結婚式のヘアメイクを担当するという覚悟
昨日、熱い想いのこもった文章を読みました。
自分が15年以上前に式場にいた頃のことを思い出したので、少し書こうと思います。
当時の北陸ではゲストハウスでの結婚式全盛期。
そしてヘアメイクの技術レベルも一般の方がググッと上がってきたタイミングで、時代は赤文字系雑誌の大ブレイク。えびちゃん萌ちゃん、時代。
そんな中で、1日7件ほどこなす専門式場でヘアメイクとして働いていました。
その式場はヘアメイクが、当日のアテンド(介添え)を行うというスタイルを売りにしていて、常に新婦様が美しくいられるようにと、新郎新婦が会場に来られてから、お帰りになるまでの約8時間、ずっと側でサポートするというスタイルでした。
ヘアメイクはもちろん1人で担当、アシスタントも無しで、ドレスのフィッティングだけが衣装さんに任されていました。
新婦様がお部屋に入ってから、フィッティングに入るまでの約1時間で、メイクとヘアをして、その間に、プランナーさんがお嫁さんと打ち合わせをしにきたり、ご家族がお部屋に来られたり、手紙を仕上げる時間が必要だったり、限りなくヘアメイクにかける時間は削られてゆき、それでも時間に仕上げるというプレッシャーと戦いながら、毎週土日をこなしていました。
なので、この記事を書いていらっしゃるHARUMIさんのような方が当時いてくださっていたら、どれだけヘアメイクに集中できたかと思います。
でも、あの頃、ヘアメイク兼アテンドという仕事を経験させてもらったからこそ、本当に多くのことを学ばせてもらったと思います。
少しでも早くお支度が終えれるよう、ヘアメイクの時間を確保できるように、お客様のご案内からお声掛けの仕方を工夫したり、メイクも、いかにお客様と呼吸を合わせられるかを考えながらやっていました。
(メイクは本当にお客様との共同作業なんです。目を閉じたり開いたりしてもらうタイミングや、ここだけは集中したいというアイラインの時のお声掛けとか、マスカラの塗る前後の瞬きの仕方とか、お声掛けすると失敗なく一発で決まるので。滲んだり、ついたりするとそれだけで時間のロス。。。)
そして挙式前の新郎様や新婦様の緊張をいかにほぐし、リハーサルでの不安をもう一度控え室でおさらいしたり、挙式会場では私も一緒に見守り、ブーケやグローブを預かる際の一瞬の合間に、お二人の様子を感じ取ったり、ハンカチをお渡ししたり、、牧師先生とのタイミングもその都度合わせたり。
披露宴ではもう本当に色んなことが起こるので、その都度プランナーやキャプテンとアイコンタクトで2人を誘導したり。(当時アテンドはインカムはもらってなかったので。。)列席のお客様からはドリンクを頼まれたり、空調を調節してほしいと頼まれたり、一スタッフとしてできる限りのことは答えられるようにと思ってやっていました。
その会場で学んだことは、「お客様からみたら、ヘアメイクもプランナーもみんな一会場のスタッフに見える。だから自分のジャンルとは全然違うことを頼まれたり聞かれたりしても、ノーとは言わず、笑顔で対応するように、と。困った様子の方がいらっしゃったら、一会場スタッフであると思ってこちらからお声掛けに行きなさい。」と教えられました。
これは本当に素晴らしい考え方だな。と今も思っています。
そして、挙式からずーっとお客様の目に入る新婦様の側にいる私たちは本当になんでも話しかけられます。笑
全ては今日の日が、新郎新婦はもちろん、ご出席頂いているみなさんに楽しんでもらえるように。という思いでやっていました。
途中花嫁さんから離れる時間はほぼ無く、唯一フィッティングをしてもらっている間だけが、休憩でした。(中座中は一緒にヘアとかメイク直ししてるので、朝のフィッティングのタイミングだけ。)
