愛しきもの
持ち前の精神力でどこまでも無理をして、気づくと制御不能の状態に陥っていた。病は身を蝕み、否応なしに元の人格を崩落させる。
頑張ることと無理をすることは違う。
この履き違えをもっと早く知っていればと、後悔の念は尽きなかった。しかし、この感情は既に過去のものとなっている。生きたくないと思う人間が治療に専念するということ。この矛盾と闘いながら、生きたいとか生きたくないとか、そういうことを考えなくなるくらいの平穏な心が訪れるまで、頑張ることを辞めなかった。
今に満足している。未来に対して欲がある状態に満足している。欲は希望だ。私を形成する環境は美しく、共にこの世界を生きる人々に生かされていると思わされる日々である。空を見上げ目を細める時、込み上がる思いは、歩んできた人生がもたらした何物にも変え難い愛しき産物なのだと、確信するのである。
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