が、まだ世界の誰もやったことがない挑戦をして、その挑戦を始めるまでの仮説や、挑戦したことによって割り出された答えなどを、綴っているので、「たくさん読書していたら書ける」とか「文章力があれば書ける」といった類のものじゃないんです。
このラジオをお聴きの数万人の方が束になっても、僕のサロンの一記事も書けないです。
それを毎日書いています。
これがプロです。
自覚症状が無い能力
冒頭から、かなり鼻につく話をさせていただきました。
どうか、無礼をお許しください。
本題は、ここからです。
「数万人が束になっても、西野が書く一記事すら書けない」って、想像がつかないですよね?
だけど、数万人とウサインボルトが「よ〜い、ドン!」で競争したら、ウサインボルトが優勝することは想像できる。
もしくは、数万人が協力して、スポーツ化学の知恵を出し合って、名トレーナーをつけて、一人の代表選手を選出して、その人と、ウサインボルトが「「よ〜い、ドン!」で走ったら……それでも、やっぱりウサインボルトが勝つことは容易に想像できる。
なぜか?
スポーツの場合は、能力が数値化されているからです。
だから、皆も、諦めがつくんですね。
スポーツで圧倒的な数字を出すためには日々の筋トレが必要なことを全員が認識している。
でも、「アイデアだったら、万が一、イケるんじゃないか?」とか、「文章だったら、私たちでも書けるんじゃないか?」とか思ってしまう。
ここから割り出される答えは、「数値化されない能力は、多くの場合、自覚症状がない」ということですね。
ただ、数値化されなくても、判断できる能力は、いくつかあります。
「歌唱力」や「画力」などが、それにあたります。
このへんの能力は、周りと比較して自分が今、どれぐらいの位置にいるか認識ができる。
しかし、「アイデア力」に関しては、「私でも、万が一あるんじゃないか?」と考えてしまう。
でも、残念ながら、アイデアって、「ゼロ→1」の作業じゃないんです。
「自分が持っている素材・情報の掛け合わせ作業(編集作業)」なので、そもそも素材がないとアイデアは出せないんですね。
めちゃくちゃ単純なところでいうと……今から7年ぐらい前に『えんとつ町のプペル』の絵本の制作をスタートさせたんですけど、あの作品は、クラウドソーシングでスタッフさんを集めて、その予算をクラウドファンディングで集めて作りました。
『クラウドソーシング×クラウドファンディング』というアイデアです。
ただ、そもそも(7年前の時点で)「クラウドソーシングって何?」という人には、このアイデアは出せないわけじゃないですか?
「数字を知らない人には掛け算はできない」という話です。
掛け算をする為には、まずは「数字」というものを知らなきゃいけない。
でも、多くの人がそもそも「数字」を1〜3ぐらいまでしか知らない。
なので、どれだけ掛け算を頑張ったところで、せいぜい「9」ぐらいの答えしか出せない。
アイデアは算数
アイデアは算数なんです。
結びつける作業なので、素材がなきゃいけないんです。
ときどき、1億円プレイヤーの広告マンがいますよね。
「ひらめきが凄い人」みたいに捉えがちですが、「ひらめく為の素材を大量に持っている人」なんです。
つまり、「素材を持っているか、否か」なので、素人さんには1億円プレイヤーの技は再現不可能なんです。
プロジェクトを殺してしまう人というのは、この自覚がない。
「アイデアが算数である」という認識がない。
だから、「広告は、アイデア(ひらめき)だから、俺でもイケるんじゃないか?」と思ってしまう。
でも、考えてみてください。
貴方に広告力があったら、貴方のフォロワーは数十万人になっているんです。
少なからず、フォロワーを増やそうと思ったことはあるでしょ?
でも、増やせていない。
つまり、商品を売る前に、自分すら売れていないんです。
「自分のポテンシャルはこれぐらいだから、だったら、これをやらせて、これを掛け合わせれば、これぐらいになる」という計算式が描けていない。
僕は毎日すっごい数のプレゼンを受けますし、年間に、たくさんのプロジェクトを見させてもらっているのですが、成功するプロジェクトは様々ですが、失敗するプロジェクトに共通していることがあります。
それは
「ビジュアルデザインと広告を素人がやっている」
ということです。
気持ちはメチャクチャ分かるんです。
「予算が限られているから、自分達でできることは自分達でやろう」なんです。
でも、違うんです。
多くの方が100メートルを9秒で走れないように、多くの方には「勝つ広告」ができないんです。「勝つデザイン」もできないんです。
優秀なデザイナーは「なんかオシャレ」とか「なんか可愛い」で仕事をやっていないんです。
どっちかと言うと「理系」で、数学者みたいな仕事をしています。
分かりやすいところでいくと、(デザイナーではないですが)岡本太郎もそうです。
彼の仕事は「キャンバスにペンキをビシャー!芸術だー!」じゃないんです。
「岡本太郎名言集」じゃなくて、彼自身が綴った本を読まれた方はご存知だとは思いますが、岡本太郎って、メチャクチャ理屈っぽいんです。
「こうで、こうで、こうなるから、ここに罠を仕掛けておけば、こういう流れが生まれて…」みたいに考える人です。
その思考量が変態的なんです。
1つの作品を生むのに、20ページぐらいの計算式を描いて臨む人です。
デザインと広告というのは、要するに「看板」なんで、ここを素人が見よう見まねでやってしまうと、プロジェクトに10億円かけようが、全部パーです。
「いいデザイナー」と「いい広告マン」は、少々コストがかかっても絶対に捕まえておいた方がいいです。
お互い頑張りましょう。
というわけで、
「負けるプロジェクトの共通点」
というテーマでお話しさせていただきました。
それでは、素敵な1日をお過ごしください。西野亮廣でした。
※オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』では、毎日、議論&実験&作品制作&Webサービスの開発&美術館建設を進めています。
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