でも、だからこそ、本当に家族の一員になったかのように、感動もいただきました。ご両親やご家族ともお話ができたり、これまでどんな風に育ってきたのかとか、会社ではどんな風に働いていらっしゃるのかとかを知ることができ、終わる頃には本当に2人が幸せになりますようにと思えました。
そしてそんなヘアメイク兼アテンドという仕事に誇りを持って働いていました。
でも、時代がだんだんとお客様のヘアメイクに対する要望も多くなり、雑誌のような感じにしてほしい。とかメイク道具も指定のものしか使えなかったので、そこに疑問を感じ、また、時間に追われるばっかりで、本当にヘアメイクがお客様の要望に答えられているのか、その人を美しくできているのか、そこにちゃんと焦点を当てられているのか、自分の中でも、会場のやり方にも疑問を感じるようになって、
メイクの技術も限界を感じ、その美容室で学ぶことにも限界を感じ、もっと本当のヘアメイクを見たい、本物の現場のメイクを見たいと思って、その会社を4年で退社することにしました。
その後東京でヘアメイクを学び、再び北陸に帰ってきて、また別の会場や、フリーランスとして色々な結婚式場にも再び行かせてもらいましたが、あの時のような熱意のある式場やスタッフがすごく少なくなっているような気がして、ちょっとがっかりしました。
時代も変わり、色々なことがカジュアルになっていて、アテンドの必要性ももしかしたら無くなってきているのかもしれませんが、
私は、結婚式のヘアメイクはヘアメイクの技術だけできればいいとは全く思っていません。
美容師さんには申し訳ないけれど、やはり会場経験の有無で当日の対応力はかなり変わってくると思います。
厳しい言い方かもしれませんが、サロンでしかヘアメイクをしていない方が、結婚式のヘアメイクをお受けする時は、しっかりとその結婚式の大切さや覚悟を持って受けてほしいのです。
私たちはプロとしていつも一生に一度という大きな責任を背負っています。
サロンの営業ではもちろんプロの美容師として責任を背負ってお客様に入られていると思いますが、結婚式のプロでは無いと思うのです。
もちろん技術者として、ヘアメイクを担当してあげるのはいいと思いますが、それだったら、HARUMIさんのようなちゃんとしたプロのアテンドさんもお願いするべきだと思っています。
いかにお客様に当日の気持ちのご負担なく、楽しんで過ごして頂けるかは、技術には現れないかもしれませんが、経験が本当にものをいいます。
これはお客様のためなのです。
当日美容師が慌てたり、不安があったりすると、それはお客様にも伝わります。ただでさえ新郎新婦様は緊張したり、どのように振る舞えばいいかわからない場面がたくさんあります。それをフォローできる余裕が無いと、結婚式のヘアメイクは務まらないと思っています。
そしてお客様にも知っておいてほしいのは、
今の時代、結婚式はどんどんカジュアルになっていって、ただのイベントで、みんなでわいわいする。
とか
結婚式はお金がかかる。高い
みたいな感覚になってきているように思いますが、
そもそも結婚式は何のために誰のためにするのか、どんな気持ちで当日を迎えたいか、どんな思いを誰に伝えたいのか
そして自分たちの大切な記念日であるそんな日を
どんな場所で、どんな人にお願いして、どんな人たちと作っていきたいか、
どんな人たちにお金を払いたいか。。。
そう言う事を改めて少し考えていただきたいなと思っています。
今はちょうどコロナの事もあって多くの結婚式が延期になっていると思います。
本当にみなさん辛い決断をしなければいけなくなっていると思います。
でもきっとこの先には、より絆が強まって、より、想いのこもった結婚式ができると思っています。
きっと素敵な日になると思います。
私もそんな思いに寄り添えるようにしたいと思っています。
ここまで読んでいただきありがとうございます
世界が思いやりで溢れますように。
みんなで幸せになるためにどうしたらいいのか考えています。支援してくださると嬉しいです。