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駅 ここで降りる するするとホームに到着する電車の音 そこから降りてくる人々のラン…
マリア 夏の訪れを予感させる雲と海風が あなたが握りつぶそうとしている思い出を再び…
佳日の散歩 冷たい風が木々の葉を大きく揺らし 眩しく輝く陽射しをあちこちに乱反射さ…
初夏 生(せい)のなまなましい手触りは薄れているのに その重量だけが僕を包んでいるの…
稜線 不器用であるという、たったそれだけで 祈りさえ許さぬ嘲笑の視線が交錯する中か…
早春 疲労の中にめり込んでゆく 細い枝々が ゆうらり、と また、ゆうらり、と交叉す…
夕餉の支度前 これまでに何を暮らしてきたか――― そんなことを想いながら たっぷりクリームの混じった春の陽の差し込む居間で ガラス窓越しに見える雲を独り眺めている いちにち、いちにち、というものは 鮮やかになったり 色褪せ、薄れたり 常に移ろい変化していくもの 私には幸福というものなど必要ではない ましてや、いつもいつもはしゃいでいたら いつもいつもはしゃいでいなければならなくなる ただ、時おり喜べるような出来事があったらいい 戸棚の中にあるコップやお皿は眠って
名宛人 その昼の波のざわめきは どろりとして まどろむような まるでうわ言のような響…
春 生温かい南風にふくらんでゆく 幾重にも畳まれた花びらが目を覚まし 抑圧された患…
Works 育て上げた彼女を見つめながら 生温かい陽光の はるかな遠さ 空しさの 肌触り …
暮らし からからと笑う――― その自分の顔やら しゃれた骨董の家具やらを映す つるつ…
舵 現在を詠うことを 僕は恐れていたのかもしれない 刻々と移動する客船の中を世界と呼…
悲歌 テトラポッドの間から打ち寄せる波 お前の苦悶の心臓 じっと耐え、 慄(おのの)く…
徒歩 とりわけて晴れの日が少ない、というわけではない とりわけて心躍る時が少ない、というわけではない * 朝露に濡れた板道を森へ森へと歩いて 私は自らの生命を分け与えることを想っている 寂とした、凛とした、朝の影の色、その濃さ 平坦な草原から谷間の奥へと続く小径(こみち) ああ、蜜を求めて群がる蜂たちは どこからともなく季節を呼び寄せてくる かつて、生命の価値を明度によってのみ測り 利益や効率のみを知恵に追求させていた――― そして、その挙