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若い医師よ、逃げろ!
医師の働き方改革に関して、先日シンポジウムを行ったことはすでに書いた。
4月からの働き方改革に向けて、メディアもこの問題を取り上げるようになっている。
1月28日の朝日新聞は、一面と二面に記事が掲載された。私のコメントも掲載されている。
1月27日のTBS系「報道特集」は、神戸市にある甲南医療センターの専攻医自死の件を取り上げた。
私と同じ神戸大学医学部出身の若い医師の自死。
狭い医療の世界で、専攻医が逃げたら居場所がなくなると、逃げる選択しを持てなかったという。
涙なしでは見ることができなかった。
過労により精神疾患を発症させた病院に怒りを感じざるを得ない。院長の具医師は、私が学生だったときに教わった方ではあるが、だからと言って許されるとは思わない。
苦しみのなか死しか脱するすべを思いつかないほど追い詰められた若い医師…。
なんとか救えなかったのか…。
何度でも言いたい。そんなときは逃げろと。
それが簡単ではないのも知っている。苦しみのなか、視野が狭まっているのも痛いほどわかる。それでも逃げろ、と言いたい。
SNS上では逃げた医師の投稿がみられる。
お医者さんしてた時
— Dr.ななと(医者からホストへ転生) (@nanasexnanato) January 26, 2024
週6勤務、週1当直だった
休みは唯一、日曜日のみ
日曜に当直入れられたらその週は休みなし
土曜の夜に命賭けてて、もう1週間だけ頑張ろって決めて頑張ってた😂
上の先生は今耐えたら年収上がっていく、専門医取ったら開業できるよとか言うけど… pic.twitter.com/uj6zGy4Vl6
この言葉は俺が医者辞めて、ホストに戻るかどうか悩んでた時に
— Dr.ななと(医者からホストへ転生) (@nanasexnanato) January 25, 2024
ホスト時代の師匠の蒼井ゆうとさん(@yuto818aoi )から頂いた言葉
医者でコキ使われてた時より、自分で考えて、自分で行動してホストしてた時の方が生き生きしてカッコよくいられた… https://t.co/p2cQboHZ7p
ほかにも、研修医を中断して水商売に入ったり、あるいは過重労働に耐えかねて楽な診療科に移ったりした医師たちを散見する。
こういう人たちを批判する声は大きい。
せっかく多額の国費を投入されて医師になったのだから、患者さんを救う医療をやって、社会に貢献すべきだ、日夜研鑽に励むべきだ。
私も日々そう思って仕事をしてきた。
でも、立ち止まって考えてほしい。これって若い研修医を追い詰めた言葉じゃん…。
そう、若い医師たちを追い詰めるのは、この医師たちの倫理観でもある。
ジュネーブ宣言
1948年9月、スイス、ジュネーブの世界医師会第2回総会で採択医師の一人として入会を許されるに当たり
私は自分の人生を人間への奉仕に捧げることを厳かに誓います。
私は自分の教師たちに、それが彼らの報酬である尊敬と感謝を捧げます。
私は自分の仕事を良心と尊厳を持って行います。
私の患者の健康を第一に考慮します。
私は私に打ち明けられた秘密を尊重します。
私は全力をつくして高貴な医業の伝統を維持します。
同業者は兄弟とみます。
私の義務と私の患者の間に、宗教・国籍・人種・政党・社会的地位の介入を許しません。
私は人間の生命を、その受胎の時以降、できるだけ尊重するように努めます。
たとえ脅迫されても、私は自分の医学的知識を人間の法則に反するようには使用しません。
私は、この誓いを、厳かに、自由意志で、私の名誉にかけて守ります。
ジュネーブ宣言がかかげる崇高な倫理観。患者の健康を第一に、全力を尽くす。これに反対する人はいないだろう。しかし、この倫理観が若い医師を死に至らしめるのだ。
私たちは医師である前に人間だ。人間としての権利、そう、人権を持っている。
第三条
すべて人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する。
第四条
何人も、奴隷にされ、又は苦役に服することはない。奴隷制度及び奴隷売買は、いかなる形においても禁止する。
第五条
何人も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは屈辱的な取扱若しくは刑罰を受けることはない。
第六条
すべて人は、いかなる場所においても、法の下において、人として認められる権利を有する。
過重労働に苦しみ、心を病んでまで仕事を続けることは許されないのだ。
だから堂々と逃げていい。逃げてほしい。いや、逃げろ!
他人が何を言おうと、批判しようと、逃げて休んでいい。逃げて医師をやめていい。逃げて何をしたっていい。
私たちは生きる権利がある。人間なのだ。
私も逃げた。いわゆる「竹田くん」の病院から逃げてフリーランスになった。
医学界からしたら、異形の者だ。異端、場末、イロモノだ。
でも生きている。命を脅かされることはない。自分の意志、自己決定権を持って生きている。メディアにコメントしても、圧力をかけられることもない。
医師の場合、医師免許を使ってかなり融通が利く。これは一般の労働者よりはるかに有利な条件だ。誰がなんと言おうとそれを最大限使ってほしい。
私は研修を中断してホストになった人も、水商売をした人も、美容外科に行った人も、過酷な現場から逃げた人たちだと思っている。だから、一概に批判するのは間違っていると思う。
非難されるべきは、若い人が逃げる環境を放置してきた医療界だ。
どうか若い人たちは逃げてほしい。もちろん若くなくても逃げていい。
生きてほしい。
タイトル画像は「病院の建物から白衣のまま走って逃げる若い日本人医師たち」By adobeのAI。
今回はメッセージを伝えるために、無料部分を長くした。
有料部分では、全国医師連盟で今後どのような活動をしていくか、考えていることを書いてみたい。
逃げろと言われてもどう逃げるべきか分からない人も多いだろう。逃げ方指南をしてみたかったりする。
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