第6回詩歌トライアスロン選外佳作


こんばんは、成瀬遠足です。

先日の第6回詩歌トライアスロンにおいて、拙作「私はヤマアラシだからきみを抱きしめることはできないのですか/おなかのところだけならきみに触れてもいいのですか/心臓だけならきみに触れてもいいのですか」を、選外佳作に選んでいただきました。選外佳作の発表は任意ということでしたので、以下に記載いたします。


  

 私はヤマアラシだからきみを抱きしめることはできないのですか

 おなかのところだけならきみに触れてもいいのですか

 心臓だけならきみに触れてもいいのですか


どうしてその手がよごれることを知っていてこのたましいに触れたのですか


  ふたつのひかりが猫の目のようになにかを訴えている

はなびらは生まれては落ちはなびらは世界にひとたびだけの瞬間

引き延ばせばよいというものではない金属のような、降る、これは水

抱きしめてみてこぼれたらどうしよう、それは賭けではないのですよね

眠ることで平面を取り戻しなさい
我々は二次元から生まれたのですか


  死ぬまでの内緒話をとりこぼさずにすべて

サクラメント建設中の生活は夜にはバーチャル・カレーの匂い

波のように打ちつけて生活はうっとうしく
柔軟剤を買い足すこと等

体力が続く限りの戦闘を眠る前には時計を捨てて


  鬼はどこで暮らしたらいい

慎重になれればそれで我々は他の星でも暮らしてゆける

宝石の海に浮かんで欠乏は滅亡の理由になりうるか



生物の音を聴く
傷つけるそのときの音だけが(痛みだけが)
反響している

もっとも微細な砂は血
 管を 管を かゆさだけが
土の塊のような人間の中に 蠢く 蠢く
しびれ

土の上を鏡のようにすべってゆく川

チョコレイトを発明した

とても歪である

(正解を用意していなかった 複雑だ)

1. 温度を実験に利用する
2. もめごとは地球の外に排出する
3. 砂を集めてもう一度つくり直す

根気が必要なことだ
汗も欠かせない

テーブルにとても大きなカニがあり
それはもう死んでいる
食べられることなく肉である
強いて言えばビタミンやミネラルなど
短詩のようだ
薄くスライスされ
黄金のタモで
漁船から海へかえされる
土になるだろう 土に
食らいついても食らいついても結局
土になるだろう
とわかる
(消えろ)
持ち運べるから便利
たいていのものは
エネルギーの移動によって
ないている
生物の音が聴こえるので傷ついている
もう戻れないと思って
漁船は前にしか進めないのか
読めない文字は文字ではないのか
サッシに手をかけている猫
カニに興味があったが
数々の虫と不安を分け合っているつもりであった
火が存在するということは
およそ理解できないこと
ラベルを燃やし尽くしてしまった
ここでは
もうない
ペットボトルのへこみなどがある
緊張している
ごみはすべて声に変わってゆく

すべては枕にはね返り戻ってゆく
ラグビーボールじみた方向へ
見当をつけないことが安全である

建設中の波打ち際は
もう誰の関心も寄せられていなかった
木々は黙っていた その間ずっと
知っていたからではない
痛みを感じていただけだった

食料を確保できないので
もう一度海へ行った
何千ものそれがそこにあった
花のようだ
カレーの匂いがしたので
夜だと分かった
ウツボは驚いている
音が聴こえたからだった
痛い
痛い

咳き込めば収束する宇宙
なのに

気づかない

              待っていたのに

散々だった

汚いかもしれないのに

散々だった



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?