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正解が一つではないことに気がついたら少しずついい感じ

このnoteは11/10に開催したマネーフォワードmeetup「マネーフォワードのデザイナーが、超えてきた修羅場や壁について語ります!」で話した内容を加筆修正したものです。

はじめまして、マネーフォワードのエックスカンパニー(対金融機関中心にB2B2BやB2B2C、クライアントワークをしている部署)UXデザイン部MFSDグループ所属のUXデザイナーえんまおです。クライアントワーク中心に、UXリサーチやWS設計をしています。


このnoteは、そんな私が仕事の中でぶつかった壁と、乗り越えるためになにをしたかの話になります。

ぶつかった「壁」

クライアントワークをしていて、ぶつかった壁は「チーム内に共通のユーザー像が根付かない」ということでした。


私は「どうすればユーザーにとって最良の体験になるか」を基本軸として話を進めます。一方で、クライアントはユーザー体験以外にも、「市場環境」「社内調整」など様々な軸があり、同じ「いいものを作る」ことを目的としていても、重要視するものがなかなか合わない状態でした。


また、チーム内でも想定しているユーザーが違ったり、ゴールが違ったり、重要視している点が違ったりと混沌としていました

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今までやったあれこれたち


どうすればチームにユーザーが根付くか考えながら「誰のためにこのサービスを届けるのか」「このサービスを通してどんな問題を解消するのか」チーム共通のゴールの認識を合わせるために、WSをしたり、調査や分析をしてきました。

それでもなかなかユーザーが根付かず、心のどこかで「今やってる内容も響かないんだろうな」と思いながら仕事をしていました。

そんな精神の病みが最上級に達した際に、タイミングよくとある大学の教授の講演を聞く機会があり、ふらふらと会場に向かいました。

正解は一つじゃないことに気がついた

その講演は、「地方で芸術を学ぶ場を作る意義は何か」というもので、私の悩みとは少し離れた内容なのですが、その中のある内容にはっとさせられました。

「芸術ってのは、正解がひとつじゃないことを知っている。課題に対してのアプローチの良し悪しはあれど、正解不正解はないし、他人の正解を許容する空間なんだよ」

それは、「芸術やデザイン学生は講評を通して、自分が思う正解(=作品)と他の人の正解が違うことを自然と学ぶことができる。だから一つのアプローチにとらわれないし、他の人のアプローチも肯定するということが身についている。」という話でした。

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芸術やデザインの講評の様子
一つの課題に対してそれぞれの視点から様々なアプローチをとる

この話をきいて、私が「ユーザー視点でユーザーが求めるものを作らなくてはならないのに、できないのはおかしい」という「自分にとっての正解」にとらわれて、「自分以外の正解=不正解」という思考に陥ってるいることに気付かされました。

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当たり前だけど、正解ってひとつじゃない。そのことに気づかず、自分の考えが正しいと思い、他のアプローチを無意識に否定していました。
私は思考の根本にデザインがあり、学生時代から「UX」「HCD」「サービスデザイン」を学んできた人間で、判断軸が「ユーザーがどう思うか」しかなかったせいで、他の考え方が見えていない状態でした。

私にとっての正解の判断軸が「ユーザー」であるように、他の人にとっての正解と判断軸を持っている。それは「市場環境」かもしれないし「技術」かもしれないし全く違った価値観かもしれない。私が無意識に間違いだと思っていたものは、どれも間違いではなかったのです。

どうするようになったか

とはいいつつも、私はUXデザイナーである以上は「ユーザー視点で、どうすればユーザーにとっての価値が最大化される状態でサービスを届けられるか」を考えることが役割で、「それってユーザーは喜びますか?」「それをやってユーザーはどうなりますか?」と自分と周囲に問い続けて、検証することが仕事です。

