見出し画像

活弁をやる資格~三遊亭円丈師匠に寄せて

「争闘の熱血」
1923年 Original title: Fighting Blood

2001年に東京キネマ倶楽部で観た無声映画。
昨年11月に亡くなられた三遊亭円丈師匠が
特別出演で活弁を務めておられました。
作品は「ボクシングシーンがメインで犬が出てきた。」
としか覚えていなくて、
マツダ映画社に問い合わせて教えて頂きました。

円丈師匠は台本も書かずに全て即興。
(喜劇映画では結構書かない方も多い)
字幕台本と直訳は渡されていたと思うのですが、
ほぼ内容とは異なるアドリブを連発。

これが不思議と映像の中の人物に則していて、
俳優の演技息が合っている。
お客様は映像を観て笑っているんですよね。
一緒に観ていた新人弁士は
「何が可笑しいのか解らないけど、
とにかく可笑しい!!」と
泣きながら笑い転げてました。

それより少し前に観た澤登翠師匠の
「番場の忠太郎 瞼の母」とは全く違う世界。
かっちりとした喋りのスタイルと70年前(その時)の映像と、
その中で今目の前でリアルタイムで見る瞬きの演技。
映像の人物と喋る人間が交じり合い表現される「妙」
活弁の面白さを一瞬で私に教えてくれた澤登翠の話芸とは
全く違う、落語家である円丈師匠の話芸。
噺家だから当たり前といいなさんな。
これは噺家だから出来る芸ではないのだと直ぐに解った。
他の話芸の方も出演しておられたが、
これは円丈師匠の「掴み」が凄いのだと恐れ入った。

即興は芸人の方なら難しくはないのだろう。
しかし、
映像の中で息づく俳優達の演技や映画の演出が解らなければ、
単なる自己顕示にしかならない怖さがそこにはある。
円丈師匠のパーソナリティと映像の魅力の即興劇。
卓越した能力を持つ者だからこそ、
輝きながらも「影」になれるのだ。
あくまでも主役は映像の人物たちなのだ。
それでも円丈師匠の映画説明で映像はさらに何倍にも輝いた。
監督も俳優たちも「スタオベ」していたのではないか!?
草葉の陰で。

活弁の映画説明には「正解」はないのだと思う。
その人のスタイルは自由なのだ。
それでもひとつだけはっきりとしているのは、
「映画はそれを作った人のもの」
だということ。
それを踏まえてリスペクト出来る人だけが、
活弁をやる資格のある人。

あ・・・自分でハードル上げちゃった!!!苦笑










https://www.imdb.com/title/tt0014040/?ref_=nm_flmg_dr_77


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?