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師匠の事とアシスタント生活 / ③


師匠に弟子入り(アシスタントに就いて)して1週間ほどたった頃、

もう1人のアシスタント候補が来るという話を聞いた。

そう、私にとってはライバルだ。


2人の様子を見て、どちらか1人になるか、2人体制にするかという話だった。

そしてやって来たのは、まだ確か21歳ぐらいのロン毛で細身の男子。


正直、2人体制になるのは嫌だった。

私は1日でも多くの現場が見たいし、体験したい。

何が何でも私が残りたい と思っていた。


それからは、4人全員で現場に行くこともあったし、アシスタント候補のどちらかだけが行く日もあった。

もう1人の男子が行っている現場で何がどんな風に行われているのかが気になって、私の知らないうちにその男子がすごい成長していたらどうしようとか、師匠や姉弟子に気に入られていたらどうしようという思いがずっとつきまとっていた。。


1ヶ月たち、2ヶ月たっても姉弟子のような仕事さばきはなかなか出来ず、やっぱり毎日毎日自分にも腹がたつほど、どう行動していいかがわからず、姉弟子からも師匠からもちゃんと考えて行動しろ!とばかり言われる毎日。

これで正式にアシスタントに就けるのか、、、という日々だった。

そしてもう1人の男子も私とそれほど差はおそらく無く、その男子もいつも怒られていた。

師匠の道具の買い出しや、手入れなんかはその男子と2人で振り分けたりしないといけないので、現場終わりで話たりしていたけれど、どうも話がかみ合わず、現場の愚痴とかも言ったりしてくるので、協力はしないといけないのだけど、やっぱり好きになれないなぁーと思っていた。

そして怒られっぱなしで3ヶ月が過ぎた。


結果、

私もその男子も正式なアシスタントとなり、2人体制でいくことが決まった。

私の理想の形ではなかったけれど、とりあえず、自分も正式なアシスタントになれた事にホッとした。


そして、一番頼りにしていた、姉弟子の居ない現場が少しずつ増えていった。


今までは荷物運びや道具の準備、師匠へのヘルプ(師匠にメイク道具やヘアアイロンやピンを渡す事)や、モデルさんのネイルを塗ったり、ボディミルクを塗ったりと大した仕事はしていなかったけれど、姉弟子が居ない日は、いよいよモデルさんのヘアの仕込みをする事も増える。

ヘアの仕込みとは、師匠がメイクをしている間に、師匠が言ったイメージや、やり方で、モデルさんの髪をブローをしたり、巻いたり、する事で、あくまでもベース作りではあるけれど、仕上がりに関わってくる仕事となる。

実際の巻き方やパターンはいくつか事前に姉弟子に教わって、練習はしていたけれど、実際にモデルさんに入るときの緊張感はとてつもなかった!


はじめはブラッシングするのも怖かった。

師匠は同時進行でメイクをしているので、無理に髪を引っ張ったり、テンションをかけすぎてもダメ。でもブローをするときなんかは少なくとも少しはテンションをかけないと伸びないような癖もある場合もある。

顔まわりや首周りも当たり前だけど絶対にやけどなんてさせてはいけないし、でもスタイルによってはとんでもなく細かく巻いていかないといけない場合もあって、根元ギリギリを狙わないといけないし、スピードも要求される。

今思うとそんなの当たり前な事ばかりなのに、当時は、言われたことをやるのに必死だったり、目の前のことしかできず、視野も狭く、師匠の作りたい(言わんとしている)スタイルをイメージして、ベースを作らなければいけないという事に全く気づいていなかった。。。

たまに現場後に、ご飯に連れて行ってもらえるときも、今日の事、わかってんのか??とか言われて、私はきずいてもいなくって、考えろ。とだけ言われる。

本当にやばいときは本気のダメ出しがくるし、直接的な言葉もいってくれるけど、基本的には、自分で考えろ!のスタンスだった。

今思うと、それは本当に優しさだったんだなって思える。

なんども何度も自分で考えろ!と言われたおかげで、自分の事を冷静に振り返る癖がついたし、考える力も少しずつだけど、ついたのだと思う。

きっと、ダメだったとこを直接行って怒る事もできたと思うし、こっちが気づいて、直すまで待つなんて、師匠からしたら、イライラするばっかりだったと思うけれど、そうできるのは師匠が器が大きいというか、余裕がある人だったからだと思う。(もしくは色々いうのもめんどくセー)だったかもしれないけれど。


師匠の事をまだ書いてなかったので、ここで師匠の人柄を少し。

師匠は生粋の東京生まれ、東京育ちで、現場にも短パンとビーサンで現れ、(アシスタントにつき始めたすぐの)当時の車はボロボロのめちゃくちゃかっこいいアメ車に乗っていて(その後3台ぐらい変わったけど)空き時間があればサーフィンのイメトレをしたり、筋トレをしたりしていて、朝、波乗りしてから現場にきたりするような、健康的でもあり、ゆるいというか、すべてはノリじゃん!っていう一面もあり、でもその裏にはいろんなちゃんとした考えがある事も滲み出ていて、いつも心を見透かされているような、ちょっと次元の違う言葉、考えさせられる言葉をさらっと行ったりするような不思議な人だった。そして何より、メイクがスーパー上手いからみんなから信頼されていた。

当時はギャル全盛期で赤文字系のギャル雑誌の仕事が多かったけど、ギャル雑誌でも師匠のメイクはどこかエレガントだった。

メイクしている時、モデルさんといろんな話をしながらしているのに、真剣になる瞬間もあったりして、その時の目が、本当にすごい。

私には見極められない、ちょっとしたバランスや、強さを見極めているんだろうけど、その瞬間に師匠の目にはどんな風に映っているのか、見れるなら見てみたいけど、そこが、本物のプロの目なんだと思う。


そうやってアシスタント業をしながら、空いた日は美容室でバイトし、夜は居酒屋という生活がだんだんと定着してきていた時に、

今でも思い出したくないけれど、

私はとんでもない失敗をしてしまった。。。


書くのも辛いけれど、、
続きはまた





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