殺し合い

 大好きな人と結婚して、ずっとお互いを大切にしていけるのだとばかり思っていた。
年齢を重ねると色々なことがあるもんだ。
20代の頃の私に話したら何て言うだろう。
あー。わかる。
「何で話し合わないの?」って言うねきっと。
お互い好きで人生を一緒にという選択をしたのだから、幸せになれるはずと心から信じてた。
すれ違うことは若い頃もあった。
その度に眠くても大切なことだと、どうすれ違っているのかを紐解いていくと、結局は相手を思い遣っていたりしてより信頼感を深められた。
30代はお互い仕事が忙しかった。
子どもたちのことでも忙しく、そのまま40代に突入。去年、決定打があり今に至る。

相手だけが悪いわけじゃない。
結局私も同じ穴のムジナだ。
そこまで気付いていても、子どもから私の悪口言ってたと聞くと、「小さい人だ」と毒づいて近寄る気が失せる。
わかってる。子どもの勘違いもある。ちゃんと話せば良いだけのこと。

ムカムカしてた時に、テレビを見るともなく観てたら、90年代の2時間ものの刑事推理ドラマをやってた。内容はあの時代によく観た懐かしいような内容なんだけど、その中で、当時人気俳優だけどちょっとクセのある存在だった陣内孝則が言ったセリフ
「夫婦ってもんはよ、心の中で何回も殺し合ってくうちに本物になるんだ!」という自分の母ちゃんから聞いた話しとしてだが、啖呵切ってた。

母ちゃん役が中村玉緒。全てがぴったりきた。

いや、ここ数年不思議に思っていた。多くの中年夫婦が実は仲悪いという状況なのに、何故皆そのまま歳を取れるのだろう。
夫と入力したら「死ねばいいのに」という検索サーチがあるという笑い話が、実感として感じられるほど妻は夫を嫌っているという事実をチラホラみかけた。
40代ではまだ少ないが、50代…
そういえばうちの両親も仲悪かったのに、ずっと離婚もせずにいて、母さんに至ってはボケてからは、死んだ父さんとは仲良かった的な発言すらする。

私は結婚制度なんて無くなって、全子どもは大人になるまで税金で育てられるような世の中になれば良いのにと思っている。
結婚制度が必要だという理由の一つが子どもを産み育てる期間生活できないといけないから。
生活上の経済不安を取り去った上で、一緒に住みたい人たちが一緒に住むスタイルになればいい。子どももしかり。嫌なら子どもが住める公的な家があれば虐待から逃げられる。
簡単にはいかないが、経済的な格差を少なくし、親の経済力に影響されず能力のある人が然るべき仕事できるようにするにはそのくらいのダイナミックな意識変革が必要と思う。

話しが逸れたように見えるだろうけど、
結局家族として縛らないといけない理由とは、誰かが病気になったり、介護が必要になったり、子育てだったりの、「誰かお世話が必要な人」の世話を公的に行わないためには必需なのだ。

と、頭の中で考えるとそんなことを思うんだけど、私も意識は古い方で、なんだかんだあってもやってこう。と考える。まだまだ日本はこの前までムラ社会であり、そこにいる人たちで何とかやってくしかない。仲悪くたって。
という意識が無意識の中にある。

で、陣内のセリフ
なるほど!何回も殺し合ってていいのか!
また生き返ったか、でクスって笑って自分のダメなとこも相手の中で生き返らせて。

新しい価値観で生きてけるほど、変わることもないだろうから、このままで私も歳を取るのだろう。
なんか、
それもいいね、って思えるようになったんだよね。
もちろんまだ話し合って分かり合える可能性も捨ててはないけどね。

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