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詩) 春

     春

まだ冷たい海水に片掌を浸すと
陽光(ひかり)は水面をすべるように私の許へと集う

彼女の頭は私の肩の上
眠りの重さが静かに加わってゆく

どこまでも単純な水平線は乱されることなく
それ故に、保守を旨とする生活に無言の誘惑を送る

個なる者は孤なる地平にのみ息衝くも
それ故に無限の慈しみをもって身を寄せ合う

彼女の腕は己を抱き締め
交わることのない想いが私の掌を伝わって水へと溶け出す

陽光は再び水面をすべり行き
私と彼女の思いを彼方へと運び去ってゆく

生は既に私たちを離れ
この砂の上で、この身は朽ち果てるであろう
祈りのみをこの地に満たしたまま・・・

          (1992.3.2)

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