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禅学研究Ⅱ ー『辺鄙以知吾』にみる白隠禅師の政治観

はじめに

私たち国民は、自分たちの暮らしが日々良くなり、国全体が豊かになることを願っています。では、国の在り方を考え、実際に国を動かす政治家はどのような資質をもった人がなるべきでしょうか。また、どのような政治家が良い政治家なのでしょうか。

実はこの問題をいち早く論じた人物が、江戸時代中期に活躍した白隠禅師です。白隠禅師は約二五〇年前に『辺鄙以知吾』という政治批判書を書き、そのなかで私利私欲な政治家や役人を徹底的に批判しました。

白隠は、自分の名誉や保身を最重要に考える政治家に対し「真の政治家とは何か」を説き、利権や名誉といった我欲のために国民や国を蔑ろにする政治家と政治情勢に警鐘を鳴らしています。その内容は現代の政治家への教訓としても、十分に通用できるところが多くあります。

そこで、これから『辺鄙以知吾』を読み解き、白隠禅師の言葉から「政治家のあるべき姿」と「本来の政治とはどうあるべきか」について、いっしょに考えてみましょう。

政治家はもちろんのこと、政治家を選ぶ国民一人ひとりも、『辺鄙以知吾』に学ぶことはたくさんあります。本書で紹介する白隠禅師の言葉が、昨今の社会問題、特に政治に関する事柄を通して「現代と禅」という新たな禅学の分野を深く理解することにつながると同時に、「政治とは何か」「真の政治家とは何か」を考え直しリーダ不在と言われる今の日本を再考する機縁に
なればうれしい限りです。

なお『辺鄙以知吾』の学術的専門的な読み方に興味がある方には、禅文化研究所から出版されている芳澤勝弘著『白隠禅師法語全集〈第1冊〉辺鄙以知吾・壁訴訟』をお薦めいたします。

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