宗教法人法についてのあれこれ その2:宗教施設の定義とサイバー宗教

今回はシリーズものでもある「宗教法人法についてのあれこれ」ということで、サイバー宗教について解説していこうと思います。

1.サイバー宗教とは

今回は『図解雑学 宗教』を参考にします。

サイバー宗教は、主にインターネット上で活動を展開し、組織を広げていく宗教やインターネット型組織をもつ宗教ととらえられる。

『図解雑学 宗教』p168

定義に照らし合わせてみると、例えば、焉明教が信者を募ろうと思い、Xなどで広報活動を行ったからといって、サイバー宗教である、とは言えないでしょう。
更に詳しくみていきます。

バーチャル宗教とは、存在そのものがバーチャルな宗教である。実在しない寺院、神社、教会などがインターネット上で布教し、それが人の心理や行動形態に影響を与えていくといったものである。1990年代の一時期に話題を呼んだ「たまごっち寺」は、たまごっちという玩具の供養のためにインターネット上に登場した。ここではたまごっちという玩具そのものより、そのなかで育ったバーチャルな生き物の供養が行われた。これまでの宗教という概念の枠にはおさまらない、新しい感覚の芽生えを想定させるものだった。

『図解雑学 宗教』同上

ここで明確な定義が出てきますね。存在そのものが仮想の宗教だそうです。
個人的に面白いなぁと感じるのは、宗教の対立的概念である科学(インターネット技術)を利用している点でしょう。新たな意味でのハイブリット宗教として定着するかもしれません。
さて、私が初めてこれを知った時に、ある疑問が浮かび上がりました。
それは、バーチャル宗教の本籍をインターネット上のIPアドレスとして応用したり、webサイトを管理するwebなりクラウドなりNASなりのサーバーを「物理的な礼拝堂」と言えるのか?です。

2.法律上の定義

では、法律上は可能なのでしょうか。今回の件に該当する法律を引用していきます。

宗教法人法 第一章 総則 第三条 
この法律において「境内建物」とは、第一号に掲げるような宗教法人の前条に規定する目的のために必要な当該宗教法人に固有の建物及び工作物をいい、「境内地」とは、第二号から第七号までに掲げるような宗教法人の同条に規定する目的のために必要な当該宗教法人に固有の土地をいう。
一 本殿、拝殿、本堂、会堂、僧堂、僧院、信者修行所、社務所、庫裏、教職舎、宗務庁、教務院、教団事務所その他宗教法人の前条に規定する目的のために供される建物及び工作物(附属の建物及び工作物を含む。)
二 前号に掲げる建物又は工作物が存する一画の土地(立木竹その他建物及び工作物以外の定着物を含む。以下この条において同じ。)
三 参道として用いられる土地
四 宗教上の儀式行事を行うために用いられる土地(神せん田、仏供田、修道耕牧地等を含む。)
五 庭園、山林その他尊厳又は風致を保持するために用いられる土地
六 歴史、古記等によつて密接な縁故がある土地
七 前各号に掲げる建物、工作物又は土地の災害を防止するために用いられる土地

ここで重要になってくるのは、この文言でしょうか。

・「境内建物」とは、~当該宗教法人に固有の建物及び工作物

・土地

3.結論

法律を読み限り、少なくとも日本では法人はおろか、宗教団体の条件すら満たさないとみてよいと思います。例えばサーバールームを「物理的な礼拝堂」と見なすのは非常に厳しいでしょう。そもそもインターネットというのは、遠く離れた人とコミュニケーションが図れるのが強みですが、わざわざサーバーがある場所まで赴いて参拝しなきゃいけないなら、それはもはや「バーチャル宗教」とは言い難いでしょう…
ただ、バーチャル宗教を宗教の一種として認定すべきか否か、は宗教学という学問的には非常に意義があると思いますし、今後も増える可能性は高いと考えられます。
そうなってくると、宗教法人法というのは1951年に制定された法律であり、バーチャル宗教を想定していないので、もしかしたら法改正もあり得なくはないと思えます。


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