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安定を求めると不安定になる【フェルデンクライス博士に学ぶ#03】

Stability (when one is protected) increases the feeling of safety.
Instability means risk but easy mobility.
Both are biologically important.
Becoming addicted to one of them makes one unsafe for lack of choice.

安定なのは安心感を生みます。
不安定なのはあやうさと動きやすさを意味します。
生物学的にはどちらも大事です。
どちらか一方に偏ると、選ぶ自由がなくなるので危険です。

Moshe Feldenkrais. The Elusive Obvious. Meta Publications, 1981, p.39

解説

人間の銅像をたてる時は、脚部に鉄の支柱を通して、土台にしっかりと固定しなければいけません。
そうでなければ風の強い日にはすぐに倒れてしまうでしょう。
しかし、もしもそれがワニの銅像だったらどうでしょう?
ライオンは?
キリンなんてどうでしょうか?
台風さえ来なければ、支柱がなくても大丈夫かも知れませんね。

人間はあらゆる動物の中でも非常に重心が高く、重力に対して不安定なデザインにもともとなっています。
しかし、それはさまざまな方向への自由な動きやすさでもあります。

生物の機能から見ると、安定しているのは安全を意味しません。
例えば、試合中のボクサーを思い浮かべて下さい。
ボクサーが重力に対して最も不安定で、色んな方向へ素早く移動し続けている場合、ノックアウトされる危険は最も低く、反対に相手をノックアウトできる可能性があります。
しかし倒れてしまって、重力に対して完全に安定した状態は、ルールによって守られていなければ、最も命が危ない状態です。
もちろんこれはリングの中だけの法則ではありません。

そういうわけで、安定しようとして自分を固めるほど、人間本来の機能が失われていきます。
人間は動きの中で、安定するよう造られています。
また、自由に動けるからこそ自由に止まれるのです。

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