言語化するって本当に大事なのか
言葉にできるは武器になるけど、なんとなく言葉に表しきれないモヤモヤや熱い思いが有ると思う。
言葉にする前に動いちゃう的な。 一目惚れみたいな。
「言葉にできるは武器になる」
「最も伝わる言葉を選び抜く コピーライターの思考法」
「伝え方が9割」
「伝え方の教科書」
数え切れないほどの伝え方をテーマにした本が溢れている世の中で、ふと「なんとなく」とか「言葉にできない」という気持ちも大事にしていいんじゃないかなと、ある日思った。
普段仕事をしていると、どれだけ理路整然と相手に伝えるかを意識する。
特に「なんとなく」って単語は使わないようにしている。
どんな小さな選択にも何らかの理由があって。それは、好き嫌いかもしれないし、今までそうだったから既存のルールに乗っかったのかもしれないし、誰かに褒めてもらいたかったり、認めてもらいたかったりするからという可能性もある。
人に動いてもらうには、理由を一緒につける事が大事だと、名著「影響力の武器」にも書いてあった。
相手に正しく伝える力が間違いなく自分の武器になることは、間違いなく事実だ。
例えば、新しい企画を上司や得意先に持ち込む時は、自分のアイデアを誤解なく純度100%に近い状態で、相手に届けられる方がいい。
「なんとなく感覚なんすけど、いけそうな気がするんです!」
とか言ったら普通は通らない。
でも、今自分が伝えたいのはそういうことではなくて。
後から振り返って、よくよくその時の感情を因数分解すれば文字列に起こせるけど、なんとなく曖昧なにしておきたかったり、文字に起こしてしまうと逆に冷めてしまうようなこと。
例えば、去年話題になった映画「Baby Driver」の冒頭の5分間オープニングシーンは、bellbottomsのギターリフが流れた瞬間、自分自身がアンプになったみたいに脳髄からビビビッとした感覚を覚えた。(見てない人は是非見てみてください。冒頭のシーンはYoutubeでも見れます)
この”感覚”は説明しようと思えば、多分、できる。
音楽と映像のシンクロ率が高いとか、映画なのにMVみたいでカッコイイとか、冒頭から一気に世界観に引き込まれる演出が素敵とか、まるでライブ会場に足を運んだみたいだとか。
感想が若干幼稚で恥ずかしいが、文章にしてしまうとこの体たらくだ。
「脳髄にエレキギターのシールドを直接挿して、開放弦を鳴らされたみたいにかっこよかった」
この一文だけで良いときもある気がする。
わざわざ理路整然と言葉を選んでしまうと、なんだか味気なくなってしまう。
味気なくなるのは、自分の語彙力が足りないせいかもしれない。
この冒頭の5分間を説明するのにもっと適切でわかりやすい言葉や例えがあるかもしれない。
だけど、上手く説明できない自分の心の奥底からでてくる、わざわざ言葉にするべきでない、もしくは今の段階ではできないことは、できないと素直に受け止めてしまうのも良いんじゃないか。
説明してしまうにはおこがましい本や映画に出会うこともあるだろう。
そういうときは「言葉にできないくらい良かったからとにかく読んで欲しい」って言っても良いんじゃないか。
あと、敢えて言葉にしないほうがいいな、と思うのは、好きな子から「どこが好き?」って聞かれたときだと思う。
これも言葉にしようと思えばできると思う。
一緒にいて楽しいとか、自然体でいられるとか、いつも辛い時に支えてくれるとか、顔が可愛いでも声が好きでも、ファッションの趣味が合うでも、なんでもいい。好きな所10個挙げてと言われれば、挙げられるだろう。
多分言わないと思うけど、ロジカルに分析して言うことだってできるだろう。
でも、好きな理由こそ言葉で説明してしまったら陳腐なものに成り下がってしまう気がする。
言葉に出来ないからこそ、危うさ、曖昧さ、見えない繋がりみたいなものが有るからこそ、好きなんだと思う。
誰かに伝える時は思う存分、美辞麗句を並べて好きだと訴えてほしいけど、その人の前では別に良いんじゃないかな。
世の中の9割くらいのことは、言語化出来たほうが、きっと良い。
自分の考えていることをそのまま相手の脳みそに感覚とともにインストールできる技術が生まれない限り、言葉は強い。
ただ、たまには「なんとなく」とか「言葉にできない」って言葉を使って、ただ「好き」とか「カッコイイ」とかって表現だけで包み込んでしまうのも悪くない。
ちなみに、僕がこんな普段は絶対書かないような文章を書く理由は、酒に酔っているからに他ならないのだけど。
「酒に酔っている」という言葉も「なんとなく」と同じくらい、便利な言葉である。
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