ただ、「これが正解です。あなたの言ってることはおかしい。納得できません」という無意識に行っていたストロングスタイルはやめて「私にとっての正解はこうなので、こんなアプローチがいいと思います。根拠はこうです。あなたはどうですか?」という共存スタイルに変わりました。

そして、「私の判断軸から考える正解とアプローチ方法」を共有するために、どんな考えで物事を捉えているのかを伝えるようにすることを意識し始めました。

例えばユーザーイメージ(ペルソナ)ではユーザーのステータスや、利用状況の認識がチーム内で合うことで、ユーザーの解像度が上がることが重要だと考えています。

「思っているより想定ユーザーが違うんだな、共通のユーザーの認識があると話しやすいんだな」と感じてもらうために、
一緒にインタビューをしてユーザーの生の声を聞いてもらった上で、「私が思うこのサービスのユーザーはこんなことを考えていて、こんな風に利用しています。」というのが伝わりやすいように変更しました。

元々は、ユーザーのステータスをわかりやすいように情報を箇条書きにしていたのですが、文章とビジュアルに変更しました

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左:以前使ってたユーザーイメージシート
右:新たに作成したユーザーイメージシート

私が左側のようなユーザーイメージを作成する理由は、ユーザーがどんな風にサービスを利用するのか考えるための前段としてユーザーのステータスの認識を合わせるためでした。

それならば、最初からストーリーとして利用状況がわかるように変更した方が利用状況の解像度が上がりますし、認識も合いやすくなります。思い切って箇条書きで記載していた情報を最小限まで削りました。


他にも、新機能を考えるためのアプローチ方法では、ユーザーニーズ/ペインやジョブがあるかをベースに考えることが重要だと思っています。

今まで新機能や機能改善時は、左の図のように「過去のWS結果を参考にして、アイデアを考えましょう」というような形で進めていました。私にとって誰が対象か、ニーズ・ペインがあるのかは前提条件だったのでかなり左側のシートのように端折っていました。結果として、対象ユーザーが無視された状態でアイデア出しが行われる結果となっていました。

そこで、ユーザー視点を意識した案出しを行ってもらうためにどうするか。チームで最もユーザー視点を意識している私の思考をフレーム化することで、ユーザーニーズ/ペイン・ジョブを無視できない状態にしました。

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左:以前使ってたアイデアシート
右:新たに作成したアイデアシート

私の機能出しの思考としては、「ユーザーは誰なのか、このユーザーはどんなことに悩んでいて、どんなことを叶えたいか、それを叶えられた暁には、どんな状態になるのか。ゴールにたどり着くのに、どんな障害があるのか。じゃあその障害を取り除くためには、こんな機能が必要ではないか」こんな感じです。それをそのまま可視化したフレームを作って、見せて、一緒に一連の体験を考えてみました。

結果どうなったか

ユーザーを起点とした会話が生まれるようになりました。

「このユーザーはこんな発話するよね」「ここはもっとユーザーの感情曲線あがるんじゃない?」「それを叶えるためだったら、こんな機能がいいんじゃない?」「ユーザーのゴールはこうなんじゃない?」

今までは、ユーザーのことを話しても、「言ってることはわかるけど……」というような対応だったのが、少しずつ「ユーザーのことを考えたら、次の開発はこうだよね」という内容になってきました。

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ということで、「自分の考え=正解」という思考から解放され、「自分の思考・意見を共有する」というスタイルをとるようになったら「ユーザー解像度」が上がってチームにユーザーが根付く兆しが見えましたという話でした。
ついでに、完全武装で打ち負かすんだとファイティングポーズをとらなくなったことにより、かなり気が楽になりました。

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クライアントワーク苦労話のように書いてますが、クライアントは自社の分野と違うプロフェッショナル集団で、日々学ぶことばかりです。
今関わっているもの以外にも様々な案件に関わらせてもらってます。新卒2年目でこれだけ考えて、いろいろなチャレンジができるのは幸せだなと感謝しながら日々仕事に取り組んでいます。

引き続き頑張ります。

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