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幻想交響曲×悲愴交響曲=シベリウスの交響曲第1番

今日はアンサンブルSAKURA第40回定期演奏会のメインとなる、シベリウスの交響曲第1番の2本目の記事です。1本目はこちらからどうぞ。



シベリウスが交響曲第1番を作曲するにあたって大きな影響を与えた作品が2つあり、今日はそれらの作品との関係について書いてみました。

ベルリオーズ「幻想交響曲」


シベリウスは1898年3月に、ドイツのベルリンでベルリオーズの幻想交響曲を聴き大いに感銘を受け、33歳にして初めて交響曲の作曲に着手しました。

↑ベルリオーズ 幻想交響曲

交響曲第1番を聴いていると、ハープが印象的に用いられている箇所がたくさん有り、4楽章には「幻想曲風に」と記されています。楽章ごとに標題を付けた風変わりなベルリオーズの作品から、それとなく影響を受けていることがうかがえます。

実は、シベリウスは交響曲第1番の前にも、フィンランドの伝承を元に大規模なオーケストラ作品を作曲しています。5つの楽章からなるこの作品は「クルレヴォ交響曲」とも呼ばれ、クルレヴォの青春、クルレヴォとその妹、クルレヴォの出征、クルレヴォの死といった形でそれぞれの楽章に標題が付けられた、ソプラノとバリトンの独唱と男性の合唱も加わる大規模な作品です。


しかし、己に批判的であったシベリウスは、従来の作曲家達によって試みられてきた標題つきの音楽ではなく、純粋な器楽による独自の音楽を作りたい、いや作らねばならないと考えました。数回の演奏機会の後に、シベリウスはクルレヴォを演奏禁止とし、生前はこの作品が演奏されることはありませんでした。

シベリウスが独自の音楽を求めて出来上がったのが交響曲第1番ですが、とある作品の影響を色濃く受けているようです。

チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」


シベリウスの交響曲第1番を演奏していると、アンサンブルSAKURAで最近取り組んだチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」を思い出すことがあります。

悲愴を思い出すのは、第1楽章の最後5小節。チェロ、ファゴットが「ミー♯ファーソー」と長い音を奏でますが、これは悲愴の冒頭のファゴットソロの音そのものです。

↑チャイコフスキー 交響曲第6番

「苦悩から歓喜へ」を否定した作品のインパクトは大きかった


チャイコフスキーが悲愴を初演したのは1893年。ベートヴェン以来の苦悩から歓喜へ至るという音楽の流れに対し、それとは逆の、苦悩ののちに一筋の希望を見出すも、それは長くは続かず、死という名の救済が待ち受けている、というのがチャイコフスキーの悲愴という作品です。

非常にドラマティックなこの作品は初演のわずか9日後に作曲者が急死するというセンセーショナルなニュースとともに、当時の欧州音楽界に大きな影響を与えました。

シベリウスもその影響を受けた一人で、彼の交響曲第1番(完成は1899年)は劇的な感情の表現が随所で観測されます。特に第4楽章の曲の流れなどは悲愴そのもので、ひとしきり感情を爆発させた後(これが大変美しい旋律なのです)、曲はハッピーエンドではなく、金管楽器の強奏によって雰囲気は一気に変わり、ピツィカートで暗く終わってしまいます。

「苦悩から歓喜へ」という定番の流れを崩し暗く終わるこの曲ですが、すでにフィンランディアやレイミンカイネン、カレワラなどの大作を書き上げ、フィンランドを代表する作曲家として認められていたシベリウスの人気が揺らぐことはありませんでした。交響詩「森の精」「アテネ人の歌」とともに初演されたこの作品はフィンランドの人々の心をとらえます。さらには、ヘルシンキフィルのパリ万博における演奏会のメインプログラムとして採用されることになり、パリへの道すがらストックホルムをはじめとする都市での評判も上々。シベリウスの出世作となりました。

影響を受けた部分もいいけど、、、

確かに、これまで書いてきた幻想交響曲や悲愴交響曲の影響を大きく受けたのは間違いないのですが、シベリウスはただ単にインスピレーションを受けた作品の姿を忠実になぞるだけではなく、独自の音楽を作ろうと模索しているような印象を受けます。

交響曲第1番でシベリウスの個性が光るところと言えば、やはり第2楽章でしょう。彼が生きた20世紀のヨーロッパではR.シュトラウスやマーラーといった作曲家が、手の込んだ大規模で複雑な音楽を作る中、これほど自然体で美しい旋律、音を書く人物は少数派です。次回のnoteで、そんな交響曲第1番の聴き所をまとめてみたいと思いますので、演奏会の予習にご用立ていただければと思います。

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アンサンブルSAKURA第40回定期演奏会
日時:2023/11/19(日)12:30開場13:00開演

⚠️開演時間が1時間前倒しとなってます⚠️

会場:浅草公会堂
指揮:高石治
入場料:1,000円(当日券あります)

曲目:
グリーグ/ペールギュント 抜粋
シベリウス/フィンランディア
シベリウス/交響曲第1番

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