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かくしたい気持ちが丸見えだったはなし。

3か月ほど「家族が暮らせるシェアハウス」を
コンセプトのひとつとして掲げているシェアハウスに滞在していました。

家族だけで暮らしていてはできなかった体験にもたくさん恵まれ
子供にとってテーマパークのような楽しさがありましたが
一方で親の立場からすると不安な点が多々あり、数か月努力を重ねましたが
幼児に至っては1カ月、小学生でも2か月が限界でした。

理由はひとつではないのですが一言でいうと
ぜんぜん子供が"暮らす"ことを想定した設計じゃない
のが理由です。

でも、同時に「これがリアルな社会なんだな」と思いました。
つまり、「わたしたち、こどものこと思ってまーす!」と商売の風呂敷を広げても、本当の子育て社会のことを理解していないとこうなるんだ、と。

とてもひとつの事例だけでは言えないのですが
この滞在は学びの場でもあったので、記録として残していこうと思います。

あ。もちろん、楽しかったことや助かったことも、書きますよ。

このお話は助けてもらったお話

2階のトイレで起こる怪奇現象

9月中旬から
2階の女子専用トイレにてたびたび「いたずら」が発生していました。

トイレの壁に、スプレーが吹き付けられたまま放置されるというもの。

だれが?
なんの目的で?
いったい、なんのメッセージが…?

シャーロック・ホームズも明知探偵もおしり探偵もいないこのシェアハウスで犯人を特定することは難しい。

もちろん、子供の可能性が高い。うちかもしれない。
でも7月に入居したのに、今さら? だれが?

悩んでいたら、また全体のSNSに証拠写真が投稿される。

こどもかなー? いたずらかな?
でもこどもが手に取れる場所にあるって乳児もいるからあぶないね。
棚作ってもらおうかー?

そんな提案もうまれてくる。親としては、なにより真実を知りたい。

そもそも、これは「いたずら」なのか?
なにか、理由があってやっているのではないか。
理由があるとしたら、まだ言葉で伝えるのが苦手な子か。
だとしたら、うちの場合は次女か?

とはいえ悩んでいても現場を抑えなければ意味がない。
次トイレ行くときに一緒について行って確認しよう。

と思っていたものの

なんだかんだと退去の準備で不在にすることが多く
確認しそびれたまま時は過ぎていきました。

忘れていたら事件が起こった

ある日、数日ぶりに夫と長女と荷物の運搬で
シェアハウスに帰宅し、運び出していたら。

「いま、長女ちゃん来てますか?」

と同じ階の人に訊かれ。

「あ、はい、来てますよ~」

と答えたら。

「今、トイレみたら泡が壁についていて…」

と言われ…

まさかの、長女濃厚説。

正直、小学生はしないんじゃないか…と思っていたので
長女の可能性が浮上したときに、すこしうろたえる。

まさか。あの子が。いやでも。どうして。なぜ。本当に?
まちがいじゃない?まちがいなわけがない。ああどうしよう。

真犯人の供述内容は・・・

なんでだろう…なんで今この時期なんだろう…
もしかして、シェアハウス出たくないのに出ないといけないから
親に対する腹いせか…?

と、こどもの心の闇にどう向き合うかと悩んでいましたが

答えは出ないので、本人に聞いてみることにしました。
まぁでも、今までばれてなかったんだし
聞いたところで返ってくるのは「ちがうよ」という言葉なんですよね。

そりゃそうだ。あっさり認めていたら
もっと早くに教えてくれていただろうもの。。

否定しているんだから、やってないんじゃないか。
という期待は、実はうっすらとありましたが、それもね
すぐ打ち消すしかなかった。

だって、もう…わかるんですよね。
親だから、というより、経験というか。

付き合いの長さというか。否定のしかたをみて、

こいつ、やったな。

って。
あとはもう、時間との勝負です。

「さわってない」
→(でもね、さっきの今でだれもトイレに入ってないの)
「でも、さわってない」
→(そうか。じゃああなたにもお母さんにもわからないから、おまわりさんに相談しよう)
「おまわりさんに相談したらどうなるの?」
→(あのね、さわった人を調べる機械があるから調べてもらうよ)
「さわったけど出してない」
→(きた…!)(じゃあ、どういうふうにさわったの?)
 (こうやって?それとも、こう?)
こくり、こくり、とうなづきに代わる

涙を流しながら
「3回くらいやった・・・」

と最後には話してくれました。
よかった。まずは、話してくれて一安心。

で? どうしてやったの? と訊いたら

「いいにおいがしたから・・・」

と。
なるほど。彼女は消臭スプレーのつもりで使ったのか。

そういえば、彼女はスプレーが好きだったな。
いつも持ち歩いてて、でも中身なくなって、水だけのスプレー
持ってたな。さすがに、水じゃにおい消えないってわかるよな。

それを聞いてまっさきに思ったのが

よかった! 心の闇じゃなかった!!

という安心でした。よかった。まだ間に合う。
もうあとは、その気持ちを汲むこととあやまることだけだー。

よかったー。って。

ほっと胸をなでおろしなが、一緒にトイレに行って
どれが便器を洗うためのスプレーで、どれがにおいを消すスプレーかを説明して、最後は、私から教えてくれた人にお礼と
女子グループのSNSに謝罪の投稿をすることに。

大丈夫だよ。と言ってくれる心強さに囲まれて

その後、夫と長女は帰宅して私だけシェアハウスに残ったので
リビングにいた女性たちにも伝えて、謝って。

みんな
「こどものときってそういうのあるよね」
とか
「においが残るの恥ずかしいとか、かわいいじゃん」
とか
「あー、大丈夫ですよー」
とか
声をかけてくれました。

理解を示してくれた人もいる一方で
やっぱり、保護者としては落ち込んで。

うそ、ついたなー。
なかなか、言わなかったな―。
これから、言わずに貫き通せること、増えるのかなー。

なんて思いながら。

どうしてうそをついたの?と訊ねたらひとこと
「恥ずかしかったから…」と。

たぶん、いつからか、気づいたんだろうな。
においが、ばれる。って。
においをなかったことにしようとして、間違って便器用の泡スプレーかけて
それが間違ってないと思って使ってたんだろうな。
(シェアハウスの人は、誰かの残ったにおいを消そうとしたのかもよ、とも言ってくれました)

もちろん、におい消してる行為そのものも知られたくないから
親にも隠してたんだろうな。
でもかくすことが恥ずかしいんだよ、とも伝えました。

かくそうと思って起こした行動で、すべての思惑が筒抜けになるって
もう、あほやん。

って思うけど。
これが学校とかなら、もっとからかわれたかもしれない。

見守ってくれるお姉さんに囲まれて、幸せだな、と思った。

その翌日、彼女に英語を教えてくれていた女性が
「におい消したい気持ちわかるよ!スプレー余ってるからあげるね」

とメッセージをくれた。
ほんとに、なんて幸せな子なんだろうか!!!!

ありがとう。彼女、喜ぶから伝えるね、と返事をしました。

以来、もうスプレーをすることはなくなったし
周囲も変わらない態度で接してくれたので
ほんとにありがたいできごとでした。

こうして社会のなかで許されていくというのは、
このシェアハウスで得られた大事な経験のひとつでした。

でも。許されてしまったこのできごと。
果たして、長女は忘れてしまうのか。苦い経験として覚えているのか。
数年後、確かめてみたいなと思います。




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