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『たてる こうじのえほん』

オノマトペとフォントの工夫で臨場感あふれる建設現場を疑似体験。

【あらすじ】くいを打って、コンクリートを流して、鉄骨を組みたてて、みるみる建物ができあがっていきます。大好きなあの建物。

穴を掘るところからはじまり、2行目で杭を打つ。いきなり専門的である。子ども向け絵本だという油断をしていた。大きな資材を運び下ろすときには安全を確認する人がいる。長尺の木を切る時には、端でもう1人がサポート。丸ノコを使うときは、耳当て付きヘルメットに安全保護メガネのコスチューム。電気工事屋さんや塗装屋さんはつなぎを着ている。人々の動きの様子や、ユニフォームの違いで作業工程の違いに気づく。

工事現場ではいろいろな聞こえる。地面を切る音、掘る音、埋める音、流し込む音、ぶつかる音、擦れる音。さまざまな種類の打音が文字として、ユニークな書体で表現されている。フォントが尖っていたり、丸くなっていたり、大きい文字、小さい文字、なみなみなど、音がリアルに見えてくる。図らずも声に出して読んでいた。

こうしてまた音探りのうずうず感が沸き起こり、向かった場所は重機ショーの観覧席、編集者と共にコンクリート研究の土木科教授室、ヘルメット装備で建築中の巨大な図書館見学の足場にも立っていました。 福音館書店ホームページ 今月の新刊エッセイ|新谷祥子さん『こわす』『たてる』より

絵本を訳した新谷祥子さんは打楽器奏者。この翻訳のために工事現場に何度も足を運んで、にぎやかな音を聞き取りされました。なるほど。音痴な私でもわかる、踊りたくなるような言葉のリズムは、言葉の翻訳だけではなかったから。

工事現場の音。聞こえていたけど、聞いていなかった。新しい楽しみ方を見つけてしまった。

どの音が好きだろうか?

たてる こうじのえほん|2019(2014)|サリー・サットン さく|ブライアン・ラブロック え|あらや しょうこ やく|福音館書店|

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