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【社説】ガーシ―から考える除名について

 3月15日、政治家女子48党(元NHK党)のガーシ―元議員に対して参議院本会議で憲政上3例目となる除名が決まった。即刻ガーシ―議員の議席に付けられていた名札が外されたことは印象に残った。

 さて、ガーシ―議員は参議院議員の三分の二の賛成によって除名となったのだが、ここで注目すべきは除名反対の人数だ。
 なんと除名に反対したのは同党の浜田聡政調会長のみだったのだ。

 まるで国際連盟での満州決議のようだがここで注目しなくてはならないのは反対が1人だったということだ。どういうことかと言うと、ほかの議員、政党が誰も反対しなかったということだ。
 当たり前なことを言っているように見えるが、これは非常に重要なことだ。なぜなら日本共産党も反対しなかったということだからだ。

 なぜここで日本共産党が出てくるのかと過去に共産党所属議員が除名を受けたことがあるからだ。
 まだ日本がGHQ占領下だった1951年3月29日、当時衆議院議員だった川上貫一は除名を受けた。理由は当時の吉田内閣が進めていたサンフランシスコ講和条約で自由主義国のみと講和を結ぶ単独講和論に対して世界各国との全面講和を主張する演説中に革命を称賛し、議会政治を否認する発言をしたとしたとして議場での陳謝と言う懲罰が決まった。
 それに対して川上議員は陳謝を拒否して除名された。除名されれば、議員の身分を失うが川上議員は除名されたのみではなく占領政策に反対したとして逮捕起訴されレットパージ(公職追放)を受けた。

 その後、レットパージが解けたことで出馬することが可能になり川上議員は再び衆議院に戻って来た。
 実はガーシ―議員以前の除名はこの共産党の除名になる。

 この共産党議員に対する除名はまさに言論弾圧と言うほかないが、そのような歴史がある中で今回共産党議員は全員出席したうえで賛成票を投じる決断をした。
 過去に除名を受けた共産党が今回賛成したことはとても驚くべきことだ。

 さて、ほかの例も見てみると国会ではガーシ―を含めて6人が除名処分を受けている。

 古い順に一覧するとこうなる。
・1893年12月13日 星淳 衆議院:議長解任動議可決後も議長に固執したため
・1938年3月23日 西尾末広 衆議院:問題発言により
・1940年3月7日 斎藤隆夫 衆議院:反軍演説により
・1950年4月7日 小川友三 参議院:反対演説をしながら賛成票を入れたため
・1951年3月29日 川上貫一 衆議院:講和反対を主張したため
・2023年3月15日 ガーシ― 参議院:長期の議会不出席により

 上三つは帝国議会においてで下三つが現国会においてだ。

 さて、個別に理由を見てみると星淳はその通りだが、西尾末広は国家総動員法の審議中に近衛文麿首相に「ヒトラーのごとく、ムッソリーニのごとく、あるいはスターリンのごとく、確信に満ちた指導者たれ」という言葉を賛成の立場から述べてスターリンの部分が共産主義者を称賛しているとして問題となり除名となった。

 斎藤隆夫はいわゆる反軍演説により除名となった。これは日中戦争の長期化に関して軍にどのような終着を迎えるのかや世界の平和のためにどうするのかなどの反軍的な演説内容であった。1940年代と言う時代もあり軍の圧力から除名が決まった。まさに言論弾圧であった。

 最後に小川友三は書いてある通り反対演説を行っておりながら賛成演説を行ったことが除名になった。小川は常々素行が悪くそれが響いたと思われる。

 さて、ここから見てきたとおり除名が言論弾圧に使われた例はいくらでもある。さらに地方議会に目を向けてみればいわゆる同和利権について追及した議員が部落解放同盟により差別発言をしたとして除名になったことがある(
八尾市議除名事件)。

 このように除名は非常に重くその決断は慎重でなくてはならない。

 そもそも民主主義とは選んだ以上はその人物の行動について国民が責任を負うものであり、ガーシ―がどのような人物であろうともそれを国民が選んだ以上は尊重すべきである。

 そもそも議会において一人くらい出席しない議員がいたとしても議事運営には何の支障もきたさない。このような状況下で除名が果たして正しかったのかどうかには疑問が残る。

 だが、除名処分はもう決定した。なのであとは時が過ぎなくては分からない。国民の馬鹿な投票による愚衆政治を議会政治によって止めた素晴らしい出来事だったか、それとも議会にいなくてもいいという少数の意見を無視したものだったか、それは時が過ぎなければ分からない。

 文責:丸山紡

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