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自選短歌 2019年1月~3月

 うたの日、あみもの、その他投稿して採用していただいた歌などいろいろ各月10首です。お読みいただけましたらうれしいです。
 いろいろ歌のまとめ方は迷走しており(以前、うたの日の薔薇だけを集めてまとめたけどその後まったく集まらないので変えますw)、来月からはひとつき毎に載せる(と思います)ので、よろしくお願いいたします。

【2019年1月】
家中を一途に磨く沈黙と埃が舞って君は咳をする

幼子の記憶は常に晴れていてクレヨンの青がどんどん縮む

世界には俺がいるぞと手を挙げる タクシーくらいスッと止めたい

とりあえずぜんぶ野球で例えるのやめて話して あの人はだれ

「海だ」って声で車内が目を覚ます「海だ」「海だ」がひろがってゆく

不確かな人生だって味噌汁にうつる朝日を飲む君がいる

つま先に蝶々が止まりうつむいた姿は祈りのようで愛かも

見慣れない君の荷物に囲まれてブルスケッタのトマトがひかる

カルパッチョ咀嚼する君「しろくまの捕食みたいで好きなの」と言う

「閉まります」が「閉めます」になる瞬間の車掌の声が嫌いではない

【2019年2月】
如月の過ぎる速さを知らんふり雪はまっすぐ落ちてはこない

「そっちには幸、積もってる?」 誤変換そのまま君に降り積もれ、ゆき

点描の絵画のやうに離れればうつくしいままゐられた我ら

僕だけは僕を愛そう 擦りきれた赤い小鼻で買う鼻セレブ

正解はどっちでもいい ぼくたちはパピコのちぎった上から食べる

雨の日に濡れた子猫はそうおらず優しいひとを見つけられない

「完壁」になるまで遠いからせめて訂正印はまっすぐに押す

風通しいい部屋だったのに気づく あらゆるものがなくなってから

アヴェマリア鳴り始めたらでこぼこの空の輪郭とてもむらさき

いつかまた春が来るまでどちらかと言えば曇りに映える髪色

【2019年3月】
オレンジが灯る街並み描かれぬ消失点の向こうにもある

気まぐれに足のネイルを青くしてそこから少し海が始まる

速すぎる街の流れにバス停はただ立つだけの理由をくれる

変質者注意の貼り紙にも春はひとしく温いひかりを照らす

あまりにもあなたの指がやさしくて桃がきらいと言えないわたし

小さき手は金魚を埋葬するために今朝がた咲いた蒲公英を摘む

線路わき名もなき花が揺れるので俺は主演でなくてもいいな

予報では降り積もるらしい 新雪を選んで歩く子どもになりたい

あの歌を口ずさむ君 間奏で短いキスをした日があった

水菓子に月が浮いてる 分け合えぬ夜をまるごと飲んだ冷たさ

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