5/16 どうあっても落ちる結末

最終決戦はここから!


え?なんですって?

それは私の仕事ですか?

「浴室の洗面台の横にタオルがかかってるので、そのタオルで床と壁の水滴を全部拭き取って」と続いて見せられた。

まだ完全に自分の体を拭き取ってない私の体は、「もう拭く意味がありません」と理解していた。

浴槽のお湯を抜きながら、その間に言ってた通りのタオルで床やら濡れてる部分を

拭いては洗面台で絞り、また拭くの繰り返し・・・

その間、私は全裸です。

全裸の女が傍目を気にせず(当たり前で誰もいないが)一心不乱に浴室の冷たいコンクリート床を拭いてる姿。

それを自分で想像したら情けなくて泣きながらやった。

終わってからわけわかんない状態で、もう早くこの場から立ち去りたい気分でいた。

このままいたら他になんかやらされるんじゃないかって恐怖感。

もはや怪我させるんじゃないかって言うより、自分の精神状態が不安だった。

(怪我させるのは私かもしれないよね)

それでもいい感じの時間で終了のアラーム。

逃げ出すように外に出てお店に電話するとしばらく待たされた。

暗い見知らぬ土地でポツンと待つ。

その時の季節は少し寒くなりかけてた初冬だった。

薄いコートを着てたけど、すっかり掃除で体が冷え切って、ブルブルと震えながら迎えの車を待った。

しばらくすると見当違いの場所にまっつんが車をつけていて、

「こっちですー」と迎えに来た。

なんで離れたとこに車つけるんだよ!!!!

もう泣き崩れそうなほど私の心は疲れていた。

まっつん「どーでした?お疲れ様です」

私 「どーでした?じゃないわ!!!!!!」

それから最寄りの駅に着くまで延々とあのじーさんの話をした。

まっつん「もうオファーあっても受けない方がいいですか?」

私「嫌だけど、断れると思う?絶対嫌だよ!本音は嫌だよ死んでもヤダよ

  逆に聞くよ、他に誰かできんの?あんな介護みたいな事できる人いるの?

  割に合わないよ!」

正直に私は怒りをぶちまけた。

まっつん「そーですよね、できないですよね・・・すみません」

謝ればいいんだからいいよね、「そんなだとは思いませんでした」って想像つかない

状態のお客さんのオファー受けるんだもん。

この時よりもっと前からだけど、本当にスタッフ(お店の人)は信用できないし、

お店の利益しか考えてない、女の子の立場になってないんだなって思う。

お客さんは喜ぶかもしれない、これだけやって逆に喜ばないってどんだけだよ!って

なるけど、じゃーいいのかって、そうじゃないと思うんだよね。

だって、絶対って言い切っていいけど、他にできる人いるのかって聞きたい。

私は気が弱いチキンだから、途中で「できません帰ります」って言えないし、

上乗せしろって要求もできないよ。

だからって喜んでもらえてよかったって素直に思えない。

自分のこんなに意地悪でちっちゃい人間だって思いたくないけど、本当につらかった。

こんな事のためにこの仕事してるわけじゃない。

じゃーどうすればよかった?って考えてもわからない

なにが正解だったの?

店の人責めてもどうにもならない事はわかってるし、

もうあのじーさんに呼ばれても行かない、行かないだけなんだけど・・・

冷静になると、あのじーさんどうしてるんだろう?

あんなに喜んでたって事は本当に楽しんでくれてたんだと思うけど、

他に手段はないのかな?って思ったりもしちゃう。

ガミガミ怒ってキレまくった事も自己嫌悪で嫌になる。

それでも、無理です。

私の仕事ではありません。

責任追えません。私はどこまでやるのが正解だったのか・・・


翌日風邪を引いて熱を出した事は言うまでもありません。

(全裸で寒々とした解体工場並みの浴室掃除してたら風邪もひくわ)

その後、じーさんが予約をしてきたのか、

誰か行ったのか、それは聞きもしなかった。

怖いっていうのが本音。知って「断った」だったら、いくら鬼畜な私でも胸が痛むし、

予約して来なかったら生死が心配だし、

誰か受けたなら、その子はどう対応をして、どんな思いだったのか・・・


後に障害者の為の施設がある事を知ったけど、

事務的な作業らしいですね。

難しい・・

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