2019年6月 自選短歌
朝になりクローゼットを開ける子は読み聞かせける国を見に行く
この笑顔はまがい物だと知りながら丁寧に貼る証明写真
バスを待つふりであなたを待つ朝に限って定刻どおり来るバス
幸せに気づかぬままに暮らしおり 虹の根元の町の人々
見上げずに父と目が合う 病院へ付き添い歩く静粛な朝
祖母の手の中で私を待っていた蜜柑の熱が忘れられない
役目終え地上の蝉の生のごと週刊誌らは回収を待つ
文末に三点リーダー増えてゆき向き合う部屋は砂時計めく
君のこと何も知らないけど君が音漏れさせてる曲は好きだよ
暗き部屋ビスクドールの目の中にはるかな国の海が映れり
※ラジオ石巻「短歌部カプカプのたんたか短歌」題詠「本」
うたの日
角川『短歌』
『NHK短歌』
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