お風呂のアヒル

2019年10月 自選短歌

五線譜は取り払われた 鳥たちは僕に姿を見せずに歌う

「無差別」に続く言葉に「殺人」と言いたくないよGoogleだって

午後十時オフィスでひとり抱きしめたコピー用紙がまだあたたかい

自動車が通らなくても赤になる 立ち止まることを許す信号

向き合えば何も言えなくなったでしょう最後の夜は並んで座る

面影が居座っていて次のひとまでの助走が続くのでしょう

若き日のあなたを垣間見るようでピアスホールの痕に触れたい

いつまでも傍にいたいと願いつつ午後はアケビが割れるのを見る

醤油だけで五種類もある居酒屋で過去の話をしてばかりいる

長湯してふやけた指に水だったころの自由なわたしが見える

※「うたの日」
 「塔」10月号
 NHK短歌
 角川「短歌」
 短歌の時間(「公募ガイド」内) より。

自選…と言いつつ、採用されて掲載された歌や皆様に好きと仰っていただいた歌に思い入れが生まれてしまい、自分でも選んでしまいがち…。

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