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魔女に、なるなよ

エンマミ
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この前ね、友人にあったの
大学時代の先輩に。2年ぶりくらいに

ほんと久しぶりだったから、近況は〜?とか最近何してる〜?みたいなことを話してたわけ。私は3年で3カ所くらい転職したよとか、今はテレビ局に勤めてるよとか、そんなことを話してたんだけど

そしたらいきなり、その友人が「今度僕結婚するんだ」っていって。もうすぐ5年くらいのつき合いになる彼女と一緒になるんだーって、いつもは何考えてるかわかんないような顔してるくせにはっきりと嬉しそうな表情浮かべてさ。少し恥ずかしそうにしてるの

それを見てすっかり私も嬉しくなっちゃってさ「めでたい!結婚式するなら招待してよ」って言ったの。ずっと前に買ったベアトップのきれいなドレスがあって、誰かの結婚式のためと思ったんだけどまだ着れてないから式で着させてよって言って

「そんなの自分の式で着ればいいじゃん、付き合ってる人とかいないの?」って話になるじゃん?なっちゃうじゃん?

正直に答えたよ。いるけど結婚する気はない、って。なんで?って聞いてくるから若干うるさいな失敗したなと思いながら、うーん宗教上の問題?とか答えてたわけ

そしたら急に据わった目に、脱力したような目になってさ「またたくさんいるの?」って聞いてくるの。今度は何股なの?って。

確かに昔はそんなことしてたねー、なんていいながら早くこの話題変えたいなと思って急に今乗っている車の話をしてみたの。車変えたよね?走行距離どれくらい?まあ予想通り華麗にスルーされて失敗したけれど。神妙な顔してないでよ。少しくらいノってくれたっていいじゃん

「別に誰と何しててもいいけどさ」「いつか落とし前をつけることになるよ」「僕は幸せになりたいんだよね」「君は何がしたいの?」

あーあ始まったと思いながら思い出していたよね。そういえばこの先輩は、大学時代から私に何度も何度も何度も何度もそういう話をして揺さぶってきたなって、その度に私は戸惑ってどうすればいいのか分からなくなって、少し不安になって先輩!って泣きついたなと。幼かったなあ私

詰めて、詰めて、問い詰めて。もちろん私のことだし答えなんてないから結局怖くなるだけだった。そして最後にいうのね「君の好きにしなさい」「自由でいなさい」。ナンセンスだとはわかってたけどとっさに思ったよね「責任放棄かよ!」

だからね先輩、私は自由になることにしたのよ。あなたからも

最近周りに言われるの「楽しそうだね」「自由だね」。皮肉が入っているのもわかってる。だって私は歳はとってもまだ何者でもない子娘。そんなやつが(実力も伴わないまま)自由気ままに(多分周りから見たら自分勝手に)やってたら皮肉のひとつや二つ言いたくなるよね。ああそろそろイタい年頃なんだろうなあ

いつか落とし前をつけることになる?わかってるわ。だから一人でいる道を選んだんだ。耐えて強くなる道を選んだんだ。自由は強さを伴わなきゃ効力を発揮しないんだか…あっごめんまた勝手に悦に入ってた。先輩の話に戻すね

プロポーズの時の話とか、彼女への惚気話とか聞くのは好きだから何時間でも付き合うんだけど、矛先がこちらに向くとちょっと面倒臭くてさ

先輩の前で何かを話すたびに自分の考えの浅さとか、学のなさとか、ナイーブさみたいなのがにじみ出てくる。先輩はそこをすかさずついてくる。確かめて、ジャッジする。どう判定されているのかなんて聞いたことない。どうせあまちゃんだと思ってるんでしょとやさぐれるし、怖くなって私は口をつぐむ。貝になりたい!

初めて会ったときは1時間と喋れなかったと思うし、3〜4時間一緒にいただけで体調悪くなったりしてたな。今はきっと6時間一緒にいても平気。成長したなー私

「で、最近面白いことないの?」先輩が詮索をやめずに話題を変えてくる。そういうとこだよ本当にやめてと思いながら、答える。

「最近は仕事で目立つことも書きたい企画や人もなくなってきたよ」「で?」「気持ちいいのは首締めセックスくらい」「頭悪くなったのそのせい?」「かもね。でもすっごくいいんだよ、だって…」「もっと自分を大切にしてくれ、頼むから」

えっこの文脈でそれ言う?って思っちゃったよね。普通突っ込むところだろ、深掘りしようよ。どうした?父性にでも目覚めたか??これが幸せを求める力か?

頭がフリーズしてぽけーっとしてた私を見ながら先輩は続ける。あ、ヤバイこれマジのお説教だ

「今、君は自分の体をモノ扱いすることで安心していないか?」「ずっと思っていたけど、記憶に抜けがあるだろう?それが何か知っているか?」「君が恐怖を感じたり焦ると頭が震えるのはなぜかわかる?」「人からの愛情や善意を信じられたことはあるか?」「精神と体が分離していないか?昔に戻ったみたいに」

いやいや。確かに記憶力に難はあるけれど、ここまでじゃないよ。心配してくれてありがとうって思いながら私は先輩の話を聞いてた

でも感謝する一方で、いつの時代の話だよとも思ってた。確かに昔私は自分の体をモノ扱いすることは得意だったけど(生活全般ね)首締めセックスの話をしただけで何でこんな過剰に反応されなきゃならんねんって

だって…




「何をしてもいいから」「戻ってきてくれ、現実に」

ああなんだそういうことか。私は自分を縛るものから自由になろうとして、現実を捨てちゃってたんだ。非日常が日常になっちゃってたんだ

私の非日常さ、おかしさに惹かれて、人々は集まる。でも非日常はお菓子みたいなものだから、活力にはなっても栄養にはならないよね。食べすぎると毒だし。日常でちゃんとご飯食べて根を張っている人だからこそ、お菓子を食べても中毒を起こさないんだ

あーあ。数年ぶりに会った人に一発で見抜かれるくらい、私はどうしようもなく…

「魔女に、なるなよ」

先輩にはチート教育してくれて本当に感謝してる
多分もう会えないかもね。バイバイ

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